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102/106

102フラニーは病弱ではない

 焦る王はフラニーの性格が悪化していることなど考えもせず、素直にやると思っていなかったからこそ「嫌よ」と何かの間違いだし、聖女たちは性格が悪いから自分を虐めたのだと言って憚らない。


 聖女たちの悪口を言う王女を表に出せるわけがないのに。王は打診があった他国との婚約を結んでさっさと嫁がせた。そのせいで嫁がせた国からクレームを入れられて王女がペッと送り返された。送り返される事など頭になかった王。


 嫁いで来られた国が嫌がるのは当たり前だ。ただの王女ならばまだしも、聖女位を凍結された王女など聖女たちに裁かれたと告知されているのと変わらない。

 聖女を敬う国ならばそんな王女を娶って同じように見られるかもしれない可能性を背負わされたのだから。娶る事など、メリットは皆無、デメリットしかない。フラニーを望んだ国は話が違うと出戻らせた。


「なんてことをしたのです!」


 フラニーの生国の王太子は王に対して激怒した。恥でしかない王女を他国に送ったことについて。自国の中で飼い殺しか幽閉をさせるつもりでいたのに、いつの間にか他国に嫁がせたのだから。


「ああ、たく、あなたと言う人は!フラニーは病弱ではないのですよ!?」


「確かに病ではないが、お前たちの一番小さい姉妹なのだぞ。少しだけ失敗しただけだ」


「私より下の王子と王女も誰かが生まれる前までは末の子供でした。それでもあなたは特別扱いなどしなかったくせに、なにをさも自分は当たり前のことをしているような言い方をするのです?」


 王の頭の中ではまだ可愛い女の子で病弱な光景があるのだろう。フラニーが弱っていると知れば駆けつける親ではあるが、他の王子・王女たちがあまりにも可哀想だ。


「いい加減してください!結局、打診した国もいらないというほど、価値がもうどこにもないのですよ!それどころか、厄災だ」


「妹に対して厄災とは、貴様それでも王太子か?兄として支えるべきだろうっ」


「あなたは親の前に王でしょう。なにを甘ったれたことを言うのですか。私はもうあなたを支えるのは無理です」


 疲れ切っている王子ははぁと息を吐く。出戻りした王女の部屋はグレードを下げられていて、二ランク下となっている。ギリギリ客室より少し上だ。

 向こうの国で軽んじられ蔑まれたのか、部屋からずっと文句が響いていて、王室の者達からうるさいという意見がどっさり、同じ階に住む者たちから集中していた。


「妹が可愛くないのか」


「妹たちならすでにたくさんいますので。父上が可愛がってこなかった子たちが」


 妹につきっきりになり果て、妹と歳が近い子たちは妹が生まれる前にいた兄弟たちよりも王と話したり、会ったりしていない。当てつけに言いつけると王は気まずそうに瞳を揺らす。流石に会っていない自覚はあったらしい。


 前々からフラニーに会いに行くのは止めないが、他の子たちとの交流も気にして欲しいと上の年の子供たちに諭されてはいた。末の子さえもう嫁げる歳だ。今は交流して欲しいと言う声はない。皆心も体も大人になったから、期待しなくなったのだ。


 大国でもない小さな国なので家族仲は良い方なのだが、ことさら兄弟姉妹たちは仲がいい。親のことで共通の悩みがあるから尚のこと。あの妹は構われすぎだと言われていたのも子ども達が小さかった頃まで。

 今はあの妹は構われすぎて甘やかされているから近寄るなと皆距離を取っていた。上の兄弟姉妹らは父王に可愛がられた記憶があるので、下の子たちほど思うところはないのだが。


 それを加味してもワガママに育ち過ぎたと客観的に判断している。他の兄弟たちの寂しさを吸い尽くした化け物になってしまっていたと評価せざるを得ない。

 王子は王の甘やかしが今回こんなことを招いたとわかっていたので、貴族議会を動かして父を退任させようと決めていた。このままでは国ごと沈む。


「はぁ、あの子はもうなんの役にも立ちませんよ」


 ふうとため息を吐く王子に王は叱責し、妹に価値をつけて無価値と言うなんて人の心がないと叫ぶ。しかし、王子は他の兄弟たちのことも考えているのでそんな言葉で揺らぐことはない。親にどれだけ言われても王としての言葉ではないのは、とっくにわかりきっているからだ。


 フラニーは部屋でメソメソしている。嫁いだ国で散々な対応をされて、まるで低位貴族のような気分にさせられたせいだ。それを慰める使用人もすでに近くにいない。構うなと王子に命じられて離れている。よって、慰めてくれる人間は王だけになってしまった。


「フラニー、大丈夫か」


「ああ、お父様……グスッ。閉じ込めるなんて酷いわ……私は聖女なのよ?クスンッ」


 まだ聖女だという娘に流石の王も周りからもう違うから口を開かせるなと言われる。王も凍結されている身分を持ち出すのは不味いことだと自覚しているし、聖女を語るのは世界を敵に回す行動なのも認識している。


 よって、娘に言わない方がいい、言うのはダメだと注意はしている。最初は反抗的になぜと言い切り、納得していなかったフラニー。何度も散々他の人間たちに言われたフラニーだが、言ったら叱責されることを学び、今では父親だけに限定して盛大に愚痴るだけに留めている。

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