101すでに制裁処置はされている
時期的に聖女のところへ行ったときだ。すでに制裁は始まっている。周りはフラニーがペコラの所へおしかけた事を堪忍できない。生活に隣り合うことなのだから。
制裁が始まっていることにも気づきはしない王女。フラニーを嫁がせよと周りも怒りに顔を染めて求めるだろう。帝国に行く前なら王が溺愛する娘など引く手数多だったろうに。
縁談を無視して帝国に向かったらこの様。もう一度言おう。このザマだ。父王から聞こえてきそうな問題に親の心子知らずだ。王女はまだなんとかなると思っているが、他からは処置なしと思われている。
いくら王家の一番上が庇ってもやってしまったことを知られてしまえば、王すら王座に座り続けるのは許されないと言われて引き摺り下ろされてしまうわけだ。
王も危機感を感じているのか甘いいつもの言葉をかけてやることはしていない。兄弟たちにも突き上げを喰らう。王族だからこそ厳しい視線を向けられる。
それは娘を助けるために使うにはリスクが高過ぎて、なんとか緩い罰にしても周りからの反感を買うはず。王女はまだ状況を把握していない。
「聖女に話しかけ、来るなと言われてその場で騒ぎ立てる……この時点で他の聖女たちも敵に回しております」
フラニー付きの使用人であり、監視人であったカミツードは他国でやったことを説明していく。王は増えていくたびに聞いていたよりも内容が詳しく教えられていき、首を竦めて下に降りていく。
パントマイムのような面白おかしさにアルクレイとあの人、面白い王のおじさんだねと言い合う。今までも国内だからチヤホヤされてきた王の娘。他の国に言ったら甘やかされただけの女の子だ。
「挙げ句の果てに皇帝に妻にしろと迫った……」
「私は聖女なのに。帝国の王より立場は上なのだから……お父様、縁談の釣り書を送って!」
「無理に決まっているだろうっ」
恐らく初めて怒られたのだろうフラニーはビクッと肩を揺らす。なぜかこんなに酷く怒られる経験はないから、余計に混乱している。フラニーはカミツードに顔を向けるが関わり合いたくないと嫌悪の目で見返された。
「なんでそんな目をするの!不敬よっ。あなたなんてクビにするんだからっ」
「するわけがないだろう」
カツカツと靴音と共に王たちの会話に入ってきたのは一番上の兄王子。次期王としてすでに決定している王太子でもある。
「父上」
王はびくりと体を揺らした。気まずそうに。
「私を呼んでくださらなかったのはなぜですか?一番聞くべきであり関係してくるのですけれど。またあなたは甘やかすつもりなのですね?」
内密に話を聞いて処理をしようとしたので息子に知られないようにしていたのだが、王女がここに帰ってきたという情報を得たのだ。後ろめたさがあった父親は首をすくめる。
「後で呼ぼうとしていた」
「別にいいのですがね……どうせそこの愚妹の罰は決まっていますから」
「な、お兄様までっ。私は」
「聖女じゃないのに聖女と連呼するな」
兄王子の叱責が空間に響く。王よりも明らかに怒りを内装した声音に、怯えるという感情を飛び越えた恐怖が伝染していく。
「な、なに、よ」
「なにが病弱だ……そこも嘘だと皆もう知っているぞ?メッキが剥がれてお前はもうか弱い王女なんかじゃない」
一番最初に兄弟王子たちや姉妹王女たちが聞いて驚いたのは末の王女は病弱ではなかった、ということだ。末の王女に王が会いに行き、他の王女たちより会う機会も多い。それにより寂しいと思う子たちもいた。
大人でも子供でもない年齢の血縁者たちでさえ、王と関われる時間は少ない。だからこそ、王女一人に普通の時間よりも多く取ることは元々よく思われておらず。
それでも、自分たちと違って身体が弱くいつまで会えるのかという問題もあったからこそ、我慢していた。それが嘘と暴かれれば一気に許される状態から騙した狡い女姉妹にヘイトは溜まる。
部屋に戻ればすぐにでも王子と王女が詰めかけて文句を言いまくるだろう。聖女ならばまた胸に留めて仕方ないと諦めたかもしれないが、王女フラニーは自業自得にも称号さえ自らの行動により聖女の肩書きを使用不可にされている。
持っていたら、貴族や王族たちの迫り来る恐怖から身を守れた。しかし、すでに凍結されており通知もされている。助かる術はない。
カミツードもそば付きを解除されると王太子から言われてホッと息を吐く。王家が甘やかした王女を操縦できるわけがないので悪いことをしたとさえ、謝られてカミツードは慌てて「とんでもありません」と首を振る。
聖女たちに突撃した時は不安があり、どうしたらいいかわからなかった。もしかしたら連座でなにか罪に問われるかもしれないと覚悟もしていたから、許されるのなら聖女たちに詫びの手紙を書きたいと王太子に言う。
フラニーは手紙どころか直接まだ謝ってもいない。処分と共に手紙も書かせようと決める次期王。許されるとは思ってないがやれることはやらねばならない。
貴族たちから王家が突き上げを喰らう前になんとか少しでも謝ったことを皆に見せられるように。




