表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貞潔は記憶  作者: monoplayer
1章(現代編)
PR
14/22

一三話 若木との邂逅

 次の日、若木は俺の家には来なかった

携帯を確認すると『ごめん、体調が悪いから今日は行けないや』と一通のメール

昨日の今日だ。理由は明確だろう

でもここで無闇やたらにつつくのは若木の気分をさらに害してしまうのは明確だ

だから、一刻も早く若木に会って、事の顛末を伝えなければならない

でも…何を伝えるのか?

『岡宮は振ったから安心してくれ』?

『俺は誰とも恋仲にはならないから友達でいてくれ』?

…違うだろ

岡宮も若木もそんな結論は最初から求めてはいなかった


『貴方はね、自分の一存で唯ちゃんの気持ちをずっと躱しつづけているの』


ここにきて岡宮に言われた言葉が突き刺さるように痛い

…俺はクズだ

今になっても若木と都合の良い関係を望んでいる

『彼女』とのメールを見返す


『それは仕方の無いことです。無常という言葉があるくらいですから』

『永遠普遍なんてものは、有り得ないものなのです』


「あぁ…全くその通りだ」


覚悟を決めなければならない

どんな関係になろうとも…若木と決着をつける

玄関を開け、外へ飛び出す

くるりと自分の部屋を外から眺める

若木の居ない朝は…少し寂しく感じた


………

……


「…おはよ」

「あ、ああおはよう」


教室に着くと、若木を見つけてしまった

体調が優れないと言った割には、どこか身体で差し障る所はぱっと見感じられない

…少し、表情は曇っているようだが


「隣、座っていいか?」

「…なに言ってるの?そんなの今まで確認してきたこと無かったのに」

「そうだな…そうだった。どうしてこんなことを聞いたんだろう」


若木の隣に腰を下ろす


「「…」」


き、気まずい

最初に何を話すべきか

世間話?岡宮とどうなったか?

いや、そのどれもが今の場面では相応しくないように感じる


「…(ソワソワ)」


若木もしきりに髪の毛を弄ったり、こちらをチラチラ見ていたり少し落ち着かない


「「あ、あの!」」

「「…」」

「若木、なんだ?」

「え!?い、いや…大和からどうぞ?」

「いやいや――」


目を覗きこんだり、合ったと思ったらふいと逸したり

お互いに忙しない

こんな腹の探り合いをしている内に授業の定刻になる


「あはは…後でにしようか」

「…そうだな」


………

……


授業も終わり、いざ立ち上がろうとすると若木がじっとこちらを見ているのを感じる


「ど、どうした?」

「大和、今日は授業これで終わり?」

「当たり前だろ…授業は若木と揃えたんだから」

「そっか…そうだったよね。授業一緒に決めたもんね」

「「…」」


また気まずい空気が流れる

お見合いか!と心の中で突っ込んでしまうほどの初々しさ

とりあえず、教室の中ではままならない

お互いに黙りこくりながら、俺達はキャンパスの外へと向かった


………

……


若木と歩くこと約十分

お互いがお互いに話す為の格子を探そうと必死になるが、ままならない

ついに若木と俺の家まで続く、分岐路にまで到達してしまった

…自分が情けない

こういう時に女々しい思考をしてしまうのは自分の悪い癖だと認識しているが、どうしても直せないものだった


「あ、あの。若木…」

「うぅー…」

「うがー!唯、ここでへこたれたらだめ!ガッツなの!」

「ど、どうした?」


いきなり若木が叫ぶ


「あ、あの!大和!」

「は、はい!」

「昨日、結局琳ちゃんと何してたの!どうなったの!」


若木の質問は全くのストレートだった


「…俺もそれを言おうとしていた」

「昨日、岡宮と少し話してきた」

「うん、それで?」

「それで…」


正直に言うべきか?

…いや、岡宮と若木の関係は当事者で解決すべきだ

結論だけを簡潔に言おう


「それで、岡宮とは何もなかった。少し遊んだだけで、関係が変化したとかはない」

「…へ?」


想定外の返答だったのか

目を点にしている


「つ、つまり?琳ちゃんとただ遊んだってだけ?」

「そうだ」

「ふぅん…」


若木は疑わしそうな目でこちらを見ている

当たり前だろう。岡宮はあんなに若木を煽るような態度で昨日接していたのだから


「…少なくとも俺の口からは言えない。岡宮に直接聞いてくれると助かる」

「…わかった」


嬉しさ半分、困惑半分と言ったところだろうか


「それで?昨日は何して遊んだの?」

「特に話題にすることは無いぞ、近くの商店街をぶらぶらしただけだ。俺達も行ったことある」

「あぁ、あそこね」


若木とはあの商店街には頻繁と行かないまでも、結構な頻度で行く

なので、彼女にも同じ映像が浮かんでいることだろう


「でも凄いね、あそこで夜まで遊んでたんだ?あそこの商店街、確かに店はいっばいあるけど大和の興味あるものとかあんまり置いてない気がするけど」

「なんで夜まで遊んだなんて分かるんだ?」

「…だって、昨日結局大学来なかったし」

「あぁ…」


再び気まずい沈黙が流れる


「ふぅん…でも、私がやきもき…じゃなかった。真面目に授業聞いてた中で大和は岡宮とデートしてたんだね」

「…すまない」


ちりちりと若木の冷たい視線を感じる

若木にどう思われているのかと想像すると、少し不安になった

…いや、なんで不安になる

俺が誰と遊ぼうが俺の勝手のはずだ

そして、逆に若木も然りのはず……だ


「ふぅ…」


火照った頭を一度冷ますため、小さくため息をついた

…いつから俺は下らない独占欲なんて持つようになったのか


「――ねぇ、聞いてる?」

「あ、ああ…」


顔を上げると、若木の顔面が視界いっぱいに広がる


「どうしたの?少し顔が赤いけど」

「い、いや、何でもない」


そろりと一歩だけ、後ずさりをしてしまう


「それで?他にはどこに行ったの?」

「他には?他には…あっ」

「え?何?」

「いや、何でもない…」

「言え!」


有無をも言わせないのかお前は


「岡宮と…観覧車に行った」

「…っ!~~~!」


若木は胸元を掻きむしる…ような仕草をした

彼女に言葉には表現出来ないような感情が渦巻いてるんだろうか


「な、なんで!?」

「何でと言われても…」

「私とも行ったことないのに!」

「あぁ、そっちか…」


てっきり、岡宮と観覧車に行った理由を聞かれているんだと思っていたが違かった


「大和!琳ちゃんに独り占めされててずるい!」

「ずるいなんて言われても」


若木はツカツカとこちらに歩み寄ると、腕をがしっと掴んできた


「あ、あの?若木…?何をしてるのかね」

「今から、行くの!」

「ど、どこに?」

「商店街に決まってるでしょ?今日は私とデートするの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ