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良性脳腫瘍と言う命の危険  作者: ねねこ


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8/11

8 コロナ禍とガンマナイフと水頭症

それから年明けから職場復帰して、世の中はコロナ禍が始まった。無理はしないように仕事をしながら、月一での通院が続く。時折指と足のしびれはあるものの、マッサージをしたら落ち着くのでとにかく冷やさないようにしていた。それから春になり、コロナ禍が進み出勤も制限されるようになる中、先生から「放射線治療をしましょう」と提案された。

 提案されたのは、ガンマナイフ、という腫瘍に直接放射線を当てる治療方法。病院にその施設はないので、築地にある専門病院を紹介されそちらに。

 二泊三日の入院治療だった。

 鉄仮面をかぶり、ボルトを頭に4か所刺して固定して放射線を照射する、という治療をした。治療中は好きな音楽を流してくれるというので、B’zとTMRのアルバムを持って行った。大好きな歌に励まされながら放射線治療を終えて二泊三日終了。これがまた結構な治療費がかかった。6桁いった。

 ガンマナイフの成果は年単位で出るものだと言われたけど、10センチほどあった腫瘍がガンマナイフを当てて15年で1センチ以下まで小さくなった他の患者さんのMRIを見せられ、いつか私もこれくらいになるかな、と希望になった。この時点で私の腫瘍は5センチあった。


 それからしばらくは体調に気を付けながらも舞台を見に行ったり、映画に行ったりと前の生活に近くなっていた。ただ、片耳難聴になったことにより、音が刺さる感じがして、「音」を楽しむ場では耳栓は必須になった。聞こえ方がすごくおかしいというか歪んだ感じに聞こえるので耳栓がないとしんどくなる。

 夏が終わり、秋が来た頃、異変は前触れなく起こった。


 2020年11月、仕事帰りに駅の中を歩いていると、突然、本当に突然、足の感覚がなくなった。歩けない、動けない、何だこれ。駅の通路で立ち尽くしたまま、とにかくどこかに寄り掛かろうとしたけれど、一歩も動けない。

「あのすみません」

 通りががりの見知らぬお姉さんに話しかけた。

「お手数ですが、私をそちらの壁のところに連れて行ってもらえませんか?」

 とお願いすると、お姉さんは私の手を取って、壁際まで誘導してくれた。壁にもたれかかってやっと一息。お姉さんにお礼を言って、スマホを取り出して病院に電話。すぐ主治医の先生に繋いでくれて、状況を説明すると

「すぐ来て」

 と厳しい声で言われた。

 少し足の感覚が戻ったけど、あの歩けなくなった感じがあまりにも怖くて、今度は通りがかりの方に駅員さんを呼んできてもらった。

 タクシー乗り場まで連れて行ってもらい、すぐにタクシーで病院へ。

 病院に着くと先生がスタンバイしていてくれて、CT室へ。そして分かったのは、水頭症と言う症状だった。先生にも言われていた後遺症の一つがとうとう牙を剥いてきた。


 簡単に説明すると頭の中では常に髄液というものが生成されていて、それは普通であれば正常に吸収されていくものだけど、髄液の通り道がふさがれると頭の中で溜まっていき、歩行障害や認知障害が出る病気だと説明された。


 私の場合、腫瘍が髄液の通り道をふさいだことにより、この状態になったらしい。その日は一晩状態確認も兼ねて、ということで入院。幸い祝日前だったこともあり、仕事に支障は出なかったけれど、そろそろ仕事をすることも限界だな、と思った。悔しいなぁ、やっとあのブラックを辞めて普通の生活を散り戻しつつあったのに、と考えた。

 先生に「水頭症の手術をしましょう」と提案されたが、世の中はコロナ禍でなかなか手術日が決められない。

 この状態で仕事を続けることは無理だと思い、年末で辞めることを会社に告げた。本当に申し訳なかった。



 年が明けて2月に水頭症の手術日が決まった。このころの私は杖がないと歩くのが困難になっていた。心配した友人がヘルプマークをくれ、外出時にはバッグにつけるようにしていた。一人暮らしだったので、心配した友人たちがあれこれ世話を焼いてくれたおかげで助かっていた。(買い物とか)

 だが結局2月の手術は病院での院内コロナが発生したことにより3月に延期になった。正直、かなり体調はきつかったけれど、世の中はコロナ対策が最優先と言う風潮だったので仕方ないなと思った。

 先生に提案されていた術式は二つ。一番ポピュラーなのはVPシャントと言う頭の中に髄液を通すチューブを入れて、本来の通り道を使わずに腹腔への髄液を逃がすようにする、もう一つは脳室の底に孔をあけてそこから髄液を通すようにする、という術式。どちらにも一長一短はあって、VPシャントは体に異物を入れるというリスクと体に傷が残ること。脳室の底に孔をあけるのは、結局は傷なので治っていくからふさがってしまうことと、脳の動脈が近かったら無理な術式であること。

「お任せします」と私は伝えた。S先生のことを全面的に信頼していたからだ。

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