6 手術
それからたくさんの事前検査を受けて、ついに入院日がきた。
2019年11月の後半だった。病気発覚から約3か月。
本当は手術は10月に、と言われていたのだけど、仕事の引継ぎもあり11月にしてもらった。
何より10月にずっとずっと楽しみにしていた映画の封切りがあり、前売りのムビチケだけで10枚以上買っていたので、これを見ないで手術できるか!と半ば執念だった。おかげで初日の舞台挨拶含め、11月の入院までにムビチケは全部使いきれた。
その作品に関連して、私が大好きで大好きでものすごく尊敬してやまない方から直接「がんばれ」とエールを頂き、それを胸に私は手術の朝、手術着に着替え、手術用のストッキングをはいて手術室へ向かった。
私、手術室って、所謂ストレッチャーで向うのかなって思ってたけど、点滴棒をお供に自分の足で向った。
両親に「行ってきます」って言って手術室に入ると、いくつも手術室が並んでいて、一番奥の手前の部屋に案内された。
わあ、テレビで見たことある部屋だ、って感想がまず出て来た。今まで知らなかった場所に自分がいることが不思議だった。
自分で手術台に上って、手術台ってかなり狭いんだなって知る。毛布を掛けられて心電図をつけられて、いよいよ手術開始。
初めての全身麻酔。
全身麻酔経験者の友達には一瞬だよ、と言われてたんだが、どんな感じだろう、と想像しかできなかった。
「じゃあ麻酔しますねー」
本当に一瞬だった。落ちる感じだった。
そして
「終わりましたよー」
と起こされた。え、終わった?ってよく分からなかった。
ただ一番に思ったのは生きてる、だった。
「今、ICUにいます。ご自分の名前言ってください」
「……」
名前?え?
あの時の何とも言えない虚無感は今でも覚えてる。
世界一わかってるはずの自分の名前が出てこない。




