4 検査と余命宣告
術前検査が始まった。
今日は、平衝検査、という検査をするために病院へ。
顔中に電極コードをつけられ、わあ、モーションキャプチャーみたい、などとちょっとだけワクワクする。ゴーグルを被り、言われるままに視界をぐるぐるさせ簡単な暗算の問題を答えていく、のだがヤバい、計算できない。目が疲れたなぁ、と思いながら、耳に冷たい空気を直撃でいれられた。
まずは左。眩暈がするかも、と言われたけど、ちょっと回るな、くらいで別に何ともない。それから右へ。
右で試して初めて分かった、めまいのすごさ。天井回ってるし、自らの意志ではどうしようもないくらい視界が回る。こんなすごいめまい、初めて経験した。横になってなかったら確実に倒れてたと思う。
「今、右の眩暈すごかったでしょう?目も回ってたの分かりました?これが正常な反応なんです」
つまり、ほぼめまいを感じなかった左は異常なのだということ。
「右の反応は正常ですが、左側には変化がほぼ見られませんでした」
本当に全然違った。無反応に近い私の左耳は、やはり正常には程遠いのだと実感した。
この診断の結果はまた後日。そのまま脳外科に行き、手術のための検査について色々聞かされる。
基本は日帰り検査だけど、一つだけ一泊二日で必要な検査があると言われた。
脳の血管を造影剤を使い、3Dで撮る検査だという。手術のアプローチのために必要だと言われ、かなりきつめの検査です、と言われてビビる。
検査日だけその日は決めて、さすがにそろそろ家族に言わないとなぁ……とだいぶ憂鬱だったが避けて通るわけにはいかないところだ。
離れて暮らすいきなり高齢の両親に言う決意はつかなくて、まずは弟二人に電話。
「ねーちゃん、脳腫瘍になっちゃったよ。で、手術することになった。お父さんとお母さんにも言わなきゃいけないんだけど、補足してほしいから実家行ってもらっていい?」
とお願い。了解してくれて良い弟だ。
弟に時間を併せてもらって実家に電話。
「あのさ、病院で検査したら脳腫瘍だって言われた。かなり大きいから、頭開けて摘出しないといけないって」
とできるだけ簡潔に湿っぽくならないように伝えたつもりだったけど、さすがにショックが大きかったみたいで、弟に実家にいてもらってよかったと思った。二人とも真っ青だったって。
この時言えなかったのは、先生に余命宣告されてたこと。
「このままだとあと二年です」
とさらっと言われていた。え、余命宣告ってこんなあっさり言われるもんなの?って怖いとか実感とかの前に理解できなかった。
「このままだと遠からず脳幹が圧迫され、呼吸困難になります」
呼吸できなかったら死ぬわな、道理だ。
「え、でも先生、私、良性腫瘍なんですよね?」
「良性=命の危険がないということではないんです。良性腫瘍と言うのは転移がないということだけなんです」
って、そんなの知らんし!
このあと私は「良性」という言葉の持つイメージ先行に幾度となく悩まされることになる。
さすがにこれは親に告げる勇気はなかった。
でも私は手術しなければ2年以内に死ぬのか……と何だか急に頭が重くなった気がしたのを覚えてる。




