街での再会と、試作武器のリアルな評価
「ふいーっ……今日も叩いた叩いた……」
二日目の鍛冶修行を終えた俺は、汗を拭いながら工房の脇にあるベンチに腰を下ろした。
手動鍛冶の疲労感は凄まじいが、STR(筋力)にポイントを振ったおかげで、昨日よりはハンマーの重さに身体が振り回されなくなっている気がする。
その時、ピコンと心地よい通知音が鳴り、フレンドチャットのウィンドウが視界の隅に浮かび上がった。
『コウタ:レイ〜! 鍛冶修行どんな感じ? こっちはそろそろ今日のレベリング終わって街に戻るんだけど、メシでも食いながら進捗聞かせてくれよ!』
『レイ:おお、ちょうど今今日の作業が終わったところ! 了解、始まりの街の広場で合流しよう』
俺はメッセージを返し立ち上がると、今日作った『影喰みの暗器』と『裂鋼の大刃』、それに初日に作った『重装鉄棍』をインベントリに放り込んで工房を後にした。
噴水広場近くの露店街。
多くのプレイヤーで賑わうテーブル席で待っていると、全身を革と鉄の軽装備で固めたコウタが手を振りながら歩いてきた。背中には、しっかりとした鉄の長槍を背負っている。
「よおレイ! 鍛冶師の修行、順調か?」
「まあな。全身筋肉痛になりながら、なんとかハンマー振ってるよ。コウタは一陣のレベリングどうだった?」
「順調順調! 街の外の森で『大角熊』とか狩ってさ。一陣トップ層のガチ勢にはまだまだ遠いけど、中堅くらいのレベルには乗ってきた感じだな。で、レイの方はなんか作れるようになったか?」
「うーん……一応何個か打ってみたんだけどさ。ちょっと見てくれる?」
俺はインベントリから、今日作った『影喰みの暗器』と『裂鋼の大刃』を取り出し、テーブルの上に並べた。
「お、マジか! もう武器の形になってるじゃん!」
コウタは身を乗り出し、興味津々で2つの武器を手に取ってステータスウィンドウを確認した。
「どれどれ……『影喰みの暗器』……攻撃力22で、重量補正とクリティカル補正付き? こっちは『裂鋼の大刃』、攻撃力43で防具破壊効果……へぇーっ!」
コウタは顎に手を当てて、じっくりと性能を見比べた。
「なあコウタ、一陣のプレイヤーから見てそれってどうなの? 正直、自分じゃ全然分からなくてさ。もっと綺麗で扱いやすい剣を作りたかったんだけど……」
俺が不安そうに尋ねると、コウタは「うーん」と唸った後に笑顔で言った。
「いや、普通にけっこう良い武器じゃんこれ! すげえよレイ!」
「え、マジで!?」
「おう! そりゃあ一陣トップの生産職の人たちが売り出してる最新のレシピ武器や、高レベルダンジョンのドロップ品に比べたら攻撃力の数値自体はまだ遠く及ばないよ? 今の一陣トップのメイン武器って攻撃力90越えとかザラだからさ」
コウタは『影喰みの暗器』を指で軽く弾いた。
「でも、これ一陣の中でも低レベル帯のプレイヤーがサブで持ち歩くなら十分実用的だぞ! 特にこの『影潜み』とか『防具破壊』みたいな特殊な補正効果は、普通の初期生産品にはあんまり付いてないしな。手作りで始めてたった2日で、しかも2陣のプレイヤーがここまで作れるのは普通にすごいって!」
「そっか……一陣のトップには全然届かないけど、使えないわけじゃないんだな……!」
コウタの客観的でリアルな評価を聞いて、俺はホッと胸を撫でおろした。
(よし、トップ層のすごい職人さんたちにはまだまだ叶わないけど、俺のやり方でもちゃんと一陣の中堅くらいで通用する武器は作れてるんだ……!)
「なあレイ、もし良かったらこの暗器、俺のパーティのスカウト役に紹介していいか? 夜間の奇襲用にこういう尖った性能の武器探してたんだよ」
「本当? もちろんいいよ! まだ試作品だから安くて大丈夫だし!」
「サンキュ! いやー、友達が自分の作った装備を売り出せるようになって嬉しいよ」
コウタと笑顔で乾杯しながら、俺は心の中でますます鍛冶への意欲を燃やしていた。
(トップ生産職の人たちは、きっともっとスマートで綺麗な神剣をバンバン作ってるんだろうな……。俺も負けてられないぞ! 明日からもSTRを意識して、もっと強い力で鉄を叩いて腕を上げなきゃ!)
自分が「レシピのアシストを使えば一瞬でトップ層並みの綺麗で高攻撃力な武器が作れる」という事実に一切気づかず、トップ職人との「差」をただの筋力と鍛冶レベルの差だと勘違いしたまま、レイは更なる手動鍛冶の苦行へと突き進んでいくのだった。




