初めてのクエスト?
「よし。そうとなればレイ、善は急げだ。とりあえずこのリストにあるやつ買ってこい。商業街の方に行けば揃うからな。くれぐれも違うやつを持ってくるなんてヘマはすんな。」
クエスト:買い出し(特殊クエスト)
鉄鉱石 0/10
銅鉱石 0/10
魔鉱石 0/3
報酬:バルドからの信用、xp50
『買い出しするだけでレベル上がるなんて最高かよ。ちゃちゃっとこなしてクエスト完了しますかぁ。』
そんなこんなで買い出しをしていくことになったので、バルドさんからしっかりとお金を預かり商業街の方に向かっていった。向かっている途中には俺と同じ第2陣プレイヤーが数多く見られた。
商業街に足を踏み入れると、そこは始まりの街ルーメンの中でも特に活気に満ちあふれていた。露店がズラリと並び、俺と同じように手探りでゲームを楽しんでいる第2陣のプレイヤーたちが買い物を楽しんでいる。
「買い出しだけでレベルアップとか、初手から勝ち組だな。……よし、サクッと揃えてバルドさんのところに戻るか!」
俺はルンルン気分で、目の前にあった大きな鉱石屋の露店へ向かった。
店先に並ぶゴツゴツした石ころを指さし、NPCの店主へ意気揚々と声をかける。
「すみません! 鉄鉱石10個と銅鉱石10個、あと魔鉱石を3個ください!」
「はいよ、毎度! 鉄鉱石が1個100ルピ、銅鉱石が150ルピ、魔鉱石が1個2,000ルピで……合計で9,500ルピになるね!」
「おっ、頼みます! ……ん?」
バルドさんから渡された革袋を思い出し、中身をジャラッと手の上にぶちまける。
そこに収まっていたのは――銀色に輝くコインがたったの20枚。
「……あれ? 2000ルピしか入ってないんだけど」
「お兄さん、冗談はよしてくれよ。2000ルピじゃ魔鉱石1個分にしかならねぇよ」
「えっ、あ、ちょっと待ってくださいね!?」
冷や汗が一気に噴き出した。
俺は慌ててクエスト画面と、手元のコイン、そして店の価格表を何度も見比べる。
『嘘だろ!? 全然お金足りてないじゃん! バルドさん渡し忘れたの!? いや、違う……!』
頭の中に、さっきのバルドさんの意地悪そうなニヤリ顔が浮かんできた。
『善は急げだ。とりあえずこのリストにあるやつ買ってこい。くれぐれも違うやつを持ってくるなんてヘマはすんな』
「あいつ……! 最初から買い出しのお金なんて足りてないの知ってて送り出しやがったな!?」
そう、このゲームは『何でもできる自由な世界』だ。
NPCが用意したクエストだからといって、「お金をもらって買って渡すだけ」なんて親切設計になっているわけがなかったのだ。しかもあの頑固そうなバルドさんだぞ。何もないなんてありえなかったんだ。
「2000ルピで買える範囲でなんとかするか……? いや、『違うやつを持ってくるな』って言われたし、数が足りなかったら絶対怒られるよな……。え、じゃあ残りの7,500ルピどうすんの!? 自分で稼ぐか掘ってくるしかないってこと!?てかどうやって稼ぐんだよ。鉱石掘るにしてもどこにあるかもわかんないし道具もねえよ!!!!!」
チュートリアルなし、一筋縄ではいかない仕様、そしてドワーフの師匠からのイジワルな洗礼。
広場のど真ん中で、俺は頭を抱えて叫んだ。
「憧れの生産職ライフ、最初からハードモードすぎるだろーーーっ!?2000ルピで買えるのはせいぜい魔鉱石1個……。でも、要求されたのは鉄鉱石10個に銅鉱石10個、挙句の果てに高級品の魔鉱石が3個だぞ? 足りなさすぎるだろ!」
露店の前で頭を抱える俺に、NPCの店主は呆れたような視線を送ってくる。
最初から親切なナビゲーションなんて存在しない。これが『ILO』の、クロノス社が誇る自由度の洗礼というやつか。
(待てよ……バルドさんは『買い出しに行ってこい』と言っただけで、『買え』とは一言も言ってない……? いや、お金を渡されたから買い出しだと思ったけど、これってつまり『足りない分は自力でどうにかしろ』っていう試練なんじゃないのか!?)
思考を高速回転させる。
選択肢はふたつ。
街の外の鉱山へ行って自分で掘ってくるか。それとも、街の中で地道に働いて金を稼ぐか。
「……あ、そうだ! 忘れてた!」
俺はハッとして、インベントリの隅に転がっていた「あのアイテム」を呼び出した。
そう、ログイン直後に確認した【クロノス社の特製ギフトボックス】だ。
メッセージカードには『中身はプレイヤーの初期職業や行動によって変化する』と書かれていた。そして開封条件は不明。
もしやと思って、手元の「買い出しリスト」と「2000ルピが入った革袋」を握りしめながら、ギフトボックスに触れてみる。
すると――
『――プレイヤーの現在の状況【クエスト:買い出し(資金不足)】を検知』
『初期職業【鍛冶師】の行動ログを解析……開放条件をクリアしました』
ぽんっ!と軽い音と共に、重厚な箱が光となって弾けた。
中から現れたのは、小さな木箱と一通の手紙。
【開拓者の初心者採掘セット】
・初心者用ピッケル × 1
・鉱石採掘の極意× 1
・【試練の鍵:初心者用鉱山】× 1
「……やっぱり自力で掘ってこいってことかよーーーっ!!」
商業街の真ん中で、思わずツッコミが漏れる。
だが、同時にニヤリと口角が上がってしまうのも事実だった。
「なるほどね……『買い出し』っていう名前の、実質的な初採掘誘導クエストか! 運営もバルドさんも意地が悪いけど……ふふっ、面白くなってきたじゃん!」
早速【鉱石採掘の極意】を使用すると、頭の中に知識が流れ込み、スキル【採掘 Lv.1】を獲得した。これで鉱石を掘る準備は完璧だ。
ピピッ。
タイミングよく、システム音が鳴る。
先ほど申請しておいたフレンドリストから、メッセージが届いたようだ。
送信者:コウタ』
『レイ! 2陣の当選おめでとう! やっとお前とILOできるわ! 今どこにいる? 第1陣の先輩として、始まりの街の美味い飯屋でも奢ってやるよ!』
コウタ――第1陣(先行組)として一足先にこの世界に入り、すでに中堅の【槍士】としてブイブイ言わせている親友からの、余裕たっぷりなメッセージだった。
「先輩风吹かせてドヤ顔してる姿が目に浮かぶな……。よし、渡に船だ」
俺はニッコリと邪悪な笑みを浮かべ、すぐさま返信を打ち込む。
『コウタ、合流しよう。実はバルドさんっていうドワーフの師匠から『買い出し』のクエスト貰ったんだけど、お金足りなくてさ。第1陣の頼れる先輩として、鉱山までの護衛兼ポインティング頼める?』
『コウタ:お安い御用だ! 2陣の初クエスト案内くらい楽勝よ!』
数分後、全身良い装備で固めたコウタと合流した俺は、初心者用ピッケルを肩に担ぎながら鉱山へと向かう。
「……なぁレイ。お前、鍛冶師だろ? なんで買い出しでピッケル担いで戦場みたいな鉱山に行こうとしてんの?」
「いやー、このゲーム自由すぎてさ。憧れの生産職になったのに、思ってたんと全然違うんだよ」
何も知らずに同行を快諾してくれた頼もしい(?)先輩を巻き込み、俺の最初の試練である鉱山攻略が幕を開けるのだった。
ちなみにギフトボックスは職業と初期行動によって成長応援キャンペーンとして配布されてるものです。
テイマーとかを選んでたらテイムモンスターが出てきたりします。




