相棒の使い心地とレベリング
転送陣の眩い光が収まると、潮風の匂いと眩しい日光が俺とコウタを出迎えた。
イベント島――レアモンにボコボコにされてデスペナを食らい、一度は撤退を余儀なくされた因縁の場所だ。
「戻ってきたな、レイ」
「ああ。だが今回はただのリベンジじゃない。まずはこの手になじませるのが先だよ。」
俺は背中から『深海鋼の重圧大剣』を引き抜いた。
バルド師匠の工房で極限まで打ち直し、重心バランスを研ぎ澄ませた相棒。手に取った瞬間のズシリとした心地よい重みと、吸い付くようなフィット感が以前とは段違いだ。
「いきなりあのレアモンに突撃しても返り討ちにあうだけだしな。まずは周辺のモンスターで動きのテストとレベリングだ!」
コウタが背中の槍を抜いてニヤリと笑う。
「よし、あそこにちょうどいい標的がいるぞ」
コウタが指さした先、砂浜と草原の境界付近に、体長二メートルを超える巨大な甲殻類モンスター『アーマーグラブ』が三体、ハサミを威資格するように鳴らしながら蠢いていた。硬い外殻に覆われた、硬度高めの典型的な前衛泣かせモンスターだ。
「ちょうどいい試し斬り相手だ。コウタ、一歩引いててくれ。俺が先陣を切る!」
「おう、頼んだぜ!」
俺は大地を力強く蹴り出し、アーマーグラブの群れへと躍り出た。
以前なら、大剣を構えて間合いを詰める際、どうしても上半身に余計な力が入り、踏み込みに一瞬の遅れが生じていた。だが今は違う。重心がグリップ付近に絶妙に寄ったことで、体が勝手に前へ引きずられるような感覚がなくなり、トップスピードのまま一気に間合いへと侵入できる。
『ガルルルッ!』
察知したアーマーグラブの一体が、岩をも砕く巨大なハサミを振り上げて襲いかかってきた。
(見切れる……!)
横振りの大振りな攻撃を最小限のスウェーで回避。ハサミが目の前をかすめた直後、間髪入れずに大剣を振り抜く!
「ハァッ!!」
以前なら攻撃を避けた後の切り返しで『軸のブレ』が生じ、一瞬硬直が生まれていたはずだ。しかし、打ち直された大剣は、俺の意図通りに滑らかな弧を描いて一直線にアーマーグラブの胴体へと叩き込まれた。
ドカンッ――!!
『固有効果:過剰打撃』が発動。
装甲無視の強烈な衝撃波が甲殻の内部へと直接伝わり、硬固な外殻を一瞬で粉砕する。それだけに留まらず、振り抜き後の隙が劇的に減ったおかげで、そのままスムーズに第二撃の叩きつけへと派生できた。
「『重力脈同調』――潰れろ!」
ズドォンッ!!
STR値に比例した爆発的な重力波が刀身から解き放たれ、地面ごとアーマーグラブを叩き潰した。一体目が一通りのコンボでポリゴンとなって弾け飛ぶ。
「うわっ、マジかよ!? あの硬いアーマーグラブを二撃で沈めた……!?」
後ろで見守っていたコウタが目を見開いて声を上げる。
「手応えが全然違う……! 振り抜いた後の復帰がめちゃくちゃ軽い!」
残る二体が同時に襲いかかってくるが、今の俺には恐れる理由はなかった。
攻撃をいなし、正確に弱点へ重圧を叩き込む。かつてのような「大剣に振り回される感覚」は完全に消え去り、文字通り体の一部として刃が追従してくる。
数分もしないうちに、残りのアーマーグラブも光の粒子となって消滅した。
【経験値を獲得しました】
【プレイヤーレベルが上がりました!】
「ふぅ……いい感じだ」
大剣を背中の鞘へと納めると、カチリと心地よい金属音が響く。
「いやあ、恐れ入ったぜ。見違えるほど動きが洗練されてる。これならイベントエリアの奥に進んでも十分に戦えそうだな!」
コウタが感心したように肩を叩いてくる。
「ああ、だが慢心は禁物だ。あのレアモンは攻撃力もスピードも段違いだったからな。このエリアの素材を集めつつ、もう少しスキルとレベルを引き上げておくぞ」
「おう! 徹底的に準備して、最高の状態でリベンジしてやろうぜ!」
俺たちは顔を見合わせ、不敵に笑い合った。
新生した大剣のポテンシャルを肌で感じ取った俺たちは、更なる強さとレベリングを求め、再び未知のイベントエリア奥地へと踏み出していく。
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