リベンジに向けて
転送陣を潜り抜け、俺とコウタはいつもの活気に溢れる『始まりの街』へと戻ってきた。
賑わう大通りを進み、バルド師匠の工房へと足を進める。
カンッ……カンッ……カンッ……。
重厚な建物のドアを開ける前から、腹に響くような力強い金槌の音が響き渡っていた。
「師匠! 戻りました!」
「おう、レイか! ……ん? そっちの連れは誰だ?」
広々とした作業場の中央、赤々と燃える炉の火光に照らされながら巨大な金槌を振るっていたバルド師匠が、汗を拭いながら振り返った。
「あ、俺のパーティーメンバーで友達のコウタです!」
「初めまして! コウタっていいます。いつもレイがお世話になってます、バルドさん!」
コウタが頭を下げると、バルド師匠は豪快に笑いながら太い腕を組んだ。
「おう、コウタか! レイのバカに付き合ってくれてありがとな。……で、イベント島へ繰り出したって聞いてたが、もう戻ってきやがったのか?」
「いやあバルドさん、実は俺たち、イベント島でレアモンにボコボコにされて初デスペナ喰らってきたんですよ」
「ガハハハ! なんだ、景気のいい話じゃねえか! レベルも上がって調子に乗ってるから足元を掬われるんだ。いい薬になったろ」
コウタの報告に師匠が豪快に笑う。俺は苦笑いしながら、インベントリから例の露店で買い取った品を取り出した。
「デスペナは反省するとして……師匠、露店街で面白いものを買ってきました。ちょっと見てくれませんか」
俺が差し出したのは、手のひらにすっぽりと収まる程度の小さな黒ずんだ『破片』だ。
「ん……? なんだありゃ、ただの焦げた石ころにしか見えんが……」
師匠は怪訝そうな顔をしながらも、俺の手からその小さな破片を受け取った。
その瞬間、師匠の目つきが一変した。
「……ッ!? なんだこの重みは……!? たったこれだけの大きさで、普通の鉄塊より遥かに重ぇぞ!?」
「ですよね。俺も手で触った瞬間、只者じゃないってピンときたんです。でも、鑑定スキルを使っても情報が一切出てこなくて」
師匠は破片を炉の火にかざしたり、虫眼鏡のような鑑定器具でのぞき込んだり、小さな金槌でコツンと叩いて音を確かめたりと、職人特有の鋭い観察眼で破片を調べ始めた。
「フム……表面の焦げは、凄まじい高熱の熱波に晒されて出来た薄い皮膜だな。削り落とせば……」
師匠がタガネを使って慎重に表面の黒ずみを一筋削り落とす。
すると、その隙間から、まるで夜空を凝縮したかのような深い蒼黒の金属光沢が顔を出した。
「おいおい……マジかよ。こいつは『星辰鉄』の破片じゃねえか!?」
「星辰鉄……!?」
俺とコウタは思わず声を上げた。
「ああ。滅多に現れねえ極上のレア鉱石だ。星が落ちた場所の超高圧と極限の魔力で極稀に生まれるって言われてる伝説級の金属だよ。だが……惜しいな。サイズが小さすぎる。新しい武器を作るのはもちろん、レイのお前の『深海鋼の重圧大剣』を一から打ち直すだけの量にも到底足りねえ」
「やっぱりそうか……」
俺は少し肩を落とした。いくら伝説級の金属だとしても、量が足りなければ形にはできない。
「無理に今削って使い潰すのも勿体ねえな。これほどの代物だ、もっと大きな塊が手に入るか、相応しい他の極上素材が揃うまで大切に保管しておけ。……で、どうするレイ? 敗北悔しさを抱えたまま指をくわえて待つか?」
師匠がニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「まさか! 星辰鉄はお預けでも、今できる限界まで自分と装備を鍛え上げます。師匠、俺の『深海鋼の重圧大剣』のメンテナンスと調整に付き合ってください!」
「ガハハ! そうこなくっちゃな! よし、まずは炉の火を最大まで上げるぞ!」
俺は胸を躍らせ、愛機である『深海鋼の重圧大剣』を背中から引き抜いて作業台へと載せた。
「コウタ、悪いが少し時間がかかる。俺はこの大剣を限界まで研ぎ澄まして鍛え直す!」
「おう、任せろ! 最高の仕上がりを楽しみにしてるぜ!」
伝説の鉱石『星辰鉄』を手に入れた胸の高鳴りと、初デスペナの敗北を糧に、俺の鍛冶師としての新たな挑戦が始まった!
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