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VRMMOで憧れてた鍛冶職を取ったけど思ってたんと違う....  作者: ヤミラミ


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新たな相棒とサマーイベント

熱炉から立ち上る澄んだ炎の光と、金床に金属が激しく打ち据えられる重厚な音が、工房の空気を支配し続けていた。


どれほどの時間が経過しただろうか。


滝のように流れる汗が目に入りそうになるのを構う余裕もなく、俺はただ一心不乱に金槌を振り下ろし続けた。

全身の筋肉、STR140の筋力を余すことなく叩き込み、王都で仕入れた『深海鋼』の原石3個を限界を超えて圧縮していく。高熱化触媒の助けを得て軟化した超高密度の希少金属は、俺の一打ごとにその密度を増し、余分な不純物を吐き出しながら、均一で強固な一つの塊へと鍛え上げられていく。


「ここだ……! 重力脈の結晶を定着させる!」


熱処理が極限に達した瞬間、俺は赤く輝く刀身の芯へ『重力脈の結晶』を押し込んだ。

結晶が放つ蒼い魔力の脈動が、超高密度の深海鋼全体へと巡り渡る。高密度の金属と特殊な力場補正が完全に融合し、刀身が重厚な漆黒と怪しい蒼光を帯びて光り始めた。


「ハァァァァッ……! これで……決まれぇぇぇっ!!」


身体の底から絞り出した雄叫びとともに、渾身の力を込めた最後の一撃を金床へ叩きつけた!


ドゴンッ――!!


腹に響くような極大の打撃音が工房内に響き渡り、空気が激しく震えた。


直後、青白く燃えていた炉の火がふっと静まり返る。

金床の上に横たわっていたのは、完成したばかりの漆黒の大剣だった。


冷水に浸して焼き入れを行うと、凄まじい水蒸気が工房全体を白く覆った。

蒸気が晴れた後に現れたその姿は、前回の『黒鋼の圧砕大剣』をも上回る、圧倒的な重圧感を放つ巨大な一刃だった。


刃幅は通常の大剣の1.3倍ほど。過剰な分厚さと過酷な密度の詰まった重量感が、存在その目で周囲を威圧している。刀身の表面には、高圧圧縮によって生まれた美しい金属の層と、重力脈の蒼い紋様が浮き出ている。洗練された装飾など一切ない。ただ愚直に、破壊力と重さ、そして圧倒的な耐久度だけを追求した鍛冶師の作品だ。


「……ふぅ、ふぅ……! 出来た……!」


息を荒らげながら大剣を持ち上げようとするが、持ち手から伝わる重量感は尋常ではなかった。常人なら持ち上げるどころか、床に転がすことすら叶わないレベルの激重設定だ。だが、STR極振りの俺の腕には、この重さが最高に心地よくフィットした。


「おいおい……マジで形にしやがったか」


横で見守っていたバルド師匠が、呆れと感嘆の混ざった溜め息を吐きながら歩み寄ってきた。

師匠は作業台に置かれた大剣の刀身を太い指で弾く。キン、と硬質でどこか低い澄んだ余韻が響いた。


「深海鋼をここまで無茶苦茶に圧縮して繋ぎ止めるとはな。お前のその力任せな打ち方、一歩間違えれば炉もろとも吹き飛ぶ芸当だぞ。……だが、いい仕事だ。文句なしの逸品だぜ」


「師匠……! ありがとうございます!」


師匠からの最高のお褒めの言葉に、俺は達成感で胸がいっぱいになった。

さっそく、完成したばかりの武器にステータス鑑賞スキルをかざす。


【詳細鑑定】

名称:『深海鋼の重圧大剣』

品質:極上

攻撃力:105

【要求ステータス】STR 120 以上

【固有効果】

・『過剰打撃』:攻撃時、相手の防御力・装甲耐久度を大幅に無視した衝撃ダメージを与える。

・『重力脈同調』:装備者のSTR値に比例して武器攻撃力を上昇させ衝撃波を出す。


前回作った『黒鋼の圧砕大剣』を遥かに凌駕するモンスター性能だ。さらに装備者のSTRが高ければ高いほど性能が跳ね上がる固有効果まで付いている。これならSTR極振りの俺が振るえば恐ろしい威力になる。


「よし……! これで準備は完全に整った!」


大剣を背中のホルダーに収めると、ずっしりとした重みが背中に伝わってきた。

バルド師匠に深々と頭を下げて感謝を伝え、俺は『鉄槌の獅子亭』を後にした。


「ふぅ……イベント開幕まであと5日か」


インベントリの日付とシステムウィンドウを確認する。

王都での激レア素材の買い出し、そして師匠の工房での限界突破鍛造を終えても、サマーイベント開幕まではまだ丸々5日間の猶予が残されていた。


「これだけ時間があれば、じっくり試し振りと準備ができるな」


俺はフレンドリストを開き、コウタにメッセージを送った。


『王都から戻って自分用の新兵器打ち終えたぞ! イベントまであと5日あるし、試し振りに付き合ってくれ!』


すぐにコウタから『マジか! 仕事早すぎだろ! すぐ合流するわ!』と威勢のいい返信が届いた。


それからの5日間は、イベントに向けた完璧な調整期間となった。

コウタたちとパーティを組み、始まりの街や王都周辺のダンジョンや高レベルフィールドへ繰り出しては、新兵器『深海鋼の重圧大剣』の振り心地やスキルの連動を確かめた。


試し振りでの威力は凄まじく、岩石モンスターを一撃で粉砕した際には、コウタが「お前それ本当に大剣か? 攻撃の範囲と衝撃波の威力が物理のバグだろ……」と引きつった顔でどん引きしていたのが実に愉快だった。


残りの日数で予備の修繕砥石や回復ポーションを大量に買い込み、装備の最終メンテナンスも万全に済ませた。


――そして、ついに訪れたイベント当日。


始まりの街の中央広場には、何千人ものプレイヤーがぎっしりと集まっていた。

広場の中央には巨大なカウントダウンのホログラムが浮遊し、プレイヤーたちの興奮した熱気が夜の空気を震わせている。


「おい聞いたか!? イベントエリアは広大な南の諸島らしいぞ!」

「限定のレア素材とか、イベントボス専用のドロップ品もあるらしい!」

「第一陣のトップギルドも全員参加するってよ! 激戦になりそうだな!」


サマーイベント開幕まで、あとわずか数分。


俺は隣に立つコウタと見合わせ、背中に背負った新たな相棒『深海鋼の重圧大剣』の柄に手をかけた。


誰も試したことのないSTR極振り鍛冶師というプレイスタイル。

王都で仕入れた極上素材と、師匠の助言、そして己の筋肉と技術で叩き上げた最高の武器。


「待ってろよサマーイベント……! 俺のクラフトとこの大剣が、どこまで通用するか試してやる!」


カウントダウンの数字がゼロに向けて刻一刻と刻まれていく中、俺たちの新たな戦いがいよいよ幕を開ける!

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