王都への道②
道中の『迷いの森』を抜け、王都へと続く切り立った岩山が連なる峠道へ。
コウタたちの完璧な連携により、現れる雑魚モンスターは一瞬で掃討されていく。
そして、峠の頂上付近――開けた荒野のエリアに足を踏み入れた瞬間、地の底から響くような咆哮が響き渡った。
グルゥァァァァオッ!!
地面を揺らしながら現れたのは、全身が黒い岩石と硬質化した皮で覆われた巨大な熊――エリアボス『岩鎧の巨熊』(Lv.32)だ。
その体表を覆う圧倒的な硬度の「岩鎧」は物理攻撃の大半を弾き返す、前衛アタッカー泣かせの強敵である。
「出たな! みんな、配置につけ!」
コウタが長槍を深く構え、真っ先に飛び出す。
「ソラ、全体バフ! ガルドは最大詠唱に入れ!」
「【ハイ・エンハンス・フォース】! みんな、気をつけて!」
ソラの強化魔法を受け、コウタが正面から巨熊の攻撃を捌く。
コウタが長槍で鋭い突きを叩き込むが、カンッ!と硬い金属音が響いて弾かれた。
「くっ……! 岩鎧が固すぎて正面からだとじゃまともに通らねぇ!」
「コウタ、足元を狙う! 【トリップ・ワイプ】!」
すかさずライガが影のように巨熊の背後に回り込み、関節部へ足払いスキルを正確無比に叩き込む。
硬質な鎧の隙間を射抜かれた巨熊は体勢を崩し、ガクリと膝をついた。
「ナイスライガ! ガルド、やれっ!」
「待たせたな! 焼き尽くせ――【ギガ・フレアバースト】!!」
後方で長い詠唱を終えたガルドが杖を突き出すと、体勢を崩した巨熊へ向けて巨大な炎の球体が直撃。荒野一面を吹き飛ばすような大爆発が巻き起こった。
ドカァァァァァン!!
「グオォォォ……!」
体力を大きく削られ激怒した巨熊が、爆煙を破ってガルドたち後衛陣へ向けて突進を開始する。直線上のターゲットをなぎ払う怒りの突撃攻撃だ。
「しまっ……! ヘイトが跳ね上がった! 追いつかない!」
コウタの叫びが響く。長槍の機動力をもってしても、ボスの突撃速度には届かない。後衛のガルドとソラには回避するだけの余裕がない。
(まずい……!)
俺は躊躇なく、背中に背負っていた『黒鋼の圧砕大剣』を一気に引き抜いた。
鍛冶の超圧縮技術によって極限まで密度を高めた、常人には持ち上がることすら叶わない大鉄塊。
STR130の筋力を込めて踏み込み、巨熊の進路上に割り込む。
「そこを通すかァッ!!」
突進する巨熊の側面へ、フルスイングで大剣を叩きつけた!
「てやぁぁぁっ!!」
ドゴォォォォォォンッ!!
まるで隕石が衝突したかのような破壊音が荒野に響き渡る。
超強烈な重量の一撃は、巨熊の硬質な鎧ごと側頭部を捉え、その巨体を横方向へ強烈に吹き飛ばして岩壁へと叩きつけた。
「「「「はぁぁぁぁぁ!?」」」」
コウタ、ライガ、ソラ、ガルドの4人が同時に目を丸くして絶句する。
「おいおいおい!? 鍛冶屋がフルスイングでボスの突撃をぶっ飛ばしたぞ!?」
「あの大剣の重さなんだよ……岩鎧ごと吹っ飛ばしやがった……!」
「今だコウタ! トドメ!」
俺の声で我に返ったコウタが、即座に槍先へ眩い光を纏わせて躍動した。
「おおおおッ! 【ライジング・ドラグーン】――ッ!」
閃光の穿ちが一閃、岩壁に激突した巨熊の胸元を深く穿ち抜く。
巨熊は断末魔の咆哮を上げ、無数の光の粒子となって霧散した。
ピロリン♪
【エリアボス『岩鎧の巨熊』を討伐しました】
ピロリン♪
ピロリン♪
【レベルが上がりました! LV 22 → LV 24】
連続して流れるクリア音とともに、レベルアップの光が俺の体を包み込む。
【 SYSTEM STATUS WINDOW 】
PLAYER NAME : レイ
RACE : ヒューマン
JOB : 鍛冶師 Lv.24 [ 850 / 9200 ]
[ VITALS ]
HP : 180 / 180
MP : 30 / 50
STM : 95 / 100
[ PARAMETERS ]
STR : 140(+112)
VIT : 18(+3)
AGI : 6
DEX : 18
INT : 5
[ ACQUIRED SKILLS ]
・【鍛冶 Lv.7】 ・【鉱石鑑定 Lv.5】
・【道具習熟 Lv.6】・【採掘 Lv.5】
「ふぅ……! ボス撃破の大量経験値のおかげで、一気にレベル24まで上がったよ!」
大剣を肩に担ぎ直し、息を整えて笑う俺に、コウタたちが引きつった笑みを向けながら集まってきた。
「いや……本当に助かったけどさ、お前もう前衛で大剣ブン回すアタッカーだろ……」
「レイの打ったその大剣も凄いが、それを平然と振り回すレイ本人の筋力が一番ヤバいわ……」
ライガとガルドが呆れ半分、感心半分に肩をすくめ、パーティは再び大きな笑いに包まれた。
ボス戦を終え、峠道を下りきると視界が一気にひらけた。
目の前に広がっていたのは、地平線の彼方まで続く広大な緑の平原。
そしてその中央に、始まりの街とは比べものにならないほど巨大な城塞都市が鎮座していた。
白い石造りの巨大な外壁が陽の光を浴びて輝き、中心には天を突くように聳え立つ美しく壮麗な建物――王都『グラン・ゼリア』だ。城壁のあちこちからは、定期的に巨大な乗合飛空艇が空へと飛び立っていくのが見えた。
「すげぇ……」
「そうだ。ここがあらゆるプレイヤーと物流が集まる中心都市だ」
コウタが誇らしげに胸を張る。俺たちは王都の巨大な正門をくぐり、活気に満ちあふれた街の中央広場へと向かった。
広場の中央で浮遊する青い結晶――中央転移門にそっと手を触れる。
ピロン♪
【王都『グラン・ゼリア』の転移門を記憶しました】
【これより『始まりの街』および解放済みの各拠点への相互転移が可能になります】
「よし……! これでいつでも始まりの街と王都を行き来できるぞ!」
転移門の登録を無事に済ませ、コウタたちと笑顔で別れの挨拶を交わす。
「ありがとな、みんな! 最高に熱い戦闘だったよ!」
「おう! 珍しい素材が見つかるといいな。また王都で何か面白い装備を作ったら頼むぞ、レイ!」
手を振ってギルド本部へと向かうコウタたちを見送り、俺は一人、王都の大通りに立った。
インベントリにある【115,200 G】という膨大な資金の存在を確かめ、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「よし……! この資金があれば、王都の激レア素材だろうが何だろうが買い放題だ。イベントに向けて、誰も見たことがない最高に尖った武器を叩き上げてやるぞ!」
サマーイベント開幕まで、あと1週間。
大金を手にした俺の、王都での素材仕入れと更なるクラフトへの挑戦が今始まる!




