新鉱石と、採掘
始まりの街から徒歩で一時間ほど。
ゴツゴツとした褐色の岩肌が露出する『岩山鉱山ダンジョン』の入口に、俺たちは到着していた。
「よし、ここから先はレベル20〜30帯のモンスターが出る。俺たちが前を歩くから、レイは後ろでついてきてくれ」
コウタが大剣を構え、ライガとガルド、ソラが手際よく陣形を組む。
さすがはレベル30前後の中堅パーティだ。道中で襲いかかってくる岩トカゲや巨大な洞窟コウモリを、コウタの挑発とガルドの範囲魔法、ライガの追撃であっという間に片付けていく。
「すごい……! みんな息がぴったりだね!」
「へへっ、これでも一陣の背中を追いかけてる側だからな! ――よし、ここだ。目的の採掘ポイント!」
坑道の奥に進むと、壁一面に鈍く輝く黒い鉱石の結晶群が群生していた。
「これが『黒鋼石』だ! 鉄よりもはるかに硬くて、これを混ぜて打った武器は耐久値と威力が跳ね上がるらしいぞ!」
「これが黒鋼石……! すごい、見た目からしてすごく重厚だ……!」
俺は目を輝かせ、腰に下げていた『採掘スキル』用の初心者ツルハシを取り出した。
俺もバルドさんの工房で下処理を手伝っているうちに、いつの間にか『採掘スキル』がLv3になっていたのだ。
「よし、早速掘ってみ――」
ガィィィンッ!!!!
激しい金属音とともに、俺の腕にビリビリとした猛烈な衝撃が走った。
「痛っ……!? え、固っ!?」
黒鋼石の表面には、かすり傷ひとつついていない。
逆に、俺が手に持っていたツルハシの先端が、ポッキリと折れてしまっていた。
「あぁっ……! ツルハシが折れた!?」
それを見たコウタたちが苦笑いしながら歩み寄ってくる。
「あー、言っとくの忘れてた! 黒鋼石はめちゃくちゃ硬いから、採掘スキルが最低でも【Lv8】以上ないとダメージが入らない仕様なんだよ。俺もこの前の鍛冶と採掘の経験値稼ぎで、1、2日必死こいてスキルLv8まで上げて、ようやく掘れるようになったばかりだし」
コウタが、自分の背中に背負っていた立派な高級ツルハシを誇らしげに見せる。
「レイの採掘スキルって今いくつだ?」
「えっと……Lv3だよ」
「だよねー! Lv3じゃ適正スキル値に全然届いてないから、システムのアシストが入らなくてツルハシが弾かれちゃうんだよ。よし、俺たちが掘るからレイは――」
「ちょっと待って」
俺は折れたツルハシを仕舞うと、背中から『剛鉄の破断剣』――昨日俺が気合で叩き圧縮して作った、例の鈍器みたいな長剣を引き抜いた。
「え? レイ、何すんの……?」
「スキルレベルが足りなくてツルハシが弾かれるなら……直接叩き割ればいいのかなって」
「いやいやいや! スキルLv3で殴ったってシステム的にダメージなんて通らないし、武器の耐久値が死ぬだ――」
俺はコウタの制止を聞かず、レベル16の全身の筋肉を連動させた。
レベル1(初期値18)からレベル16になるまでの15レベル分、獲得した75ポイントを1ミリも浮気せず『STR』のみに注ぎ込んだ【STR 90】の極振りパワー。
それをそのまま背中の広背筋から腕、そして『剛鉄の破断剣』の刀身へと全集中させる。
「ぬんっ……!!」
【固有効果:構造破壊(ガードおよび建造物に対するダメージ+80%)発動】
【固有効果:重量過重(STR値を攻撃力に直接加算)発動】
ドォォォォォンッ!!!!
鉱山全体を揺るがすような爆音。
「「「「うわあああぁぁぁ!?」」」」
コウタたちの悲鳴が響く中、黒鋼石が埋まっていた岩盤ごと、半径二メートルにわたって派手に粉砕・破砕された。
「ジュワぁぁぁ……」と白煙が立ち込める中、砕け散った大量の『極上・黒鋼石の塊』が、ゴロドッサリと俺の足元に転がり落ちてくる。
名称:極上・黒鋼石の純結晶(物理破砕)
品質:最高級
※採掘スキルのレベル不足を、規格外の物理威力がシステム枠を超越して強引に破壊。不純物が完全に除去された極上の状態です。
「……あ、すごい! 綺麗に塊でポロポロ取れたよ! ツルハシで削るより一気に取れて効率的かも!」
俺が満面の笑みで振り返ると、コウタ、ライガ、ソラ、ガルドの4人は、開いた口が塞がらない様子で固まっていた。
「……なぁ、ライガ」
「……なんだ、コウタ」
「俺が1、2日必死こいて上げた採掘スキルLv8って……一体なんだったんだ……?」
「何も言うな……心が折れる……。なんだよあのダメージ数値……!! スキルレベルが足りない(Lv3)なら弾かれるはずのゲームシステムを、レベル16で【STR 90】にした狂人が大剣の暴力で地形ごと砕き割ってんじゃねぇよ!!」
コウタとライガの悲鳴のような絶叫が坑道に響き渡る。
俺は「やっぱり筋肉(STR)がつくと、採掘スキルの低さもカバーできて助かるなぁ」と、さらに筋力トレーニングへの情熱を燃やすのだった。




