黒鋼の超圧縮と、筋肉鍛冶
『岩山鉱山』での一風変わった(?)採掘を終え、始まりの街へと帰還した俺は、他には目もくれず真っ直ぐバルドさんの工房へと向かった。
作業台の上にドサッ!! と地響きのような重厚な音を立てて広げたのは、例の「物理破砕」によって強引に手に入れた大量の『極上・黒鋼石の純結晶』だ。
通常ならツルハシで地道に削り出すため、周囲の雑石や不純物が混ざりやすい。しかし、地盤ごと力任せに打ち砕いた副産物のおかげか、不純物が完全に除去された最高級の結晶ばかりが集まっていた。どれも深みのある鈍い光を放ち、見るからに重厚で美しい漆黒の輝きを宿している。
「ほう……お前、初心者ツルハシしか持っていかなかったはずだが、えらく質のいい黒鋼石をごっそり持ち帰ってきたな」
工房の奥から太い腕を組みながら出てきたバルドさんが、黒鋼石の大きな塊を一つ手にとり、感心したように太い眉をひそめた。
「へへっ、ちょっと工夫して採掘してきたんです! さっそくこれを使って、新しい武器と防具を作ってみたいんですけど……!」
「好きに使いな。黒鋼石は鉄よりはるかに硬く、融点も非常に高い。普通の鍛冶師なら、炉の温度を極限まで引き上げて、時間をかけて慎重に鎚を打つ難易度の高い高耐熱・高耐久素材だ。お前のその腕でどう料理するか、じっくり見せてもらうぞ」
「はいっ!」
俺はやる気満々で袖をめくりあげ、真っ赤に燃え盛る炉の中に黒鋼石の純結晶を投入した。
バルドさんの言う通り、黒鋼石は本当に頑丈だ。普通の鉄なら数分で赤くなって柔らかくなるところが、黒鋼石はいくら熱してもなかなか柔軟性を持たない。一般的な鍛冶師であれば、焦らずゆっくり熱を通し、金属が十分に熱せられてから徐々に鎚を入れて形を整えていくのだろう。
だが、俺の鍛冶理論(筋トレ理論)は違う。
(熱が通り切るのを待つより、熱いうちに俺の圧倒的な力で強引に叩き潰して、分子の隙間をギチギチに凝縮させればいいんだ!)
「ふぅぅぅ……っ!!」
俺は静かに呼吸を整え、レベル16(初期値18+15レベル分の75ポイントのほぼすべてを注ぎ込んだ【STR 90】)の全身の筋肉を連動させた。
足裏から地面をしっかり掴み、背中の広背筋から大胸筋、そして太い上腕三頭筋へと限界まで力を集中させる。そして、バルドさんから借りている重たい鍛冶ハンマーを天高く振りかぶった。
「ぬんっ……!!!!」
ガンッッッ!!!!!
工房全体が激しく揺れ、まるで大砲でも打ち込まれたかのような猛烈な重砲音が周囲に響き渡った。
「なっ……!?」
バルドさんが思わず目を丸くする。
一度の打撃で、まだ半分しか熱が通っていなかったはずの超硬質素材・黒鋼石が、まるで柔らかい粘土のように一瞬でペチャンコに叩き潰されたのだ。
「まだまだぁっ!! 冷める前に叩き潰す!!」
ドスッ! ガンッ! ドォンッ!!
通常なら何時間もかけ、何千回と丁寧に叩いて行われる高圧縮の鍛造プロセス。それを俺は、圧倒的な腕力と体重移動の暴力(STR 90)によって、わずか数分間で力づくで終わらせていく。ハンマーが打ち下ろされるたびに強烈な衝撃波が巻き起こり、工房の火の粉がブワッと舞い上がった。
「おいおいおい……素材を鍛造してんのか、力任せに叩きのめしてんのか分からねぇ音させてんな……」
最初はあ然とした表情で見守っていたバルドさんだったが、俺の手元で徐々に形作られていく漆黒の大剣と防具の『密度』を見て、次第にその表情を引き締めていった。
「……技は相変わらず支離滅裂で壊滅的だが……不純物の入っていない最高級の結晶を、自前の腕力だけで力任せに極限まで密度を高めてやがる。素材の持つ本来の硬度を、筋肉と力技で強引に引き出していやがるのか……」
それから汗だくになりながら夢中でハンマーを振ること数時間。
俺が叩き上げたのは、鈍い漆黒の光を放つ無骨極まりない大剣と、前腕をすっぽりと覆う重厚な腕甲だった。
名称:黒鋼の圧砕大剣
品質:上級(力任せの超圧縮)
攻撃力:85
【要求ステータス】STR 100以上
【固有効果】重量過重・中(STR値を攻撃力に加算)
名称:黒鋼の剛腕甲
品質:上級(筋力成形)
防御力:45
【要求ステータス】STR 80以上
【固有効果】打撃威力+15%
「できた……! 攻撃力85!! 防御力も45もあるぞ!」
俺は達成感に満ちあふれた笑みを浮かべ、額の汗を拭った。
昨日作った鉄の破断剣(攻撃力66)から大幅にパワーアップだ!
要求STRが「100」と「80」という常識外れな数値になってしまったが、いまの俺(STR 90)に剛腕甲の補正や全身の筋力を合わせれば、ギリギリ力任せに振り回せる計算だ。
「……ハッ、相変わらず鍛冶の技術の無さを、圧倒的な筋肉で強引にカバーした歪すぎる代物だな。だが、性能だけ見りゃそこらの中堅職人じゃ逆立ちしても作れねぇ化物だ」
バルドさんは豪快に笑うと、俺の肩をぽんと力強く叩いた。
「よし、レイ。その装備を身につけて、さらに強い金属と鍛冶の領域に挑んでみろ!」
「はいっ! ありがとうございました、バルドさん!」
俺は新しく仕上がった漆黒の装備を身にまとい、更なるトレーニング(筋トレ)と次のクラフトへの情熱を静かに燃やすのだった。
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