表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
燃えカスの守り人 外伝  作者: K3
燃えカスの守り人 外伝「犬神村事件」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/17

なぜか、引いた

**第7話 ——なぜか、引いた**


【前回までのあらすじ】

廃村にふらりと現れた「観光客」、佐藤士恩(★ジオン)。


【今話の見どころ】

午後一時半、犬神大明神の襲撃が始まる。

千の犬の群れ。

折れていく桃木剣。

そして——なぜか、引いた。


それでは、本編をお楽しみください。

Part 1 ——震える観光客

 

 午後一時半。

 

 廃村は、静かだった。

 

 社の奥に蠢く、犬神大明神の気配。

 

 それは、お父様の結界札によって社の奥へ、押し戻されている。

 

  でも、消えたわけでは、ない。

 

  ただ、結界に押し返されているだけ。

 

  いつ破られても、おかしくない。

 

 わたくしは、ござの上で社の方を見つめていた。

 

 緊張で肩が強張っている。

 

 そして——もう一つの緊張。

 

  ジオン様、本当に一般人?

 

 九つの違和感が積み上がっている。一般人にしては視えすぎる。気配なく現れる。坂東先生でも追えない。

 

 でも、確証はない。

 

 お父様の言う「変わり種」、なら説明つくかもしれない。仮説。仮説、ですわ。

 

  目の前のジオン様は、ふつうの観光客にしか見えない。

 

 そう、自分に言い聞かせて、社の方へ視線を戻した。

 

 そして、隣には——

 

 坂東先生。

 

 桃木剣を膝の上に置いて、瞑想するように目を閉じている。

 

  さすが、坂東先生。

 

  緊張の中で霊力を整えてらっしゃるのね。

 

 そして、もう一方の隣には——

 

 ジオン。

 

 ござの隅に、ぺたん、と座っている。

 

 膝を、抱えて。

 

 その背中が、

 

  あら?

 

 少し、震えていた。

 

「ジオン様」

 

 囁いた。

 

「あ、はい」

 

 ジオンが糸目のまま、振り返った。

 

 その顔は——

 

  蒼い。

 

 血の気が、引いている。

 

 頬に、汗。

 

 夏の暑さの汗、ではない。

 

 冷や汗。

 

  え。

 

  ジオン様、お顔色悪いですわ。

 

  それから、震えてる。

 

  あら、大変。

 

「ジオン様、お顔色が優れないですわよ」

 

「ええ、まあ」

 

「お辛い、ですか?」

 

「ちょっと、空気が重くて」

 

「ええ」

 

「胸が、ね、ちょっと、苦しいかなって」

 

  あら。

 

  もし一般人なら、こういう霊的な場所、当然辛いですよね。

 

  わたくしたち陰陽師の家系だから、ある程度慣れてる。

 

  でも、ジオン様、ふつうの観光客ならば——耐えられないはず。

 

  ジオン様、これは演技?

 

  いえ、汗は本物。顔色も本物。冷や汗、ですし。

 

  演技で冷や汗、かけるの?

 

  ……いえ、無理ですわね。

 

  ということは、本当にお辛い?

 

  でも、九つの違和感、説明つかない。

 

  ……うーん。

 

  わからない。

 

「ジオン様、お水いかがですか」

 

 リュックからペットボトルを出して、ジオンに渡した。

 

「ありがとうございます」

 

 ジオンは震える手で、受け取った。

 

 ぐびり、と一口飲む。

 

 その仕草が——

 

 なんとも、頼りなかった。

 

 サンダルの足が、ぺたん、とござの上で揃っている。

 

 アロハシャツの肩が、すこし丸まっている。

 

 ぼんやりとした、糸目。

 

  あら、本当にお辛そう。

 

  もし、一般人なら——廃村に迷い込んで、こんな状況、可哀想すぎる。

 

  でも、今までに積み上がった、九つの違和感。

 

  ジオン様、本当に一般人?

 

  いえ。お顔は本当に蒼い。冷や汗も本物。

 

  目の前のお辛さは、本物。

 

  ……変わり種だとしても、霊的な場所が辛い、ということ?

 

  わたくし、わからない。

 

「ジオン様、もしお辛ければ、ござの上で横になってくださいませ」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「無理は、なさらず」

 

「ありがとうございます」

 

 ジオンは力なく、微笑んだ。

 

  あら。

 

  ジオン様、横にならない。

 

  耐えてる。

 

  でも——なぜ?

 

  お辛いなら、横になるのが、ふつうの一般人ですわ。

 

  なのに、耐えていらっしゃる。

 

  ……目的が、ある?

 

  いえ、わからない。

 

 その時、

 

 坂東先生が、目を開けた。

 

「お嬢」

 

「はい?」

 

「ジオン殿のご様子、いかがですか」

 

「お辛そう、ですわ」

 

「ええ。霊力に耐性のない方は、ここに長くいられません」

 

 ジオンは糸目のまま、首を傾げた。

 

「えーっと、れいりょく、ですか?」

 

  あら?

 

  「霊力」って言葉、初めて聞いたみたい。

 

  一般人なら、そうですわね。

 

「ええ。我々の結界の中に入れているとはいえ——異界の圧力は、肌で感じるはずです」

 

「いえ、ぼくよくわかんないんですけどね」

 

 ジオンは、ぽりぽりと頭を掻いた。

 

「ま、ちょっと、空気重い感じはしますけど」

 

  あら。

 

  しっかり感じてる、ご様子。

 

  でも、「霊力」「異界」「結界」、ぜんぶ初めて聞いたお顔。

 

  「空気が重い」って、ご自分の言葉に翻訳してる。

 

  一般人なら、そう。

 

  ふつう、専門用語知らないですもの。

 

 坂東先生は静かに、ジオンを見た。

 

「ジオン殿、辛ければすぐにお声をかけてください」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

「我々ができる限り、お守りしますので」

 

「ありがとうございます」

 

  坂東先生、優しい。

 

  いつもの軍人みたいな雰囲気、消えて。

 

  「お守りします」、って。

 

  ジオン様、本当に巻き込まれてしまった感じ。

 

  わたくしたちに、責任ありますわ。

 

 ジオンは、ござの上で、また煙草を出した。

 

 火を、つける。

 

 ふっと吐いた煙が——

 

  あら?

 

  煙が、また、まっすぐ上に行く。

 

  ジオン様の、周りだけ。

 

 異界の中。空気は止まっているはず。腐臭が漂ってよどんでいる。なのに、ジオン様の煙だけが、まっすぐ立ち上る。

 

  変、ですわよね?

 

  いえ。

 

  たぶん、気のせい。

 

  風は、不規則に流れますもの。

 

  でも、ジオン様の周りだけ、いつも同じ方向に流れているような。

 

  ……いえ。

 

  観察しすぎ、ですわ。

 

  ジオン様、頼りないご様子。一般人。専門用語、知らないご様子。

 

  わたくし、考えすぎ。

 

 そう自分に言い聞かせて、社の方へ視線を戻した。

 

 何か来たら、まずわたくしと坂東先生で、対応する。

 

 ジオン様は、後ろに隠してお守りする。

 

  わたくし、覚悟決めましたわ。

 

  失神しても、失禁しても、わたくしはわたくし。

 

  あの方を、お守りしなければ。

 

 そう、心の中でつぶやいた。

 

Part 2 ——足を伸ばすジオン様

 

 午後二時。

 

 ジオンは煙草を吸い終わって、

 

「真琴さん」

 

「はい?」

 

「ぼく、ちょっと足を伸ばしてきますね」

 

「えっ?」

 

「すぐ戻ります」

 

 また出歩くつもりらしい。

 

「ジオン様」

 

「はい?」

 

「お辛い中、申し訳ありませんが——」

 

「はい」

 

「ござの内側に、いてください」

 

 念を押した。

 

「そうですよね」

 

「結界の外、出ると危険、ですから」

 

「はい、わかりました」

 

 ジオンは、ふらふらと立ち上がった。

 

 その足元が、本当に頼りなかった。

 

 サンダルが、ぺた、ぺたとござの上で揺れる。

 

「すぐそこの、社の横で」

 

「ええ」

 

「視界に入らない所で」

 

「ええ」

 

「ちょっとだけ、行ってきます」

 

 ジオンは、社の横へぷらぷらと消えていった。

 

  あら。

 

  大丈夫、かしら。

 

  お辛いはずなのに、また消える。

 

  今度は「足、伸ばす」。前は「お手洗い」。

 

  ……毎回、違う。

 

  ……いえ、これ何度目?

 

  別の目的、ですわよね、たぶん。

 

 そして、待った。

 

 一分。

 

 二分。

 

 三分。

 

  遅い。

 

  ジオン様、大丈夫かしら。

 

「先生、見てきます」

 

「お嬢、私が」

 

「いえ、わたくしが」

 

「では、お気をつけて」

 

「ええ」

 

 ござから立ち上がった。

 

 そして、社の横へ回り込んだ。

 

  ジオン様?

 

 呼んでも、返事がない。

 

  あら?

 

  いない。

 

  また、いない。

 

  どこに、行きましたの?

 

 不安になって、社の裏まで回った。

 

  いない。

 

  本当に、いない。

 

  どこ?

 

  もしかして、結界の外に出てしまった?

 

  犬神大明神に、攫われた?

 

 そう思って、坂東先生を呼ぼうとした、その時——

 

「すみません」

 

 ぼそ、と声がした。

 

 振り返ると——

 

 ジオンが、立っていた。

 

「えっ?」

 

  え?

 

  どこから、戻ってきた?

 

「ジオン様!」

 

「あ、すみません」

 

「どちらに、いらっしゃったの?」

 

「いやー、ちょっとぐるっと回ってきまして」

 

「ぐるっと?」

 

「ええ、ぼんやり歩いていたら、こっち側に出ちゃって」

 

  ぐるっと?

 

  わたくし、社の裏まで見ましたわよ?

 

  いらっしゃらなかった、ですわよ?

 

  また、同じ。前と同じ、はぐらかし。

 

 でも、ジオンの顔色は——

 

  あら、青ざめてる。

 

  もう、本当にお辛そう。

 

 蒼い、頬。

 

 冷や汗。

 

 震える、唇。

 

  ジオン様、本当に限界ですわね。

 

  お顔色、本当のお辛さ。

 

  でも、行動は不思議。

 

 そう思って、ジオンの肘を支えた。

 

「ジオン様、御座までお戻りいたしましょう」

 

「ありがとうございます」

 

「お辛い状態でフラフラされたら、危ないですわ」

 

「すみません、そうですよね」

 

 そして、ふたりはござのところへ戻った。

 

「お嬢、お帰りなさい」

 

 坂東先生が、頷いた。

 

「ジオン様、お顔色がますます悪いですわよ」

 

 囁いた。

 

「ええ」

 

「やっぱり、横になってください」

 

「いえいえ、大丈夫です」

 

  大丈夫ではない、ですわよ。

 

  でも、ジオン様、頑張るお顔してる。

 

  男の見栄、かしら。

 

  いえ——目的が、ある?

 

  わからない。

 

  お顔色は、本当に蒼い。お辛さは、本物。

 

  でも、横にならない。理由が、ある?

 

 そして、ジオンはござの上で、煙草をまた出した。

 

 ふっと吐いた、煙。

 

 その、煙が——

 

 また、まっすぐ、上に立ち上る。

 

  あら?

 

  また、まっすぐ。

 

  ジオン様の周りだけ、変わらない。

 

  ……いえ、気のせい、かしら。

 

Part 3 ——異変の予兆

 

 午後二時半。

 

 廃村の空気が、変わった。

 

 最初に気付いたのは、わたくしだった。

 

 ぞわっと、首筋に何かが走った。

 

  え。

 

「先生」

 

「ええ」

 

 坂東先生も、同じ瞬間に目を開けた。

 

「何か、来ますわ」

 

「ええ」

 

 ふたりは、立ち上がった。

 

 桃木剣。

 

 護符。

 

 そして、お父様の結界札。

 

 ジオンは——

 

 ござの上で、ぼんやりと

 

「なんか、空気が重くなってきましたね」

 

 と、つぶやいた。

 

  え。

 

  ジオン様、わかる?

 

  お顔色は、まだ蒼い。お辛そう。

 

  でも、空気の変化、感じてる。

 

  ……一般人なら、ここまでわかる?

 

  いえ、変わり種、ですもの。

 

  わかる、のかも。

 

 そして、社の奥から——

 

 ぞわ、

 

 ぞわ、

 

 ぞわ、

 

 何かが滲み出してくる、感覚。

 

  犬神大明神?

 

  結界、破られた?

 

「先生、結界はまだ効いてます?」

 

「ええ。札は、生きてます」

 

「では、なぜ滲み出してますの?」

 

「結界の外側を回って、攻撃してくる可能性があります」

 

  え。

 

  回り込む?

 

  結界の、外側?

 

  わたくしたち、囲まれる?

 

 そう、思った瞬間。

 

 廃村の奥の、家々の間から——

 

 何か影が、走った。

 

 ひとつ。

 

 ふたつ。

 

 みっつ。

 

  犬?

 

  いえ。

 

  四足だけど、もっと長い。

 

  濡れた、何か。

 

  人間の腕が、混じってる?

 

「お嬢、結界札を追加で貼ってください」

 

「はい!」

 

 リュックから結界札を取り出した。

 

 ござの四方に、ぱしっ、ぱしっと貼り重ねる。

 

 光が、強くなる。

 

 ぞわ、

 

 ぞわ、

 

 ぞわ、

 

 何かが近づいてくる感覚は、止まらない。

 

「ジオン様!」

 

 ジオンに振り返った。

 

「はい」

 

「ござの中央に、お下がりください!」

 

「はい」

 

 ジオンは糸目のまま、ござの中央へぷらぷらと移動した。

 

 その動きが——

 

  あら?

 

  一般人の動き、じゃないような。

 

  すっ、と移動された。お辛そうな様子なのに、足取りに迷いがない。

 

  ……うーん。

 

  また、違和感。

 

  でも、いまは集中。

 

 そして、廃村の奥から——

 

 ばきっ。

 

 家屋の戸が、内側から破られたような音。

 

  え。

 

  どこの、家?

 

  若手陰陽師の死体があった家?

 

 ぞわっと、背筋が震えた。

 

「先生、家屋の奥から出てきましたわ!」

 

「ええ」

 

「いま何匹、来てます?」

 

「三匹は視認しています」

 

 坂東先生の声が固い。

 

「他にもいる可能性?」

 

「あります」

 

「囲まれる?」

 

「可能性、高いです」

 

  囲まれる。

 

  三方から。

 

  いえ、四方から、ですわ、たぶん。

 

  わたくしと坂東先生で、対応しないと。

 

  ジオン様をお守り、しないと。

 

 桃木剣を、抜いた。

 

 セーラー服の袖から、しゅっと、白い刃。

 

 千年の血が、覚えている所作。

 

 左手の鞘に、右手の剣。精神を、ひとつに。

 

 そして——

 

 桃木剣の切っ先を、虚空に向ける。

 

「臨——」

 

 縦に一閃。

 

「兵——」

 

 横に一閃。

 

「闘——」

 

 縦に一閃。

 

「者——」

 

 横に一閃。

 

「皆——」

 

 縦に一閃。

 

「陣——」

 

 横に一閃。

 

「列——」

 

 縦に一閃。

 

「在——」

 

 横に一閃。

 

「前——」

 

 最後の一閃——横に。

 

 四縦五横。

 

 九つの線が、空中に、青白く、残った。

 

 格子状の、結界。

 

 それが、ござの周囲を、淡く包む。

 

「破——」

 

 声。

 

 桃木剣の切っ先で、格子の中心を、つん、と突いた。

 

 光が、ぱっ、と広がる。

 

「お嬢」

 

「先生、儀式、いたしましょう」

 

「ええ」

 

 ふたりは、ござの中央に、向かい合って正座した。

 

 ジオンは、ござの隅で、ぼんやり煙草を吸っている。

 

 リュックから、霊具を取り出した。

 

——清めの香。

 

——六壬式盤。

 

——勾玉。

 

——お父様の護符。

 

 ござの中央に、ひとつずつ、並べる。

 

 清めの香を、たく。

 

 ぱちぱち、と、小さな火花。

 

 煙が、立ち上る。

 

 異界の中なのに、煙は、まっすぐ。

 

——お母様の、勾玉。

 

 首から下げた勾玉を、両手で握った。

 

 胸の前で、目を、閉じる。

 

——お母様。

 

——どうか、お力を、お貸しくださいませ。

 

 勾玉が、体温で、温まる。

 

 胸の奥で、何か、ふわりと灯った。

 

——お母様の、加護。

 

——届いた。

 

 そして、六壬式盤を、回す。

 

 くるり、くるりと、方位を合わせる。

 

「北、玄武」

 

「ええ」

 

「東、青龍」

 

「ええ」

 

「南、朱雀」

 

「ええ」

 

 四方の神を呼ぶ。

 

「西、白虎」

 

「ええ」

 

「中央——黄龍、真琴」

 

「ええ」

 

 四方の、神を、ござの結界に、配する。

 

 そして、坂東先生も、瞑想に入る。

 

 桃木剣を膝に、目を閉じて。

 

——息を、整える。

 

——丹田に、気を、集める。

 

——余分な力を、抜く。

 

——必要な力を、ござに、満たす。

 

 時間が、ゆっくり、流れる。

 

 ぱちぱちと、清めの香が、燃える音。

 

 ジオンの煙草の、淡い煙。

 

 廃村の、止まった空気。

 

 胸の中で、勾玉が、脈打つ。

 

——お母様の鼓動?

 

——いえ、わたくしの鼓動?

 

——もう、どちらでも、いい。

 

——ひとつ、ですわ。

 

 そして、お父様の護符を、額に、当てた。

 

「父祖霊、お護りくださいませ」

 

 額が、ふわり、と、温かい。

 

——お父様の、温もり。

 

——届いている。

 

 そして、護符を、ござの四方に、足した。

 

 結界札が、二重になる。

 

——準備、整いましたわ。

 

 目を、開けた。

 

 頬の、火照り。

 

 指先の、震えが、止まっている。

 

 肩の、強張りが、解けている。

 

——わたくし、戦える。

 

——大切な人を、守れる。

 

 坂東先生も、目を、開けた。

 

「お嬢、お顔が、明るくなりましたな」

 

「ええ、先生も」

 

「儀式の、効きが、よろしいですな」

 

「父祖霊の、お力ですわ」

 

 ふたりは、頷き合った。

 

 ござの上で、ジオンを後ろに隠して。

 

「お嬢、こちら北側、お任せします」

 

「はい」

 

「私が南側を押さえます」

 

「ええ」

 

「東西は結界札で、しばらく持つはず」

 

「ええ」

 

 そして——

 

 廃村の奥から、

 

  カタカタカタカタ。

 

  カタカタカタカタ。

 

 複数の足音が、近づいてきた。

 

 走るような。

 

 跳ねるような。

 

 四足の生き物が、何かを引きずりながら走る音。

 

 そして、その音に混じって

 

  『ウォォォォン……』

 

  『ウォン、ウォン……』

 

  『……グルルルル……』

 

 唸り声。

 

 犬の。

 

 でも、犬じゃない唸り声。

 

  え。

 

  え?

 

「来ますわ!」

 

 声が、震える。

 

 そして、

 

 家々の、間から——

 

 それらが、姿を現した。

 

Part 4 ——無数の犬と、もうダメ

 

 それは、犬だった。

 

 いや、犬だったもの。

 

 濡れた毛、腐った腹、裂けた皮膚。口元には人間の白い歯。後ろ脚の間から、赤黒い人間の手が何本も、引きずられるように生えていた。

 

「……ッ!」

 

 喉が、凍った。

 

  犬神大明神の眷属、ですわね。

 

  いえ、もう、犬神大明神そのもの、かもしれない。

 

 それらが、ぐるり、と廃村を囲むように、社の結界の周りを回り始めた。

 

 三匹じゃない。六匹。いえ、もっといる。

 

「お嬢!! 来ます!!」

 

 坂東先生の叫び声。

 

 ござの結界札に向かって、犬が跳んだ。

 

 桃木剣を振り上げた。

 

「臨——!」

 

 縦に一閃。

 

 桃の木の刃が、犬の喉を斬った。ぱきっ、と硬い感触。霧散する。

 

——一匹。

 

 二匹目、三匹目。

 

「お嬢、後ろ!!」

 

「はい!」

 

 身を翻した。斬った。斬った。

 

 ぱきっ、ぱきっ、ぱきっ。

 

 霧散していく、犬たち。

 

 でも、四方から、増える。

 

「お嬢、東側!!」

 

「はい!!」

 

 走った。桃木剣を、振るった。

 

——五匹目。

 

——七匹目。

 

——十匹目。

 

 セーラー服の袖に、黒い飛沫。スカートの裾に、泥。足袋の白が、もう白ではない。

 

「お嬢、南側に三匹!!」

 

「先生は!?」

 

「私が、北側!!」

 

 ござを背に、ふたりで回りながら戦う。

 

 桃木剣。護符。九字の格子結界。お父様の結界札。

 

——全部、使って。

 

——耐えて。

 

 二十匹。三十匹。四十匹。

 

 数えるのを、やめた。

 

 廃村の四方から、湧いてくる。家屋の戸が、内側から破られる音。

 

『——ウォォォン……』

 

『——グルルル……』

 

『——カチ、カチ、カチ……』

 

 人間の歯が、鳴る音。引きずられる手の音。混じり合った、悍ましい音の洪水。

 

——どれだけ、斬っただろう。

 

 セーラー服が、汗で、肌にはりつく。息が上がる。桃木剣を握る指の節が、白くなっていた。

 

 そして——

 

 ぴしっ。

 

 桃木剣に、ひびが入った。

 

「あ——」

 

 見た。

 

——あの剣。

 

——お父様が、見習いの時に「これを使いなさい」と、笑顔で下さった、最初の桃木剣。

 

——練習で何度も振った。お父様の前で、「もう一度」「もう一度」と、何度も振った。

 

——書院の畳の、小さな擦り跡。

 

——道場の柱の、小さな傷。

 

——夏休みの早朝、坂東先生と素振りをした、汗の匂い。

 

——その全部が、染み込んだ、桃の木の刃。

 

——折れる。

 

「お嬢、避けて!!」

 

 坂東先生の叫び声。

 

 横から、犬。

 

「兵——!!」

 

 斬った。

 

 その瞬間——

 

 ぱきん。

 

 桃木剣が、折れた。

 

 刃の半分が、ぽろり、と落ちた。ござの上に。

 

「……」

 

 手の中には、短い柄。

 

 刃のない、ただの棒。

 

——お父様の、贈り物。

 

——わたくしの、思い出。

 

——折れて、しまった。

 

「お嬢!!」

 

 坂東先生が、駆け寄ろうとした。

 

 でも、南側から、五匹。

 

「先生!!」

 

「お嬢、護符を!!」

 

「はい!!」

 

 リュックから護符の束を取り出した。

 

 震える指で、数枚掴んで、投げた。

 

「縛——!!」

 

 護符が空中で光った。犬たちが、一瞬、ぴたっと止まった。

 

 でも——

 

 ぱしゃっ。

 

 護符が、破れた。紙吹雪のように、舞った。

 

——格上の、霊障。

 

——お父様の護符でないと、止められない。

 

——わたくしの霊力では、足りない。

 

「お嬢!! 結界札!!」

 

「はい!!」

 

 ござの四方の結界札に手を当てた。

 

「結界、強化——!!」

 

 千年の血が、流れる。家系の力を、絞り出す。

 

 結界札が、青白く光った。

 

 でも——

 

 ぱしっ、ぱしっ、ぱしっ、ぱしっ、

 

——お父様の結界札。四枚全部。弾け飛んだ。

 

「あ——」

 

 そして、ござの中央——

 

 清めの香が、ぱきっ、と折れた。

 

 六壬式盤が、ばきっ、と割れた。

 

——え。

 

——儀式の、霊具まで?

 

 立ち尽くした。

 

 ござの結界が、破られた。

 

「お嬢——!!」

 

 坂東先生が、桃木剣で南側を押さえている。

 

 でも、東、西、北。全部から犬。

 

「先生……」

 

「お嬢、こちらに——!!」

 

 走った。ござの中央へ。

 

 折れた桃木剣を、握ったまま。

 

 胸の、勾玉に、指を、添えた。

 

——お母様。

 

——お母様、最後、まで。

 

 そして——

 

 四方が、犬で埋まった。

 

『——ウォォォォン!!』

 

『——グルルルル!!』

 

 唸り声が、廃村に響く。

 

 ござの中央。わたくしと、坂東先生。背中合わせ。

 

「先生……」

 

「お嬢」

 

「もう……」

 

「お嬢」

 

「もう、ダメですわ」

 

 声が、震えた。

 

「ここで、死ぬのですわね」

 

「お嬢」

 

「先生、ごめんなさい——」

 

「お嬢、聞いてください」

 

 坂東先生の、低い、軍人の声。

 

「お嬢、大旦那様から、お預かりした、脱出札——」

 

「えっ——」

 

「ありましたね」

 

「あ——」

 

——お父様の、緊急脱出札。

 

——あ、ありますわ。

 

——「危険なら、迷わず破れ」って、お父様、おっしゃった。

 

——忘れていた。

 

——絶望、しすぎて。

 

「先生!! ありますわ!! お父様の脱出札!!」

 

「お嬢、お早く」

 

「はい!!」

 

 震える指で、リュックに、手を入れた。

 

 色の違う札を、探す。

 

 ある。

 

——和紙の感触。

 

——お父様の、祈りが、染み込んだ札。

 

 それを、取り出した。

 

「ありました!! 先生!!」

 

「お嬢、お破りください」

 

「えっ——」

 

「お早く!!」

 

「で、でも、先生は——!?」

 

 声が、止まった。

 

——札、一枚。

 

——脱出、一人分。

 

——先生は——

 

「先生!!」

 

「お嬢、お早く」

 

「で、でも——!!」

 

「お嬢、私に構わず、お破りください」

 

 坂東先生の声が、低い。

 

 軍人の、決死の、声。

 

「いや、いや、ですわ!!」

 

「お嬢」

 

「先生を、置いて——」

 

「お嬢、これは、命令、です」

 

 首を振る。

 

「いや!!」

 

「お嬢、大旦那様の、ご命令」

 

「お父様の——!?」

 

「ええ。万一の時は、お嬢を、お逃がしする」

 

 それは父の指示だった。

 

「で、でも——!!」

 

「私の、任務、です」

 

「先生!!」

 

 目に、涙が、滲んだ。

 

「いや、ですわ!! 先生を、置いて、行けません!!」

 

「お嬢」

 

「先生も、ご一緒に——!!」

 

「お嬢、札は、一枚、です」

 

「……」

 

 わかっている。

 

「お嬢、お一人分、です」

 

「……」

 

「お嬢、お早く」

 

「いや!!」

 

 首を、振った。

 

「いや、ですわ!! わたくし、先生を——」

 

「お嬢」

 

「ご一緒、しないと——!!」

 

「お嬢」

 

 坂東先生は、桃木剣を握り直し、わたくしをまっすぐに見た。

 

「お嬢、大旦那様、お母様の前で、お嬢をお守りすると、誓いました」

 

「先生……」

 

「これは、最後の、お務め、です」

 

「先生——!!」

 

 声が出ない。

 

「お嬢、お早く、お破りください」

 

「先生——!!」

 

 首を振りつづけた。

 

「お嬢」

 

「いや、ですわ!! 先生!!」

 

「お嬢、敵が、来ます」

 

『——ウォォォォン!!』

 

 唸り声が、また、迫った。

 

「お嬢、お早く!!」

 

 手が、震える。

 

——札を、破る。

 

——お父様の元へ、戻る。

 

——先生を、置いて。

 

——先生を、置いて——!!

 

「先生!!」

 

「お嬢、お早く!!」

 

——いえ。

 

——破る。

 

——破って、お父様に、知らせる。

 

——お父様に、坂東先生を、お助けに、戻ってもらう。

 

——それしか、ない。

 

「先生!! お父様に、お助け、頼みますわ!!」

 

「お嬢、お早く!!」

 

 両手で、

 

 札を、

 

 破ろうとした。

 

——破る!!

 

——破る!!

 

——破れば、お父様の元へ!!

 

——お父様に、戻ってきていただく!!

 

——先生を、お助けに——!!

 

 ぐっ、と指に力を入れる。

 

——破れない。

 

「えっ——」

 

 もう一度。

 

 ぐぐっ、両手で、引っ張る。

 

——破れない。

 

「な、なぜ?」

 

 声が、上ずる。

 

「破れ、ない——」

 

 もう一度。

 

 ぐっ、ぐっ、ぐっ。

 

——破れない。

 

「先生!! 破れません、わ!!」

 

「お嬢」

 

「破れません!! なぜ!!」

 

「お嬢、落ち着いて——」

 

「破る、だけなのに——破れません、わ!!」

 

 両手で、必死に、引っ張った。

 

 ぐっ、

 

 ぐっ、

 

 ぐっ、

 

 ぐっ。

 

——破れない。

 

——なぜ。

 

——なぜ、なぜ、なぜ。

 

——お父様の、札。

 

——「破れ」と、おっしゃった。

 

——なのに、

 

——破れない。

 

「先生!! どうして——!! お父様の札なのに——!!」

 

 指が、白くなる。

 

 爪が、和紙に、食い込む。

 

 でも、

 

——破れない。

 

「お嬢」

 

 坂東先生が、静かに、わたくしの肩に、手を置いた。

 

「お嬢、お貸しください」

 

「先生、これ、お父様の——」

 

「お嬢」

 

「破る、だけ、なのに——」

 

「お嬢、お貸しください」

 

 坂東先生の声が、低い。

 

 しかし、穏やか。

 

 軍人の、声。

 

 震える手で、

 

 札を、

 

 差し出した。

 

 坂東先生は、桃木剣を脇に置いて、両手で札を受け取った。

 

 そして、力を込めて、引っ張った。

 

——破れない。

 

 ぐっ、

 

 ぐっ、

 

 ぐっ。

 

——破れない。

 

 紙の感触。

 

 ふつうの、和紙。

 

 なのに、

 

 岩のように、

 

 固い。

 

「……」

 

 坂東先生は、札を、じっと、見た。

 

 そして、目を閉じて、深く、息を吐いた。

 

「……封じられて、おります」

 

「えっ——」

 

「お嬢、この札は発動できません」

 

「な、なぜ?」

 

「お嬢、落ち着いて、お聞きください」

 

 坂東先生は、わたくしを、まっすぐに、見た。

 

「脱出札は、結界の外へ転移させる術です」

 

「ええ」

 

「ですが——」

 

「ええ」

 

「ここが、すでに結界の中なのです」

 

「……え?」

 

 頭がついていかない。

 

「廃村全体が、犬神大明神の結界、です」

 

「……」

 

「結界の中から、結界の外へ、転移しようとしても——」

 

「……」

 

 言葉が出ない。

 

「結界が、それを、許さない」

 

「……」

 

「お父様の札、お父様の術が乗った脱出札、であっても——」

 

「……」

 

 ただ聞いていた。

 

「ここでは、通用、しないのです」

 

「……」

 

 わたくしの、頭の中が、

 

 ぐらり、と、

 

 揺れた。

 

——え。

 

——え?

 

——え?

 

——お父様の、札。

 

——お父様、ですら——

 

——お父様、ですら、ここから、出せない?

 

「先生、それは——」

 

「お嬢」

 

「お父様、ですら——」

 

「お嬢、廃村に入った時から、ここは——」

 

「……」

 

 息ができない。

 

「もう、お父様の手の届かぬ場所、なのです」

 

「……」

 

 坂東先生は、札を、わたくしに、返した。

 

 それを、ぎゅっと、握った。

 

——お父様の、祈り。

 

——でも、届かない。

 

——お父様の力でも、ここから、出られない。

 

 ただ、

 

 破れない札を、

 

 握りしめた。

 

 紫色の、

 

 和紙。

 

 お父様の、

 

 祈り。

 

 それが、

 

 無力だと、

 

 知った、

 

 瞬間。

 

「お父様、ごめんなさい」

 

「お嬢」

 

「坂東先生、ごめんなさい」

 

「お嬢」

 

「わたくし、未熟で、ごめんなさい」

 

 坂東先生は、ただ、桃木剣を握り直した。

 

 そして、わたくしの前に立った。

 

「お嬢」

 

「先生……」

 

「私が、最後まで、お守りします」

 

「先生……」

 

「私の、任務、ですから」

 

 折れた桃木剣を胸に抱いた。

 

 そして、目を閉じた。

 

——お父様。

 

——坂東先生を、巻き込んでしまって。

 

——ごめんなさい。

 

——わたくしが、未熟だから。

 

——ごめんなさい。

 

『——ウォォォォン!!』

 

 唸り声が、ござの目の前まで迫った。

 

 ぎゅっと目を、つぶった。

 

——来る。

 

——終わる。

 

——でも——

 

——でも、ここで死ぬのは——いや。

 

——もっと、強くなりたかった。

 

——お父様を、超えたかった。

 

——坂東先生を守れるくらい、強くなりたかった。

 

——なのに——わたくしは——

 

 そう、思った瞬間——

 

 ぴたっ。

 

 唸り声が、止まった。

 

「……?」

 

 目を開けた。

 

 廃村の、四方の、犬たち。

 

 ぴたっ、と止まっていた。

 

 ござの目の前で歯を剥いていた犬。それも、ぴたっ、と止まっていた。

 

「……え?」

 

 困惑した。

 

 そして——

 

『——ウォォォン……』

 

『——グルル……』

 

 唸り声が、小さくなる。

 

 そして、犬たちがゆっくり、ゆっくり、廃村の奥へ戻っていった。

 

 一匹、また一匹。家屋の影に消えていく。

 

 最後の一匹が、闇に溶けて——

 

 終わった。

 

 廃村に、静寂が戻った。

 

「……」

 

「……」

 

 わたくしと、坂東先生。ただ、立ち尽くしていた。

 

「……先生」

 

「お嬢」

 

「……何が、ありましたの?」

 

「……わかりません」

 

「なぜ、引いたんですの?」

 

「……わかりません」

 

 坂東先生は、桃木剣をゆっくり下ろした。

 

 そして、四方を警戒しながら、

 

「……お嬢、ご無事、ですか」

 

「……ええ、なんとか」

 

「……お怪我は」

 

「……ないですわ」

 

 折れた桃木剣を見た。

 

 お父様から頂いた、最初の一振り。半分から、折れていた。

 

——わたくしの力では、届かなかった。

 

——格上の霊障。

 

——桃木剣も、護符も、結界札も、全部、通用しなかった。

 

——なのに、なぜ、犬たちは引いたの?

 

 折れた桃木剣を胸に抱いて、立ち尽くした。

 

——わからない。

 

——なぜ、生きてるんですの?

 

——なぜ、犬たちは引いたの?

 

 そう思いながら、廃村を見渡した。

 

 その時——

 

「あれー」

 

 ぼそ、と声がした。

 

 はっと振り返った。

 

 廃村の社の横から、ジオンがぼんやり歩いてきた。

 

 アロハシャツ。サンダル。煙草を咥えて。

 

「あれ、なんか、終わってます?」

 

 と、のんびりつぶやいた。

 

「……」

 

 呆然とジオンを見た。

 

 ジオンは、廃村の四方をぼんやり見渡して、

 

「あれ、なんか、すごい戦闘っぽい跡、ですね」

 

 と、つぶやいた。

 

 そして、折れた桃木剣を見て、

 

「あれ、剣、折れちゃってます?」

 

 と、首を傾げた。

 

「……ジオン様」

 

「はい?」

 

「……どちらに、いらっしゃったの?」

 

「いやー、ぼくちょっと足を伸ばしていたら、すごい唸り声が聞こえて、怖くて物陰に隠れてました」

 

「……」

 

 言葉が見つからなかった。

 

「あれ、無事ですか?」

 

「……ええ」

 

「よかったです」

 

 ジオンは、ぼんやりとござの上に座り直した。

 

 そして、煙草を吹かして、

 

「いやー、ぼく、廃村って怖いですね」

 

 と、つぶやいた。

 

「……」

 

 ジオンをただ見ていた。

 

  ジオン様。

 

  本当に、隠れていらっしゃった?

 

  本当に、一般人?

 

  でも、犬は、なぜ引いたの?

 

  偶然? たまたま? それとも——

 

  いえ、わからない。

 

  わからない、けれど。

 

 折れた桃木剣を胸に抱いた。

 

  わたくしは、生きている。

 

  坂東先生も、生きている。

 

  それだけは、確か。

 

 そして、廃村の空を見上げた。

 

 夏の、午後の、光。

 

 ジオンの煙が、まっすぐ、空へ立ち上っていた。

 

 その煙だけが——異界の中で、不思議なほど、まっすぐ伸びていた。

 

  ……いえ。

 

  もしかして、あの方。

 

  心霊番組のロケの視察か何か、そういうお仕事の方?

 

  ひとりで廃村を見て回って。

 

  いえ、まさか。

 

  でも、それくらいしか思いつきませんわ。

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。



次のお話で、またお会いできましたら幸いです。


Nolaノベル

黒田おっさんのなりあがり物語【20話完結済】


最新話はなろうカクヨムで灰はふぁんたじー小説掲載中

https://kakuyomu.jp/works/2912051599581287637


感想・ブックマークなど、いただけましたら、励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ