第五章 第二節 茶室から伝わる「いにしえ」の気持ち
母:2007年に発刊された『pen』190号には、モダンな茶室として「織部の茶室」「受庵・想庵・行庵」「空庵」が紹介されています。
息子:それぞれどんな茶室なの。まず「織部の茶室」から。
母:隈研吾作「織部の茶室」は、厚さ5mmの白いプラスティック段ボールでできた、角のない繭のような茶室です。床に光源があり、茶室全体が光を放つ様子は幻想的です。
織部の名は「大量生産品に美を与えた人物」という所から「安価な素材で、仮設性を兼ね備えた移動式の茶室」というコンセプトで作られた茶室だそうです。
息子:次は「受庵・想庵・行庵」。
母:内田繁作「受庵」「想庵」「行庵」は、壁は竹で編まれ、枠が杉できている移動可能な3つの茶室で、編み方が違います。「受庵」は正方形のマス目、「想庵」は長方形のマス目、「行庵」はランダムな方向で編まれています。
それぞれ、1995年「方法の記憶」展と題してミラノの「スパツィオ・クリツィア」で発表されています。
息子:「空庵」は?
母:和空(WA-Qu)の辻村久信作「空庵」は、壁をファブリックスクリーン、石や畳縁をエレクトロルミネッセンスといった新素材を用いています。和紙、布、木といった従来からの素材が見事に調和した茶室になっています。
また、映画「将軍」のラストシーンに出てくる「草月流の竹のトンネル」も、モダンですね。
息子:茶室には四畳半が多いけど、何か意味はあるの?
母:武野紹鷗は「三畳半」や「二畳半」の茶室を考案し「侘敷」と称し「四畳半」以上の茶室を「淋敷」として区別しました。
武野紹鷗著『紹鴎門弟への法度』に「淋敷は可然候、此道に叶へり、きれいにせんとすれば結構に弱く、侘敷せんとすればきたなくなり、二つともさばすあたれり、可慎事」とあり、
「淋敷というのは、ちょうど茶道にかないます。これより広くしようとすると、茶室としては閑散とし、狭くすれば逆にごちゃごちゃとなります。これが寂びさせる所以です。」という意味です。
『茶湯古事談』に「珠光の坐敷なとは六畳敷なりしとそ、乃至、武野紹鴫か四畳半の座敷を作り、はしめて炉を中に切しより以米、四畳半構へと云事有、又其後、千利休三畳大目構の座敷を作り云々」とあります。
特に武野紹鷗が作った四畳半の茶室は「紹鷗四畳半」と言います。
息子:そもそも「茶室」ってなんなの?
母:茶の湯の為に作られた空間です。
室町時代の村田珠光に始まり、鳥居引拙、武野紹鷗、千利休、利休七哲、現在のデザイン茶室。時代と共に茶室は変化していきます。
一貫しているのは「一期一会」「おもてなしの心」を提案する空間ということです。
室町時代の人々と現代の人々が、亭主と客で互いをもてなし合う茶道。和歌が平安の世からの変わらぬ気持ちを伝えるように、室町時代の気持ちが伝わってきませんか?




