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太陽なき世界のアストロ  作者: 夕凪


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11/13

アストロとポラリスの出会い

 そして、全員の入浴が終わった。これから就寝時間となる。この時間だけは、なるべく音を出してはいけない決まりになっている。


 この世界で最も危険と言える時間が、この就寝時間だ。寝ている間に襲撃される事件は後を絶たない。このように普段よりも治安が悪い時期はより一層だ。


 アストロが部屋でくつろいでいると、ポラリスが扉をノックした。


「アストロ、リビングに来てくれ。」

「あぁ、すぐ行く。」


 今日の当番はポラリスとアストロだ。夜間襲撃に備えて、当番制で警備担当を決めている。警備といっても外へ行くわけではない。入り口に近いリビングで待機するだけだ。警備は必ず二人以上となっているため、大体は雑談や食事で終わってしまう。


「待たせた。」


 アストロがリビングに現れ、席に着く。ポラリスは冷蔵庫からドリンクを二本取り出し、アストロに一本渡した。


「眠くなるだろう。飲んでおいてくれ。」

「あぁ、すまない。」


 アストロはドリンクを開け、一口飲んだ。ポラリスはドリンクを机に置き、アストロの向かいの席に着く。


「アストロ、お前はこの世界をどう思う?」

「…ポラリス、お前は毎回同じようなことを俺に相談しているな。」


 ポラリスがこの話題をアストロに持ち出すのはこれで五度目だった。ポラリスはNight Watchのリーダーとして全員を率いる立場にいる。しかし、ポラリスは常に悩んでいる。この世界での生き方がわからないからだ。だが、それは誰もが皆同じことだった。


「前にも言っただろう。俺はこの世界を()()()()()()()だと思っている。」


 殺し、殺され、金品は奪われ、死体は放置される。人情も、温かみもない。アストロの言う「酷く冷めた世界」というのは何一つ間違っていない。アストロは、再びドリンクを飲んだ。


「…そうか。俺もそう思う。」

「…リーダーがこれでは困るな。もっと頼りがいのある姿を見せてもらいたい。」

「はは、こんな姿を見せられるのはお前とオリオンくらいだよ。他の奴らに見られたら怒られるからな。」


 ポラリスは軽く笑って答えた。普段はチームのリーダーとして努力する姿を見せているが、実際は弱い男であると、アストロは知っている。


「…こうしてお前と話すと思い出すよ。お前と出会った時のことを。」

「…あぁ。」


 ◇◇◇


 ポラリスとアストロが出会ったのは、今から七年前のことだった。


 当時はNight Watchはまだ結成されていなかった。アストロはトウヨウから離れた貧民街で暮らしていた。その生活は、今よりも酷かった。


「…食べ…物」


 食料が手に入らない。着るものは薄手でボロボロ。毎日のように餓死、凍死、病死。衣食住の生活が成り立たない。


 この時は、まだバトルスーツが出回っていなかった。人々の希望は防寒着のみだった。しかし、貧民街に住む人々はそれを買う金すらなかった。食料を買う金がないことを考えれば当然だった。誰もが防寒着を奪い合う。


 ある日、この異常化した日常の中で変化が起きた。火事だ。赤く燃える炎は、全てを飲み込んだ。健康状態の悪い人々は逃げられず、倒壊する建物に押しつぶされた。当然だが、助けは来ない。


 アストロはこの時に、逃げ遅れて燃える建物の中に取り残された。叫ぶことはできなかった。そんな気力は残っていない。自分の上にある棚に火が移る。もう時間は残されていない。声を出そうにも、建物が崩れていく音にかき消される。


「あ…あぁ…」


 意識が遠のいていく。アストロを炎が囲む。アストロは直感する。ここで死ぬのだと。それが、自分の運命であり、人生のゴールだと。


「…いや、だ…!」


 アストロは運命を否定した。定められたゴールを蹴り飛ばし、自分で新たなゴールを創造した。燃え盛る炎の中、最後の力を振り絞って棚をどかした。そして、そのまま建物を飛び出した。


「まだ…終わりたくない……」


 アストロは森の中へ逃げ込んだ。そして、力なく倒れた。極度の疲労と火傷、栄養失調が原因だった。


 アストロの意識は、今度こそ遠のいていった。新たに想像したゴールが、再び近づいてくる。終わりがすぐそこまで来ている。その時だった。


「…!?人か!!」


 森の奥から、男の声がする。アストロは、その声を聴いて気を失った。


 それから間もなく、男がアストロの前に現れた。この男こそが、ポラリスだった。


「酷いやけどだ…それに、痩せている。あれは…貧民街?」


 ポラリスはアストロを近くの木の傍に置き、赤く燃える貧民街を見た。ポラリスはアストロを見つめた。今から助けに行けば、アストロが死ぬ。目の前の青年が死ぬことを、ポラリスは納得できなかった。


「…仕方ない。」


 ポラリスはアストロを背負い、再び森の奥へ歩いていく。この出会いが、後にNight Watch創立に深くかかわるとは、誰も知らなかった。


 ◇◇◇


「…あの時は驚いたよ。森の中で倒れている人が、大やけどを負っていたからな。視線を別のところにやれば燃える街。何が何だかわからなかった。」

「…あの時から俺たちは始まった。それからどんどん仲間が増えて…Night Watchが創立された。」


 その時、アジトの扉の方から物音がした。とても小さな音だったが、アストロとポラリスは聞き逃さなかった。


「…鼠、ではないよな。」

「俺が見てこよう。ポラリス、警戒しておいてくれ。」

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