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太陽なき世界のアストロ  作者: 夕凪


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12/13

トウヨウ灯籠区

 アストロは扉の前に来た。外からは何やら物音がする。アストロは物音が消えたことを確認し、扉を開けた。扉の前には一枚の紙が、小石の下に置かれていた。


 アストロが紙を拾い上げる。同時に、バイクが勢いよく走り去る音が聞こえた。おそらく、この紙を置いた人物だろう。


「…逃げられたか。」


 アストロは紙を見つめる。紙は小さく折りたたまれている。中には文字が書かれている。


「手紙か。」


 アストロは手紙の内容を確認した。そして、小さくため息をつき、アジトの中へ戻っていった。


 部屋に戻ると、ポラリスが銃を構えていた。アストロを侵入者だと勘違いしていたのか、安堵の表情を浮かべて銃口を下した。


「なんだ、アストロか。大丈夫だったか?」

「あぁ。大丈夫だ。それよりも、これを見てくれ。」


 アストロは机の上に手紙を置いた。ポラリスは手紙を手に取った。


「…なるほど。そういうことか。」


 手紙には、こう書かれていた。


『Night Watchへ。

 貴様らの行動は把握している。


 旧ルミナイト採掘場について、話し合いの場を設ける。

 拒否は認めない。


 場所は我々、夜刀衆のアジトだ。』


 ポラリスとアストロは直感した。この話し合いというのは罠だと。


「場所を夜刀衆のアジトと指定してくるあたり、罠だろうな。」

「おそらくな。日時の指定はなく、拒否は認めない、か。どうする、ポラリス。」

「…行かなければならないのは確実だろう。だが、対策は万全にしていこう。」


 二人はそう言って、再び席に着いた。そのまま時間が過ぎるまで、この一件について話し合った。


 やがて、メンバーの全員が起きてきた。ポラリスは昨夜起きたことを報告し、手紙を見せた。


「夜刀衆か。また厄介なことになったね。」


 アルタイルはほとほと疲れたように、手紙を回し、ソファーへ寝転がった。手紙が全員へと順番に渡されていく。誰もが驚く様子はなく、ため息をつくだけだった。


「はぁ、またなのね。」


 カペラも呆れた顔で手紙を読む。Night Watchはこれまで、多くのチームと衝突してきた。その多くが資源や土地の奪い合いだ。今回のような手紙が届くのも、珍しいことではない。


「ということで、俺とアストロ、それからオリオンが夜刀衆へ行く。内容を見る限り、今日中の方がいいだろう。」

「え?ちょっと待って?ポラリスも行くの?ここに残った方が良くない?」


 オリオンが驚いて、飲んでいたドリンクを吹きこぼしそうになった。


「確かに、オリオンが言うことは当然だろう。しかし、俺はNight Watchのリーダーだ。リーダーが交渉に行かなければ、後々舐められるだろう。それは、夜刀衆に限った話ではない。」


 ポラリスの言うことも間違ってはいなかった。しかし、指令役が現地へ行くことは何かと不都合がある。


「ということで、レイヴン。臨時の指令役を任せる。お前のドローンや情報技術があればなんとかなるだろう。」

「…了解した。」


 こうして、ポラリス、アストロ、オリオンが夜刀衆のアジトへ行くことになり、レイヴンが臨時の指令役。残りのメンバーは待機となった。作戦会議はこれで終了し、三人はバイクで夜刀衆のアジトへ向かった。


 ◇◇◇


 三人は、夜刀衆のアジトへ到着した。夜刀衆はトウヨウの中心に近いところにアジトを構えている。規模は中規模で、構成員の多くが剣術を身に着けている。人数が多く、戦力もある。そのため、近隣の店に用心棒として雇われている。


 夜刀衆のアジトはNight Watchのように地下にはない。トウヨウ灯籠区(とうろうく)の地上に存在する。アジトの入り口は神社の境内のようになっている。大きな鳥居があり、桜のホログラムが舞っている。そして、提灯がとても多く吊るされている。


 トウヨウ灯籠区は数少ない和風の街だ。わずかに残った、この国の文化の一つである。この治安の悪い世の中でも観光地として有名だ。遠くから訪れた人々が酒を飲み、桜のホログラムを見て花見を楽しむ。観光客ではあるのだが、海外からではない。国内の観光客だ。


 ポラリスはアジトの鳥居をくぐる。鳥居の前には写真を撮る人が数名いた。アジトの入り口に立つ二人の見張りが、腰のレーザー刀に手を添える。この時、アストロとオリオンはバトルスーツを着ていた。見張りが警戒するのは当然だった。


「…何者だ。」

「我々はNight Watchだ。旧ルミナイト採掘場についての話し合いに来た。手紙はここにある。」


 ポラリスは見張りに手紙を渡した。一人が受け取り、中身を確認した。


「…承知した。よくぞ来られた。歓迎しよう。」


 見張りは手紙をポラリスへと返し、門を開けた。門は木材でできていて、人力で開ける仕組みだった。門がゆっくりと開き、夜刀衆のアジトが露になった。


「この先に我らが長がおられる。真っ直ぐ進んだあの塔だ。」


 見張りは奥にそびえたつ大きな塔を指さした。ポラリスは軽く頭を下げ、門をくぐった。ここから先が、夜刀衆のテリトリーだ。


「…気を引き締めろ。」


 ポラリスは小さく呟いた。アストロとオリオンも小さく頷き、ポラリスの近くを歩く。ポラリスは軽装備を着けてはいる。しかし、レーザーを防げるほどではない。

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