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Ragnarok of braves ~こちらメリヴェール王立探偵事務所 another story~  作者: 恵良陸引


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残る疑問【scene3】

3


 「危なかったな。ケガはしていないよな?」

 ルッチは手を伸ばすと、レトを引っ張って立ち上がらせた。

 「ありがとうございます。皆さんのおかげでケガをせずに済みました」

 レトは礼を言いながら立ち上がり、尻のあたりをぱんぱんと払った。湿った草が手のひらに絡みついた。

 「あいつをどう思う?」

 ウィルはゴブリンを仕留めたハイデラを見上げて尋ねた。

 「あの子ですか? 論外ですね。まるで戦い方の知らない素人ですわ」

 ウィルはうなずいた。

 「そうさ。今日が初陣だそうだ。ただ、さっきゴブリンに襲いかかられたとき、とっさに左手を伸ばして構えていた。左腕と引き換えに仕留めるつもりの動きだった」

 「あの子に戦士の覚悟がある、とおっしゃるのですか? まさか」

 「買いかぶりかね」

 ウィルは視線をレトたちに戻した。

 「隊長、報告いたします」

 振り返ると、カイルがウィルのそばへ駆け寄っていた。

 「村の小屋は探索を終了しました。ベッドの下に潜りこんでいるものも、全部見つけ出して討ち取りました。討ち取ったのは32匹です」

 「33匹だ」

 ウィルが訂正した。「あと1匹は君の仲間が仕留めた」ウィルは畑のそばで倒れているゴブリンを指さした。カイルはそれを見ると、ハイデラを見上げた。

 「さすがだな。1発で仕留めたか」

 ハイデラは肩をすくめた。私ひとりの成果ではない、と言いたいのだろう。だが、カイルはハイデラのしぐさの意味がわからなかった。

 「隊長からは敵はゴブリンとオークの混成だと聞いていましたが、この村にはゴブリンだけしかいませんでした」

 「オークはいなかったか。アングリアを襲ったときは組んでいたが、周辺地域の侵攻には種族ごとに分かれたようだな」

 ウィルはカイルの報告にうなずいた。あまり予想外には思っていないようだ。

 「ところで、村人は見つかったかい?」

 ウィルはカイルに尋ねた。

 「いいえ、ひとりも。小屋の中は荒らされていて、血の跡がついている個所も見受けられました。全員ではないにしても、何人かは殺されていますね」

 「そうだな。僕もそう思った」

 「何か、気になることでも?」

 ウィルはうなずいた。

 「村の規模から見て、住民は30名前後だろう。襲撃を受けた村人は何人か殺されているかもしれないが、大部分は捕まったように見える。では、捕まった住民はどこにいる? 彼らを閉じ込めている小屋はあったのかい?」

 カイルは首を横に振った。

 「いや、そういうものはなかった。村の貯蔵庫も検めているが、ゴブリン以外は見つからなかった」

 「……すると、やつらは住民をどこかへ連れ去ったということになる。そう思わないか?」

 カイルは困惑したような表情を浮かべた。

 「状況から見ると、そう考えられそうだが……。しかし、何のために? そんなことをする必要があるか?」

 「彼らの食糧にするためとか?」

 カイルは首を振った。

 「悪い冗談はやめてくれ。ゴブリンどもはひとを喰わん。捕虜として、どこかに集めたと考えるのが妥当だと思うのだが」

 「捕虜……か……」

 ウィルはあごに手をかけて考え込んだ。が、すぐに顔を上げるとカイルに顔を向けた。

 「わからないことを今考え込んでも仕方がない。作戦を続行させよう。全員を集めて負傷者の確認。装備を整え直して、次の目的地へ向かう」

 ウィルは手短に指示を下すと、村を見渡した。

 村は隊員たちの声に満ち、ひとが住むところらしさを取り戻していた。しかし、本来住んでいた人間はどこにもいなかったのである。

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