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チートだらけの異世界で、俺だけ少年漫画の主人公です  作者: 小鳥遊 千夜
第一章 冒険は始まった!転生した世界で憧れの勇者を目指して。

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第9話 勝利が繋ぐ、次の一歩

 

 夕焼けの光が、再び森を照らす。


 風が吹き、土煙がゆっくりと晴れていく。

 焦げた匂いと焼けた土の温もりが、まだ空気に残っていた。


 さっきまでの喧騒が、嘘のように森に静寂が戻る。


 セリアはその場に立ち尽くしていた。

 杖を握ったまま、目を見開く。


「……すごい……」


 ぽつりと漏れる言葉。


 視線が、王土へと向かう。


 王土(おうど)は剣を肩に担ぐ。

 刃に残っていた炎の名残が、すっと消えていく。


「こんなもんだろ」


 軽い調子。

 まるで大したことではないかのように。


 だがその背中には、確かな“強さ”があった。

 

 王土は少しだけ振り返る。


「それより――」


 くい、と親指でセリアを指す。


「回復、ありがとうな。」


 にっと笑う。


「あれなかったら、ちょいキツかったぜ」


 セリアは一瞬、きょとんとする。


「え……」


 それから、じわりと頬が緩む。


「い、いえ……私は、当然のことを……」


 視線を少し逸らす。

 だが、その声はどこか嬉しそうだった。


「でも……ちゃんと届いて、よかったです」


 胸元で杖を抱くように持ち直す。


「王土さんの動き、すごく速くて……少しでも遅れたらって思って」


「セリアが声出してくれたおかげで、全部読みやすかったし。」


 肩をすくめる。


「一人じゃ、あそこまで上手くはいかなかった。

 お前が仲間になってくれて本当に良かったぜ。」


 その言葉に、セリアの瞳がわずかに揺れる。


「……仲間。」


 小さく繰り返す。


 その響きを確かめるように。


 一拍。


 そして、少しだけ勇気を出して顔を上げる。


「あの……そういえば、さっきの技……」


 王土を見る。


「最後の炎の……龍みたいな……あれは……」


 王土の表情が、ぱっと明るくなる。


「お、気になる?」


 ぐっと剣を持ち直す。


「≪烈魂龍斬(ドラゴン・ブレイド)≫って言うんだ。」


 少しだけ誇らしげに胸を張る。


「これな、

 俺がガキの頃からめちゃくちゃ好きだった漫画の主人公の必殺技なんだよ」


 剣を軽く振る。



「どんな絶望的な状況でもさ、その主人公、絶対に諦めねぇんだ…」


 目が、遠くを見る。


「ボロボロになっても立ち上がって、最後はこうやって――」


 再現するように、ゆっくりと構える。


「ドンッ、ってな」


 嬉しそうに笑う。


「見ててめちゃくちゃ燃えたんだよな。」


 少しだけ照れくさそうに頭をかく。


「だからさ、…その、真似してんの」


 あっけらかんと。


「名前も、そのまま使ってるんだ。」


 セリアはその話を、じっと聞いていた。


 夕焼けの光が、彼女の横顔を染める。


「……いいですね」


 静かに、呟く。


()()()()()()()……」


 その言葉の奥に、何かが揺れる。


 王土が、微笑む。


「だよな!」


 軽く言う。


「へへっ見てろよ!

 俺もその主人公みたいにカッコ良く世界を救ってやるからな!」


 セリアは、ふっと微笑んだ。


「……はい。ずっと見てます。」


 その笑みは、どこか優しかった。


 夕焼けの中、二人の影が、また並んで伸びていた。


 今度は――


 少しだけ、近く。


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