怖さの種類
思春期の娘と両親の話しを書きました。青春の時間を過ごしているご家庭感がでていればいいなぁと書いていたらホラーを忘れていました。最初にブッコんだホラー感で勘弁してください。
怖さの種類
怖い怖くない怖い怖くない怖い怖くない。
「って、ホラー映像の次の動画がお祓いって感動ものって何これ。ふり幅が半端ない動画のラインナップ!」
こちらの部屋のドアを開けて、母親が「うるさい。何時だと思ってるの。みなもう寝ているのよ」と言って階段を下りて行った。水でも飲みに行くらしい。
部屋の時計を見ると深夜零時ちょうどをしめすところだった。
「寝るか」
携帯電話に充電用のコードを接続し、充電を開始させる。
明日の学校にもっていくものを確認して、ベッドに入って寝る。部屋の照明を消し忘れたので、枕元に置いてある照明用のリモコンを使って、照明の灯りを落とす。
横になった。仰向けだ。空調も、
「あ。タイマーかけておくか」
空調のタイマー切りをかけておく。
「一時間くらいでいいか」
一時間後に空調の電源がオフになるように設定を済ませた。
そうしてからまた仰向けで横になる。
自分の息をはく音がやけに聞こえる。さっきまで聞こえなかったのに。
段々その音や空調の稼働音が気になってきた。
身体も幾分か熱を帯びたようになってくる。
イラっとした。
起き上がる。声にならない叫び声を上げる。しっかりポーズはかかさずに。
「トイレ行こう」
クールダウンになるだろうと、トイレに向かう。階下に降りる。
階段を下りている途中で、トイレの扉が開いた。中から母親が出てきた。
「どうしたの?」
「なんだか音が気になってたらイラついてきて」
「なにそれ。エネルギー有り余ってるんじゃない?」
「いや、男子小学生か猫か」
「ははははは、上手い例えね」
「上手いわけじゃないよ」
「そう? トイレ行っている間に飲み物用意するから終ったらキッチン来なさい」
「やった。何?」
「そりゃ、ミルク系じゃないの?」
「何それ?」
「良いから入っていらっしゃい」
「はーい」
トイレに入り、用を足す。思いのほか多く出た。体にたまっていて気づかないで寝てしまおうとしていて身体から「おい、こら」と注意を受けたのだろうか。
トイレを出てキッチンへ向かうと、母親が暗がりのまま飲み物を用意しているようだった。
「あ、あんたの分こっち」
「ん」
グラスを持った時に冷たかった。飲み物はクール系らしい。お互いにコップを持ち上げて乾杯をした。飲んでみる。ただのミルクコーヒーだった。ミルクが多めで甘さが少なくビター感も少しある。
「苦いんだけど」
「そうは言ってもあんまり寝る前に甘いもの飲んでもね」
「わかるけど」
「口ゆすがなきゃね」
「結局そうなるの?」
「ふふふ」
「さっき見てた動画ホラー系とお祓い系が交互に出てきて、見ちゃったよ。びっくりした」
「部屋の灯りを付けないでひとりで深夜に見ているあんたの神経には母さん、ビックリを通り越して尊敬の念すら感じるわ。なんて言うのかしら、畏怖」
「そこまで」
「近づかないで」
「そっちの意味で!?」
「だって、怖いんだもの」
「わかった。もう、この話はおしまい」
「そうしてちょうだい」
「まったく」
「こっちのセリフよ」
飲み物を飲んでいる間に、背中が痒かったことを思い出して、背中を掻いてもらった。正確には撫でるようにして優しい刺激を与えて分からないようにしたのだ。
「ありがとう」
「どういたしまして」
二人して口をゆすいだ後に、それぞれのベッドに戻っていって寝に就く。
夢の中だということが分かっている夢の中。
いつもの私の部屋があった。その部屋で寝ている私はベッドの上でうつ伏せになっていた。その横に立つ白い影。よく見ると、母方の曾祖父だった。母の実家にお邪魔した時に、飾ってあった胸から上の顔写真が飾ってあって見ていたのでその顔が誰なのか分かったのだ。
「おじいちゃん」と声を掛けてみる。
するとおじいちゃんはこちらを見た。名前を呼んでいる。母の名前と母の母親である祖母の名前だ。
「母さんなら奥の寝室だよ」
と伝えると、スーッと白い影が消えていった。少し部屋の空気が動いた気がした。空調の風とは違う動きだった。
その後に、私は身体に戻ったのか、がばっ、と起きた。
部屋の様子はいつもの自分の部屋。時計を見ると五時前五分なので、四時五十五分。窓の外を見る。薄ぐらい、しかも青白い。朝の証拠だ。
上半身を起こすと、身体がだるくて疲れがたまっている状態だった。汗もかいたのか、衣服が濡れている。こんなに濡れるものかなぁと思いながらも、上に来ているTシャツを着替えた。また違うTシャツにだ。
階下に降りてトイレに行く。寝る前に母親の用意した飲み物を飲み切ってから寝たからか、量が多く出た。
幾分膀胱のすっきり感もある。
「ふぅ」
自然と声が出た。すこし恥ずかしさを感じながらもトイレを出て、手お洗う。洗面台で顔を洗おうとした時に、何か後ろで白いものが通り過ぎたと思ったが、昨夜のこともある。見てみないふりをした。
顔を洗ったあとは、飲み物を用意し、朝食を珍しく私が全員分用意しようと、身体はだるかったが、妙な張り切る感じも出てきて、作り始めた。
玉子焼きは二種類。野菜入りと胡麻と昆布入りを。サニーレタスが残っていたので、それと大葉を敷いて玉子焼きをカットしたものを盛り付ける。
次に野菜たっぷりの飲み物をとスープを作る。出汁は顆粒出汁だ。具に火が通った後に、顆粒出しを入れてかき混ぜてから、数分煮て、火を止めておいた。
ごはんをセットするのを忘れていた。
ごはんをおにぎりやお弁当分を計算した量を仕込み炊き始める。浸水時間を設けなかったた代わりに、少し水の量を増やした。
焼いた鮭を解してゴマ塩と共に混ぜ込む。それをおにぎりにする。朝ご飯の分だ。残りを弁当の分へと当てる。
いつの間にか朝もあけてきて、父と母親がやってきていた。
「いいにおいね」
「おはよう。今日は私が作ったよ」
「お、楽しみだなぁ」
と父親。
「そうね」
母親。
「ご飯の用意はできたけど、後は弁当に詰めるのが残ってるから」
「それじゃ、あんたは着替えてらっしゃい。後はやっておくから」
選手交代のようにして、キッチンを出て、部屋へと戻る。
パジャマ姿だったけれど制服に着替える。
そういえば、あの白い影は母親のもとへ行ったのだろうか。すっかり忘れていた。
―ガタっ
と音が鳴ってびっくりした。
見ると、鞄が横に倒れていた。珍しい倒れることがあるなんて。
クローゼットの内扉にある鏡を見て、最後整える。
「ん、O.K」
そう言ってから、倒れた鞄を持ち上げた。必要な他のカバンも持つ。
机に置いてある充電中の携帯電話を取り、鞄にしまう。
窓と空調と照明を確認してから部屋を出て階段を下りる。その頃には、両親は先に朝ご飯を食べていた。
「やっと降りてきた」
「美味しいぞ。父さんはどっちの卵焼きも好きだな」
「だよね。食べるの好きだもんね」
「なんだ。機嫌悪いのか?」
「違う」
母親の顔を見る。いつもと変わらない感じがする。父親がごちそうさまをして席を立った。自分の食べた時の食器を流しに移して、部屋へ戻っていった。
身支度を整えて鞄を持って降りてくるはずだ。その後に、洗面台で歯磨きをして整えるはず。白い影が父親の後ろでも通っていくかも。
そこまで考えてから母親を改めてみる。
「なに?」
「いや、たださ」
「うん」
「母方の曾祖父ってどんな人だった?」
「なに、突然」
「別に」
「んー、母さんも質問したりあまりしなかったからなぁその人については」
「じゃ、知らない?」
「んーっと、なんでも勘が良かったって言っていたから。父さんたちはその人が怖かったのもあって遠巻きに見ていたみたいだね。父親がさ、あの人は普段から顔が怖かった。だけどみなが頼りにしていて相談事を持ちかけるんだ。するとたいていの場合は感謝されて帰っていく客が多かったなぁって言ってたのを覚えてる」
「ふーん」
「なに、その人の夢でも見たの?」
「サスペンスドラマを視るかの如くわくわくした表情でこっち見るのを止めてくれ」
「なによ。減るもんじゃあるまいし」
「いや、怖がるところじゃ」
「その人のことならありそうじゃない、そういうことも」
「母さんわりとこういう話し平気な人?」
「なんで」
「ホラー番組とか見るの嫌がってたじゃん」
「ああ、あれはあれ、これはこれ」
「なにそれ」
「その人だからかなあ」
「へ、へぇ。そうなんだ」
私は深夜のホラー系動画やお祓い系動画や夢の中の白い影よりも今目の前のわくわくしている母親に恐怖を感じた。
「き、聞くんじゃなかった。余計に身体がダルおもを感じてくるじゃんか」
「何か分からないけれど、なんだか私が悪いように言わないでくれる。失礼しちゃう」
「なに、揉め事?」
鞄を持って父親がやってきた。
「違う」
父親が母親の顔を見る。母親は仕方なくと言わんばかりに、ため息をついてから言った。
「違うから心配しないで」
「じゃ、後で何のことなのか教えてね」
「分かった。携帯電話に入れておくから」
母親が父親に会話の内容をチャット系アプリで教えるらしい。
「じゃ、父さん行くから」
「ああ、そうそう。今日父さんと夕方から夜にかけてデートだから、そのつもりで宜しく」
「わかった」
時々行われる両親のデート。今日行われるのか。
「お金は後で渡すから。冷蔵庫の分でいけるならそれでね」
「えー、じゃ。千円だけ頂戴。ひとりパーティーする」
「どうせ、あなたお菓子とジュース買って映画でも見るつもりでしょう」
「そうだけど」
「まったく。わかったわ千円後で渡すから忘れないでね」
「わかった」
「じゃ、行ってくるよ」
「いってらっしゃい」
私も自分の食べた時に使用していた食器を流しに移す。母親が父親と一緒に玄関に向かっていた。
用意が完了している弁当と水筒を鞄にしまう。
「はぁ」
ひと息ついた時に、小さな声で
『サイダー』
という声が聞こえた。
楽しんでいただけましたでしょうか。ホラーの映像を見たら必ず、ホラーの映像を楽しませていただきましたとお礼を言いましょう。そうしたらホラー組は移動ができるとほくそ笑んでさっさと荷物を片付けて「お暇いたします」とお帰りになられますゆえ。




