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厄除けお祓いはお済ですか

ゆるめのものです。怖い怖い話しをご存じな方には「冗談でしょ」と思われるくらいのテイストになっています。今回は主人公につれがいますので、つれとの会話文があり独り身で悔しいや哀しいと感じていらっしゃる方にはちょっとイラっとするかもしれません。ご注意を。



厄除けお祓いはお済ですか



―ピー!

 キッチンでお湯が沸いた音がやかんから鳴った。急ぐこともなく普通の速度でガスレンジの火を止めに行く。止めてから音の鳴る仕組みである、お湯を注ぐ口の穴の開いた蓋を上へあげる。その行為に自分でイラっとする。穴が開いた蓋を先に上にあげれば音は速く止み静かになる。静寂を取り戻せるのに。

「ふぅ」

 ガスレンジのスイッチのロックもかける。安全を考慮してロックを掛けるとスイッチがウ動かなくなり火が出ないようにできる。

 お湯を使って、自分にはコーヒーを淹れ、つれには紅茶を淹れる。

 ゆっくり起きてきたつれが「おはよう」とかさかさの声で弱弱しく挨拶してきた。

「おはよう。これでも飲め」

と椅子の席のテーブルに誘う。

「サンキュー」

 向いの席に座ってコーヒーを飲みながら手帳を開いて、今日の予定を確認する。

「今日はどんな感じですか?」

 カサカサ声がすこしは治った状態になった声で質問がきた。

「そうだな。予定していた通りに進めれるなら、三時ごろ暇になる。その時に連絡する」

「了解。ラジャー」

「ああ、そうだ。お隣さんにいただいた果物残り食べちゃっていいからな」

「はい。やったね」

「そっちはどうなんだ」

「えーっと、今日は予定が三件あって、一件が上手くいけば夕方に終わる感じ」

「そうか」

「それからお祓い旅行行こうって、パワースポット行くんだって言って玉さんがのりのりなので、その話しを進めると思う。付いてくる?」

「俺が?」

「玉さんたちもつれつれてこようかなぁっていってたし一応確認をさぁ」

「あちらがつれいるなら俺も行った方が良いだろう」

「うん。わかった」

「どれくらいの予定だ」

「うーんと、確か」

 そういってつれは鞄の中から手帳を出した。

「ああ、そうそう日光あたりって言ってた」

 お祓いという割には、場所がよく聞く観光スポットのひとつで安心した。

「それなら一泊二日か?」

「そうなると思う」

「土日か?」

「うーんと再来月の祝日と土曜日はどうかって。日曜ゆっくりできるし。その代わり宿代少し高くつくけどって」

「そうか。確かにそうした方が俺にも有難い」

「でしょ。私も有難いからそれがいいってお願いしたんだ」

「それくらい先の話しなら何とかなるかもしれない」

「よし、つれ同行で旅行考えるの確定でちょっと話し進められるか話しをしてみるね」

「俺行くこと決定になってるじゃないか」

「その方が楽しいもん」

「なんだそれは」

「旅行行ってないでしょ、だから」

「わかった」

 いつの間にか冷めたコーヒーを飲み干してから席を立つ。流しにもっていって、軽く洗う。鞄を持って鍵を持つ。

「それじゃ、行ってくる」

「いってらっしゃい」

 そう言ってつれは大きな口を開けて俺の用意した朝食のパンを食べ始めた。その様子を見た後に、玄関へと向かう。猫が見送りに来てくれた。

「ミャー」

と鳴く猫の頭を撫でてやると喉でぐるぐると音を鳴らし始めた。名残惜しいが、時間が無くなるので出かける。

「じゃ、行ってくる」

今度は猫に挨拶をして家を後にした。

 住宅街を抜けてバス通りまで出ると、車の往来が増える。どこかで車のクラクションがなった。

 違う方向へ向かうバスがバス停へと到着するのを見て焦る。あれはいつも乗車しているバスの五分前にやってくるバスだ。ということは、後五分しかない。五分でバス停まで移動しなければ。不本意だが、少し駆け足で移動する。

 間に合って、バス停に並ぶ人の最後尾に並んでバスを待つ。すると、後ろに誰かが通ったような気がした。しかし自分の後ろには店舗しかないはずである。店舗の建物のそばに立っているので後ろを歩くことはできないはずだ。

―サーッ

 目の前に歩道を走っていく自転車が通過した。

 ぐるぐる考えそうになる思考を停止させるように意識していたら動きまで停止しているような感じでジッとしていた。大げさな言い方をしたものだと自分の中で幾分思いながら、口からは詰めていた息をはいていた。

「ふぅ」

 ひとつの考えが思い浮かぶ。今週始まったあの日の夜に見た特番のホラー番組をみたからじゃないかという思いに至った。

 ああ、嫌だ。寒気が。あいつも寒気するようなこと起きてなきゃいいけれど。と思うと、心配なので携帯電話を取り出して、今あったことをチャットで知らせる。

 返事が帰ってくる前に、バスがやってきた。

 携帯電話を一旦鞄にしまい、乗車する。運よく座ることができた。もう一度携帯電話を取り出す。表示を出してみると、返信が来ていた。

 なんと彼女もゾッとすることに、家の猫が部屋の一点を見つめて鳴いているというのだ。それが、ホラー番組を見ていた時に見ている途中で部屋の中で音が鳴って確認しに行ったけれど何もなかったあの時の音のほうを見ている気がすると返ってきていた。

「おお」

 その文面に俺もぞわぞわした。

 すると、もう一度自分の後ろに人が通った気がした。右から左にだ。

 そんな訳はない。俺の座っているのはバスで座席の後ろの空間にも座席があり、人は座っているだけで座っている座席と座席の間を通る人間は居ない。その間の狭さは小さな子供でも通れるだろうかというくらいしか幅はない。まして行った先はバスの側面。外に移動したことになる。

 これはなにがなんでも俺もその旅行に連れて行ってもらって、厄除けをしなければ。

 つれに旅行の件のお互いのつれを同行する件を本気で頼むとお願いした。彼女もそうだね、そうだよね。心配だよね、わかったと返した。

 ホッとする自分。実家に住んでいた時の幼い時に親の実家に行った時にお仏壇の前で座って手を合わせたことがある。それを思い出して、心の中で手を合わせてみた。目を瞑り、頭を下げる。幾分か、身体がすーっと成るのを感じた。

 会社に着くと、そのことを忘れるようにして。仕事に打ち込んだ。

 仕事で行わなきゃいけない項目を上司と確認してスケジュールも共有する。そしてから作業に移った。

 隣の席の同僚が尋ねてきた。

「何か今日はいつにもましてテキパキしているような気がする。何かコツでも?」

「んーん。ホラー番組見ることかな」

「えっ、なにそれ」

「いや、実は」

 そういって事の顛末をこの同僚に話しをする。すると、

「話しを聞くんじゃなかった。こわっ」

と哀しい反応が返ってきた。

「大丈夫?」や「怖いね」などの返事もちょっと嫌か。この同僚、男だしな。どこか垢ぬけた明るいキャラクター性を持っているやつだ。これくらいの反応がやっぱりいいか。

 失礼なくせにどうでもいいことを考えていると、後ろの席の女性から声がかかった。

「あの、すみません」

 珍しいなぁと思っていると、

「備品在庫管理の件で」

「何かありましたか?」

「いえ、その。早退された時に、実は備品の保管の場所を変更するかもしれないという話しになりまして、その場所が決まったのでお伝えしておこうと」

「俺にですか」

「はい。それで」

そういうと、付箋の張られたコピー用紙を渡された。内容は備品の場所の変更点と写真。付箋には、『ついてますよ』と書かれていた。怪訝に思った俺は、

「付いてるってなんですか?」

と質問すると、

「やっぱり漢字で書いた方が良かったか」

とぼそりと言った言葉がはっきり聞こえた。頭の中に今朝のバスを待っている時や座って乗っている時のことが思い浮かんだ。

「あ」

「心当たりが?」

「はぁ、まぁ」

「ちょっと、こちらへ」

 小声になりながらいそいそと備品の置いてある棚の方に移動して小声で話しをし始める。

「私少し分かるんです」

「やっぱり俺についてるんですか?」

「おそらく、は。で、旅行行くらしいですね」

「そんなことまで!?」

「真面目に行ってきた方がいいですよ。あと今年の墓参りは実家のと子供の時に墓参りをしていた場所のお墓にも行った方がいいと思います」

「ああ、そうです。確かに行ってました」

「それから、あの。あまりにもプライベートなことでどうしようかと思うんですが」

「どういうことですか」

「今のつれの方と籍を早めに入れた方がいいってその。あの気持ちの面もありますから、その年内か来年の内には。年内が一番いいって言ってました」

「ほんとうですか」

「ええ。それじゃ、私はこれで」

「えっ!?」

「もう他にお伝え出来そうな情報はありま、墓参りはつれの方も是非一緒が宜しいかと思います。それでは」

 そういって彼女は自分の席に戻っていった。

 開いた口がふさがらない。

 俺の頭の中にあった今日の予定が吹き飛んだ。

 ポンコツになりながら「こわっ」と言っていた同僚の助けを得て、なんとか仕事をこなす。時間通りに仕事がこなせている。

 約束の午後三時にこれで連絡ができる。同僚にはお礼にコンビニのデザートをひとつ奢った。

 午後三時になって、つれにチャットで今日の出来事を送る。余りのことにすべてのことをつまびらかに伝えてしまった。

 つれからじゃ、年内に私はあなたにプロポーズされるのですねと返ってきたときに初めてしまったと思った。考えが足りなかった。いや、この場合は肝が据わっていなかった。俺の肝は小さかったのだ。

 サプライズできなくてすまない旨を送ると、大丈夫だと励ましの文面が返ってきた。

 今年来年とプライベ―トの予定がうまっていく。デートをすることにもなったし。

「ああ、コーヒーが沁みる」

「どうしたんですか?」

「いや、今日はちょっとポンコツに頭が成っていたから、なんとかお前のおかげでなんとかなった。ありがとう」

「ああ、そうだった。そうですね。もっとお菓子以外でもいいんですよ」

「ははは。考えておく」

「いいんですか。言ってみるものですね」

 その日、つれと二人で記念日でも祝うかのように豪華な夕食にしてステーキにあう赤ワインを飲んだ。

 恐怖や心配事不安もあるが、同時に祝福もある。

 なんて日なんだ。その日は猫とつれを抱きしめながら眠りについた。



お祓いをしにいこうという話しをしていることでホラー感を出させていただきました。ゆる~いホラーいかがでしたか。本当にダメな人にはこれくらいでも怖かったという方もいらっしゃいました。ホラーものと分かっているのでどこでどうその話しが言葉が出てくるのかですでにドキドキされ始めていたそうです。つまり真剣にこちらの怖い話しに向き合ってくださっている証拠のように思えました。みなさんはどんな風にホラーを楽しまれていますか?

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