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授業は集中して聞きましょう

日常化しているタイプの人間にとってのホラーごととはなんぞやという観点から描きました。どうぞお楽しみください。高校生活懐かしいなぁ。良いなぁ。若いなぁ。

「オカルトなんて今時流行らないでしょう」

とクラスの女子生徒が言う。夏の日のホラー特集の中に幽霊話しとともにオカルト的な話が合ったと憤慨していた。

 隣の席でその話しをしているグループの話しをこっそり聞いていた私は思った。

 オカルトと言って夏の風物詩や創作のアイテムのように謳われているが、元々の史実に則った歴史をたどると、そういうものが流行っているという言葉は出てきても、はっきりとそれについての考察をしている書籍などはみな眉唾ものだとして、本気で研究されておらず今の女子高生などの発言となるのだろう。

 つまり私たちの中で流行っていることは史実をのべている有名な人の日記にでも乗らないと眉唾もの扱いされる可能性がある。

 そう考えるとなかなか自分というものが小さくも感じたり、この世界というものの輪郭を感じられているような気がして楽しい。

 手にしている小説のセリフに目をやる。

『なにをいっているのか分かっているのか?』

『そういうことだから、俺はあの人にはついて行かない』

 こんな風に思えて、人生の進路を決められるなんてなんて恵まれた星のもとに生れたのだろうか。先生に呼び出されて今は席に居ない友人はやりたいことはあれど仕事に結びついていない。その趣味のせいで寝不足で勉強不足の彼は成績の落ち具合と朝寝坊で説教を受けているらしい。先日も「反省文を書かされた」としょげていた。

 落ち着いた頃を見計らって、その友人と彼の没頭している趣味の世界が広がっているお店へ一緒に行くことになっている。とりあえず友人として彼の趣味の世界の話しを聞いてやるつもりだ。雑誌を読んだり、書籍の写真を眺めているらしいので、何に心躍っているのか訊ねるつもりだ。

 学校では話したがらないので、こうして休日を利用して自分もリフレッシュしながら友人を理解しようとしている。

 幽霊話しをしっかり覚えているらしい彼女は、ちゃんと抑揚をつけて話しながら友人の表情を見ながら話をしている。彼女は友人をつまり他者を楽しませたいエンターテイメント性の数値が高いのかはたまた長女だったりして世話をするのが得意なのか。

 今度友人に尋ねてみよう。彼女は長女なのか。

 そのまま耳では彼女の話しを聞いていてあることに気が付いた。

 ○〇町の三丁目の行方不明になった人の話し。そういえば、髪が長い茶色の髪の女性だったなぁ。たしか大学生くらいの年齢で、アルバイトしていたとか。そのアルバイト先の知り合いの人とのトラブルが原因だったとか。確か新聞に載っていたし、ニュースにもその女性の顔が映像で映っていたはずだ。

 そして他の話しで出てきた、ガードレールがあるカーブのキツイところの山の方の道でカーブを通り越した直ぐにトンネルがある場所。たしか他にもそんな場所を舞台にした怖い話があったような。

「あれ」

 携帯電話で検索してみると、候補地が何か所か出てきた。やっぱりこれだけ候補地が出てくるんだ。それくらいよくあるパターンなんじゃ。

 事実をもとに行方不明者の怖い話を作ったのだろうか。現代の怖いお化けが出そうなところを思い浮かべよという問いに、教室の誰かは候補にあげそうな場所ばかりが舞台となっている。

 そこまで気が付いた時に、ホッとした。

「あ」

 本当は緊張していたのか、怖い話をしているグループの声がまるまる分かる席に居るお陰で、ちゃんと怖い話を聞く体験をしていた。

 はぁ、私こういう話しも平気な人間だと思っていたけれど、自分が思うよりも平気じゃなかったんだなぁ。

 放課が終わるころに友人が帰ってきた。

「無事生還!」

「お帰り。どうだった?」

「反省文書いたモノを修正しなさいと指導を受けてまいりました」

「それで」

「先生は大変満足されたご様子で、そのあと。ああ、なんで言っちゃったんだろう」

「どういうことでしょうか、つまり」

「もう、勘弁してください」

 そう言って前を向いてしまった。

ちょっとと文句を言おうと思った時に予鈴のチャイムが鳴った。

 クラスの生徒も自分の席に戻っていく。ため息をついて、

「後でね」

といった。

「おう」

と返ってきた。

 机の上に次の授業の教科書を置く。

 気にしない。机の中に手を入れた時に、前から触れてきた冷たい手の感触があったけれど、それは気のせいで気にすることじゃない。そう、気にしちゃいけない。

 怖い話をする季節に関係なくいるようだが、特にみな夏にホラーものを見たり話題にしたりしているので、夏に遭遇する確率が多いように思う。

 ああ、気を付けよう。いけない。この事を考えるんじゃなくて、そう、扉を開けて入ってきた先生に集中する。

 教壇に立って挨拶をし始める先生。男性で女子生徒に人気もある。好きだと憧れている女子生徒もいたことがある。そう、偶然見かけたが違うクラスの人間だったので、誰かは分からない。結婚をしていることも良いと言っていた。自分にはよくわからない憧れの仕方もある物だと思ったものだった。

 教科書をめくって授業が始まる。

 先生が読み上げる内容を意識して自分の心の中でも黙読する。文字をなぞるように視線を動かす。先生の言葉に相槌をうつ。

 うわー。こっち見てるからこっちは見ないようにしないと。

 先生今こそ、懐かしのアニメみたいにお祓いしてください。って、無理か。

 制服のポケットに入っている数珠系アイテムに触れて、弱る心を落ち着かせる。すると、前の席の友人がこちらを見て言った。

「消しゴム貸して」

「うん、はい」

 するとこちらを見ていた視線は我々のやり取りを眺めているようだった。そう言えばこの眼差し前にも見たことあるかも。確か。

 頭の中に走馬灯のように流れてくる断片的な記憶たち。クラスメートの姿、先生の姿、そしてクラスメートと話をしている他のクラスの子。それらの記憶に交じって友人との思い出のワンシーンも流れてくる。そういえば、この視線を向けてくる子は友人に懐くようにして現れることがあった。今も視線は友人の背中に向けられている。視線を向け過ぎないようにして、黒板を見て、先生を見た。

 一瞬ぼやける視界。先生の傍に立っている白い人型のような存在。

―ガタッ

 大きく教室に響いた椅子の音に我に返る。数名の生徒と教師がその音のほうへ視線を向けた。

「すみません」

 そう言って、椅子の音を出した生徒が謝った。

 視線は黒板へ向かう生徒と先生。そして彼らも黒板に視線を向けていた。

 瞬きをしているその数瞬。彼らを見ないで意識しないで授業を真面目に受けないとと自分の頭の中を切り替えるように唱える。

 すると先ほどまで見えていた見えないはずのものは見えなくなった。

「はぁ」

 ほっと肩を下ろした後に、友人がこっちを向いて消しゴムを返してくれた。

「ありがとう」

と笑顔を向けて。タイミングが良すぎるぞ、この。と内心ときめきに似た何かを感じていると、先生と目が合った。恥ずかしい。

 にっこりとしている先生のその笑顔はこちらの心の中のときめきに似た何かに気が付いていない優しさや希望にあふれた笑顔ですよね。

「この問題について書かれている文を読んでくれ」

「はい」

 咳払い一つして、読む場所を確認してから読み上げていく。読み終わると、前の席の友人がこちらを向いて、右手を合掌のような形にして少し会釈をして謝ってきた。

 口パクで「まったく」と伝える。と「ごめん」と口パクで相手も返してから前を向いた。

 ふうっと整えてから、黒板を見る。すると、びっしりと書かれている文字の多さにめまいを覚えながらも、そんなめまい起こしている場合じゃないと、先生が黒板の文字を消してしまう前に自分のノートに書きうつさなきゃ。

 どこかで「イヒヒヒヒヒヒっ」と笑う声がしているように思えたが、意識はノートに記入することに集中していて構っていられない。髪の一部や制服の一部を少し引っ張った感じはあるが、まだ書ききっていないし。私も成績落とすわけにはいかない。ここは、集中。

 キャー先生黒板けし持たないでー!

「まだ書いてる奴いるか?」

「は、はい!」

「おお、どこまで書いた?」

「左の下の方です」

「ここか? 遅くないか? ちゃんと授業に集中しなさい」

「はい」

 どっと教室で笑いが起こった。笑っている生徒は「確かにそこだといくら何でも書くのが遅い」とか「私は右側書いてる最中」だとか話をしている。

 恥ずかしさはあったが、今は書き記さなくては。

 今は不可思議なことよりも授業に集中しないと、自分の将来のために。




当時の担任の先生よりも年を取った自分としては、とても初々しい感じを受けながら描けました。

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