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妖幻郷 〜鏡界に揺れる理想郷〜  作者: れんP
第一章 天眼異変編

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第一章 天眼異変編 第二話「情報集めと捜索と」

妖幻郷――鞍馬第二山。


幾重にも連なる山々の一角、ここは天狗や修行者たちが日々鍛錬を積む地である。空気は澄み、風は鋭く、静寂の中にも張り詰めた気配が満ちていた。


 


「たしかこのあたりにも、“目”が現れたらしい」


 


山道を進みながら、八咫烏が低く呟く。


 


「特に変わりありませんね」


 


隣を歩く源 梨花(みなもと りか)は、周囲を見渡しながら答えた。


木々は揺れ、鳥の声が遠くに響く。見た限りでは、どこにも異常は見当たらない。


 


「あぁ、しかし気をつけろ。あの“目”が現れた場所付近だ。何があるかわからない」


 


「うん……そのつもり……あ、」


 


ふと、梨花の視線が川の方へ向いた。


 


「どうした?」


 


「エンコがいる」


 


八咫烏が小さく目を細める。


 


「ん? 河童か。そういう呼び名もあったな」


 


「聞いてみよう」


 


「うむ、なにか情報を持っているかもしれん」


 


 


山を少し下った先、清らかな川が流れていた。


その浅瀬で、数人の子どもの河童たちが水遊びに興じている。


 


「……あ、あの〜……」


 


おそるおそる声をかける梨花。


 


「ん? あ! 人間だ人間だ!」


 


「遊んで遊んで!」


 


ぱしゃぱしゃと水を跳ね上げながら、子どもたちが一斉に駆け寄ってくる。


 


「え、えっと……」


 


戸惑う梨花の前で――


 


「コラァーーー!!!! 領主を困らせるなーーー!!!」


 


怒号が響いた。


 


慌てて子どもたちの後ろから現れたのは、大人の河童たちだった。


 


「すみません、若いもんが……」


 


「ごめんね、領主様」


 


少し照れたように笑う、河童の少女。


 


「い、いえ、大丈夫ですよ」


 


梨花は慌てて首を振る。


 


「アタシは河童の潮だ、よろしくな」


 


快活に名乗るその少女――潮は、腕を組んでにっと笑った。


 


「領主様は確か……」


 


「あ、現領主の、源 梨花です」


 


「あぁ! そうだそうだ、梨花様だ!」


 


ぽん、と手を打つ潮。


 


「で? こんなとこまで来て、何か用かな?」


 


その問いに、八咫烏が一歩前に出る。


 


「うむ。“目”は知っているだろう。それの調査だ」


 


「あぁ……“目”か」


 


潮は少しだけ表情を引き締めた。


 


「確かに見たぞ」


 


「ほんと!? なにか見なかった!」


 


思わず身を乗り出す梨花。


 


「う〜ん……」


 


潮は顎に手を当て、記憶を辿るように空を見上げた。


 


「……あ、そういえば。“目”が出る前、なんか飛んでたような?」


 


「ふむ、飛行物か……」


 


八咫烏が静かに考え込む。


 


「飛行できる存在でしょうか?」


 


「いや……何かを“飛ばした”可能性もある」


 


低く呟くその言葉に、梨花は小さく頷いた。


 


「あぁ、それもあるか……ねぇ! それって、どこに飛んでいった?」


 


「う〜ん……」


 


潮は腕を組み、しばらく考え――


 


「あっちだな」


 


指さした先は、山のさらに奥。


 


その方向を見た瞬間、八咫烏の表情がわずかに変わる。


 


「……ふむ、死霊の森の方角だな」


 


その名を聞いた途端――


 


「ふぇぇ……あそこ行きたくない……」


 


梨花の声が一気に弱くなる。


 


鬱蒼とした森、彷徨う霊、近づくだけで気配が歪む場所。


妖幻郷の中でも、特に忌避される地のひとつだ。


 


「まぁ、あそこに近づくのは物好きだけだな」


 


八咫烏は淡々と言う。


 


「まぁ、近づくだけでもいいんじゃ?」


 


潮が軽く肩をすくめた。


 


「そうだな、それがいい」


 


八咫烏も同意する。


 


しばしの沈黙。


 


梨花は森の方角を見つめたまま、小さく息を吸い込んだ。


 


「……うん!」


 


意を決したように、はっきりと頷く。


 


「行ってみましょう。近づくだけでも」


 


穏やかな山の空気の中に、ほんのわずかな緊張が混じる。


 


“目”の正体へと繋がる手がかりはあるのか。


 


そして――その先にあるのは、誰も近づきたがらない“死霊の森”。


 そこに手がかりはあるのか

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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