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家族という仕事  作者: 阿井 亜斗
3章

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5.

 辰三は毎日の同じ繰り返しに倦んできていた。

 数日前まではあんなにもおびえていたのに。

 今では喉元過ぎれば熱さを忘れるの言葉通りに、以前の生活に戻ったことにより恐怖を忘れてしまったのだ。

 同僚から飲みに誘われたことにより心が浮ついていたし、この後部屋に行きたいと恥ずかしそうに言われた。

 辰三は自分から積極的にアピールできるタイプでもなかったし、付き合うときも女性からのアプローチで付き合っていた。

 だが、あまりの積極性のなさにすぐにフラれたが。

 久しぶりの女性からの誘いに舞い上がっていたため、承諾をし辰三の部屋に向かうことになりコンビニによってから部屋に向かった。


「・・・こんなんじゃ、はいれないわよね。」

「何か言った?」

「なんでもないわ。」

 辰三はスマホをみており、その間に同僚はコンビニで買ったものを用意していた。

 スマホを見終わった辰三は顔を上げてから同僚と飲みなおすことにした。




 辰三が寝ていることを確かめた。

 スマホに連絡があったことにより、薬をいれる隙ができたのがよかった。

 お札の位置を確認すると玄関、窓、屋根裏といった外部からなにかが入れそうな場所に貼られていた。

「・・・()()がはいれないわけよね。外さないと。」

 屋根裏、窓といった順番にお札を外していく。

 玄関のお札に手を伸ばす。

「これで・・・、終わる。」

 玄関のお札を外した。



「何が終わるんだ?飯島さん。」



 玄関の扉が空く。

 そこには彼女ではなく、男が二人。

 思わず固まる。



「あんたは女中で、父親で、医者で、最後には裏切る使用人だったんだな。飯島さん。」

 満月と佐藤はそう、お嬢さんとの仲介をした同僚である女性―飯島に問いかけた。

「何を、言っているんですか?」

 飯島が何をいっているのかわからないような顔をする。

「あなたたちは誰ですか!?鍵をかけたのに、人の家に急に入り込んで!」


「僕の友人たちです。」


 飯島の後ろには寝ていたはずの辰三がたっていた。

「・・・なんで、起きたの?」

 飯島と飲みに誘われたときにはすでにスマホで佐藤に連絡をとっていたのだ。

 佐藤は辰三に部屋でだされたものには口をつけるなと伝えていた。

 外で飲んでいるときにも何か入れられる危険があったが、確実にお札を外すためには家の中に入る必要があり隙をみてスペアキーを作られたとしてもお札がはがされたことに気づいては意味がない。

 しかも、辰三はお札ももっているのでそれを取る必要もあるため部屋に直接向かい隙をみて取らなければいけなかったはずだ。


「別荘と墓に行ってきましたよ。100年以上前のものだったので別荘も墓もずいぶん古ぼけていましたが。」

 佐藤のその言葉に飯島はピクっとする。

 飯島は顔をみせず下を向いていた。

「別荘の所有者が誰か調べてみたところ、飯島さんあなただった。墓も見てみたところ、確かにお嬢さんらしき人の名前があったが、死んだのは正確にはわからなかったが100年以上たっているようだった。」

 飯島は何の反応もない。

「『飯島』は牡丹灯篭に登場する幽霊のお露の父親である旗本・飯島平左衛門の苗字だ。だが、あなたは苗字が同じだけで何の関係もないのではないですか?」

 佐藤は続ける。

「あなたの経歴を調べましたが、普通なんです。誰になにを聞いても、いい人だったといういたってよくある印象しかない。いわば何もないんです。このような出来事に巻き込まれるきっかけが何を調べてもでてこない。特別な場所に訪れたわけでも、家系や血筋も関係ない。」

 佐藤はどこか哀れみの顔を浮かべた。

「ただ苗字が同じでなんとなくそこにいたから選ばれただけで、あなたは運が悪いだけの巻き込まれた人だ。」


 飯島はポツリといった。

「・・・本当になんでこんなことになったんだろう。」

 飯島は顔を上げた。

 その顔は、無表情だった。

 声だけは悲壮に響いた。

「いつからこうなったかわからない。普通に生活をしていたら、なぜかいつのまにかお嬢様の元に男を紹介し、お嬢様が死に、男にお札を作り渡し、お札をはがし、お嬢様が男を憑き殺す。そんな何回やったかわからない。ただ繰り返していくと単純作業になり、人を殺す手伝いをしているのに飽きている自分がいる。」

 淡々と言葉を連ねていく。

「だけど、この男をお嬢様が気に入ったらしく今回のことが終われば最後だということがなんとなくわかった。これが終われば、こんな腐った日常が終わり以前と同じ日常が還ってくるとおもった。だけど。」

 飯島がこちらを見た。

「もういい。お嬢様がきた。」



 飯島の目線の先はにいたのは、同じように無表情な女がいた。



 バリっ!

 女に気を取られた隙を狙って、飯島がお札を破いた。


「たtうz0sあNーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー11111111!!!!!!!!!!!!!!!DoKKKKKKKKKKoooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!!!!!!!!!!!!!!」


 女の声が響いた。

 鼓膜が破けたかと思うほどの音量だ。

 思わず耳をふさぎしゃがみこんでしまった。


「満月さん、大丈夫ですか?」

 佐藤には何も聞こえないらしい。

「お前、何も聞こえないのか?」

「私には全然。女性がいることがわかりますが。」

 飯島はあまりの絶叫に気絶をしたようだ。

 その合間をぬって辰三がこちらによってきた。

「大丈夫ですか?」

 辰三が何も気づいてない様子でこちらによってきた。

「辰三さん何も見えないんですか?」

「恐らく何かいるんだろうなとは思いますが、何も。恐らく御守りをもっているからだと思います。」


 お嬢さんのターゲットがこのような状況だ。

 割を食っているのは、満月と気絶している飯島という状況になっている。

 なぜだ。


「とりあえず、あれを、どうにかしたい。俺の、意識が持たなそうだ。」

 このままだと意識だけでなく、飯島と自分に耳の障害が残りそうだ。


『わん』


 そのようなときに『犬』の鳴き声が聞こえ満月の影から現れた。

『犬』は女に向かって走りこんでいった。


 ザクっ。


『犬』が女の腹を喰い千切った。

 血も何も出ずに現実感がない感じだったが、かといって生前の記憶なのか臓器が出てくる。

 それをバクバクと食べる『犬』。

 悲鳴がさらにすごくなる。

 満月は意識を保つことをあきらめ、気絶した。

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