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家族という仕事  作者: 阿井 亜斗
3章

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6.

「大変だったねぇ。」

 晶はそんな軽い口調で病院から帰ってきた満月を迎えた。

「なんか損をしたのは、俺だけな気がするな・・・。」


 満月が気絶したあと、飯島とともに急いで病院に担ぎ込まれようだ。

 満月が病院で目を覚まし、精密検査をうけたが耳に後遺症はないとのことだった。

 佐藤に女はどうなったのか聞いたところ、佐藤から見た女はちょっとずつ消えていくのがみえ最後には綺麗さっぱりといなくなったとのこと。

『犬』に全て喰われたようだった。

 今後、被害を受ける人はいないだろう。

 飯島は病院で目を覚ましたようだが、何度も女に男を紹介した記憶はきれいさっぱりとなくなっているようだった。

 なぜ病院にいるかもわからない状況だったらしい。

 辰三が飯島に付き添っており、佐藤にてきとうな嘘をでっちあげてもらうことにしたそうだ。


「本当に、飯島さんも辰三さんも運が悪かったんだよね。」

 晶は今回の感想を言う。

「あれは、適当になんとなくあっている人に取り付き、好みの男をつれてくるような撒き餌を探す。なにかのタイミングで飯島さんは目をつけられてしまって、いつから始まったのかわからない撒き餌を係をしていたんだよね。辰三さんはその中の一人で好みに合致したから撒き餌である飯島さんのことがいらなくなったのだと思うよ。ただ、解放されたからといって飯島さんが無事だったかわからないけど。」


 どちらも運が悪かった。

 当人たちにとっては、理不尽すぎるが。

 現実世界でも通り魔にあって運が悪かったですますなら腹が立つ。


「でも、僕的にはいい暇つぶしと『ごはん』だったよ。」

 いい笑顔を見せる晶。

『犬』がいつのまにか現れ、晶の足に寝転んでいる。


 満月はため息をついた。

「解決してよかったが、なんでかすごく複雑な気分になるのは理不尽な目にあったからか?」

「まあまあ、辰三さんと飯島さんはあのままじゃ本当に危なかったら兄さんが動いてよかったんだよ。」

 事件にかかわると決めたときと反対の立場になっている。

 晶を巻き込んだのは自分のはずなのに。

 スマホに佐藤から電話がかかってきた。

 場所を自分の部屋に移動して電話にでた。


「もしもし。『家』には無事つきましたか?」

「ああ。」

「今回はありがとうございました。辰三を助けていただいて。」

 佐藤からお礼を言われた。

「まあ、佐藤さんにはいつも世話になっているからいいけど。だけどなぜか納得できない複雑な気分だよ。」

 正直に佐藤に自分の気持ちを伝えたところ、苦笑が返ってきた。

「まあ、気持ちはわかりますよ。辰三に関わるとみんなそんな感じです。」

「というと?」

「あいつ、なぜか色々なものに巻き込まれやすいのですが、辰三自身はいつもケガなどなく無傷なんですよ。」

「はあ。」

「辰三は弱気な男なんですが、漁夫の利というか何か利を得るような行為を無意識に行うんですよ。」

「人間としてはよくある行為なのでは。」

「そうなのですが、それが人を踏み台にして行われることがあって。それが無意識なのでタチが悪かったりするんです。」

「今回の利は飯島さんか。」

 さらに佐藤の苦笑が深くなった。

「そうです。飯島さんは自分から誘った記憶はないのですが、辰三はこれを機に弱気な気持ちを出しながらうまい具合に飯島さんの懐に入るんでしょうね。」

 実際の飯島がどうような女性かはわからないが、そのような性質を持つ辰三なら上手くいくのかもしれない。


「ところで、気になっていたことがあるんだが?」

「なんですか?」

 満月は佐藤に聞いた。

「辰三さんは、『家』にバイトしてたことがあるのか?」

「よくわかりましたね。」

 佐藤から肯定の言葉がでてきた。

「初めて会ったとき、オカルトの話がでたからそうかなと思って。」

「なるほど。」

 辰三も怪奇現象に巻き込まれたのかもしれない。

「あの気弱なのに無意識に利を得るような行為が晶さんのお眼鏡にかなわず、追い出されていましたが。最初はおもしろいと思っていたようでしたが。」

「晶は面白がりそうだが。」

「どこか逆鱗に触れたみたいで。よくあいつ生きているなと思います。」

 何をしたんだ辰三。

「まあ、関わることもないと思うからいいか。お前の友達に悪いがよくつきあってるな。なんか嫌がりそうなタイプなのに。」

 佐藤がかかわるようなタイプに見えない。

「まあ、友達というよりも親族なので付き合いがあるところもありますね。」

「そうなのか。」

 あの気弱な感じ辰三が佐藤と親族なのは結びつかない。

「私の仕事も知っているので、オカルトの言葉をつかったんですよ。」

「なるほど。」

 それもあったのか。

「では、本日ゆっくりしてください。」

「ああ、じゃあ。」

 そこで電話を切った。


「兄さ~ん。電話終わった?開けていい?」

 電話が終わった瞬間、ノック音が聞こえた。

「ああ。」

 晶が顔を出してきた。

「ずっと、そっちに関わってかまってくれてなかったから一緒に映画みよう!」

 満面な絵顔の晶がこちらに近寄ってきた。

「何の映画だ?」

「これ!」

 パッケージをみたところ、こてこての蜘蛛のB級映画で確か郊外にある工場での化学薬品蜘蛛が巨大化し近くにある町にいき人間に襲いかかるといった話だ。

 今回の事件を思い出しげんなりした。

 


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