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家族という仕事  作者: 阿井 亜斗
3章

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4.

「どうだった?」


 満月が『家』に帰ってきたのは夜も遅く、日付が変わりそうな頃だった。

 遅くなりそうだっため、晶にはその旨を連絡をしていた。

『犬』がついているので連絡する必要はないとは思うが、一応『家族』なので様式美として連絡した方がいいだろうと思ったのだ。

 その連絡をしたところ、晶の様子が大層ご機嫌だったのでこの行動は当たりだったのだろう。



「兄さんの感想は?」

 リビングに晶はいた。

 別荘や墓がどうだったとかではなく「満月の感想」を聞いてくるところが、すでに別荘や墓についての状態を知っているのだろう。

「辰三さんは運が悪いという感想にはなるな。」

「まあ、そうなるよね。」

 晶の返事も同意に近いものだった。

「運が悪いというか、未必の故意に近いのかもしれないね。」

「だが、相手方にとってはどちらに転ぶかわからないな。飛び降りに巻き込まれた通行人に近いかもな。」

「誰を巻き込むかは人は選んではないものね。」

 うんうんと頷く晶。

「たまたまそこにいて、偶然にもうまくいった感じなんだろうね。」

「佐藤の話からも、辰三さんはそういったものに巻き込まれやすいらしい。」

 だから俺と初めて会った時にオカルト関係のなのかと聞いてきたのだろう。

 過去にもそのような経験をしたから。




「『牡丹灯籠』のような話だね。」

「男に女の幽霊が取り憑いて、殺される話か。」

「すっごい、端折られているかけどそうだね。」

 晶が苦笑した。


「『牡丹灯籠』は浪人・萩原新三郎が医者の山本志丈に誘われて飯島平左衛門の別荘に行くことから始まる話だね。別荘には美しい娘・お露と女中・お米が住んでいたんだよ。」

 晶は続けた。

「お露と新三郎は一目惚れをする。新三郎が帰る時になった時にお露から声をかけられる。」






「また来て下さらないなら、私は死んでしまいますよ。」




 お嬢さんが辰三に声をかけたのと全く一緒だった。




「そしてお露は亡くなった。さらには、女中も看病疲れから後に続いた。」


 晶は続けた。


「盆の十三日の夜、新三郎の元に牡丹の絵柄の灯籠を持つお米とお露が訪れる。新三郎は驚いたが、再会を喜び一晩を共にした。

 その後、毎晩と新三郎の元に通うにことになった。」


「新三郎には使用人・伴蔵がおり、新三郎の元に毎晩お露が訪れたことをしり、家の中をのぞいてみた。」




「そこには骨と皮だけで腰から下がないお露が、新三郎の首にくらいついていた。」






「伴蔵は驚き恐怖し占い師の白翁堂勇斎に相談、新三郎の家にいき幽霊であるお露に取り憑かれ殺されてしまうことを告げる。


 真実を知った新三郎は寺の和尚に除霊のお札と海音如来像を身につける。


 お札のおかげで新三郎のところにお露は訪ねられなくなった。」




 満月は一旦声をかけた。


「辰三さんの現状は今ここだな。」


「そうだね。」

「辰三さんは海音如来像ではなく、御守りをもっていたが?」

「それはしょうがないよ。海音如来の像なんて存在しないと言われているみたいだし。ただ念仏の雨宝陀羅尼経は「大正大蔵経」密教部に『仏説雨宝陀羅尼経』にあるみたいだから、念仏はあるけど仏像という存在ははないのかも?だから代わりに御守りにしてるのかもしれないね。」

「なるほど。」


 晶の声を聴きつつ、普通だったら御守りさえもっていれば問題ないがもし『牡丹灯篭』のようにいけばこのままでは終わらないだろう。


「この場合、使用人は誰だと思う?」

「大金に目がくらんでお札を外す使用人のことだよね。」

 晶は考えるそぶりを見せる。

「現状だと新しくかかわってきた佐藤さんと兄さんがその役割になりそうだよね。」

「佐藤はともかく確かに俺はひっかかりそうだな。」

 満月は思わず苦笑をした。

 しかし、今のところ『家族』をしているおかげでお金に困ってはいない。

「でも、別荘と墓に行ったことでなんとなく誰かわかってるんじゃない?」

 晶は満月を覗き込んだ。

 晶の目はどこか俯瞰したような視線をかんじる。

 生物の観察を淡々と観察している、もしくは物語をよんでいる目線。


「多分わかっていると思う。そろそろ接触してくるはずだ。」

 そういって、風呂にはいるために自分の部屋に向かった。

 その時、昼のことを思い出した満月は晶に言った。

「『犬』ありがとうな。助かった。」

 晶は得意げな顔をした。

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