3.
次の日に辰三と会うことになった。
佐藤の車に乗って辰三の会社近くのチェーン店のカフェに行く。
休みの日に会った方がいいだろうと思ったが、すぐに会ってほしいとのことだったので晶との会話後に佐藤に連絡したところ、次の日に会ってくれと言われた。
でなければいけない講義もなかったため、佐藤からの連絡に承諾した。
平日の昼時すぎた時間帯。
働いている人達も休憩がおわっている時間帯のため、現在店内はまばらに客いる感じだ。
「ああ、あの男です。」
佐藤がいった方向をみてみると、4人掛けの席に30代ぐらいの男がそこにいた。
30代といえば、男女ともに働きざかりと言える年齢であり人によっては仕事やプライベートで人生の転換期になることが多い年頃だろう。
だが佐藤の友達である辰三にはそのような覇気が見受けられなかった。
毎日うだつのあがらない同じような生活を送っており、そこから抜け出す勇気もないといったところか。
「祐樹こっちだ。」
「祐樹?」
「私の名前ですよ。」
佐藤は応えながら、辰三の前に座ったため満月は続くように佐藤の隣にすわった。
「こちらは同僚の満月さんだ。」
「初めまして。」
「初めまして辰三といいます。」
辰三は笑顔を見せた。
その後、言いにくそうな顔をし口ごもりながら訪ねてきた。
「祐樹の同僚ということは・・・その、オカルト的な?」
オカルトというわけではないが、分類的にはそうなるのだろう。
そこまで知っているということは、やはり仲がいいのだろう。
「まあ、そんな感じですね。」
満月はあいまいに答えた。
「そうですか。」
その返答に対して辰三は落ち着かなげな様子を見せた。
辰三の態度に満月はどこか違和感を覚えたが、佐藤の声にかき消された。
「それよりも辰三。お前そのあとは何も起こってないのか?」
「特になにも起こってないよ。やっぱり寺のお札とかってすごいんだね。」
「そうか。」
佐藤は返答しながら、こちらの様子をうかがってきていた。
といっても、満月の影の中にいる『犬』を確認したいのだろうが。
人前のことももちろんあり、姿をみせないがいることは何となくわかる。
しかも、機嫌がよさそうだ。
「辰三さん、お札はずっと持っているようにと言われたんですか?」
「そうです。お札は家に外から侵入してきそうな場所に貼り付けるのと、出かけるときも肌身は出さずもっているようにと数枚渡されました、」
辰三はそういい、ボケットから何かを取り出した。
出したものは御守りでお札が破け困るので入れているとのことだった。
「本当に効果があるようで、これを持ってから彼女が来なくなりました。」
笑顔を見せる辰三。
人がいい弱気な笑顔だ。
店の入り口近くにいる女にずっと見られてなければ、普通の男だろう。
その女は恨みがましい顔をしているわけではなく、せつなそうな顔で辰三を見ていた。
最初辰三の知り合いかと思ったが、そこまで遠くから見ているわけではないため気づかないはずがない。
しかも見えていれば佐藤が辰三に尋ねるか何かのアクションをするはずなので、多分あれは見えないものだろう。
その女を見ていたところ、目が合った気がした。
女が口を動かした。
何も聞こえない。
あまりにも悲壮な顔にいうことを願いを叶えてあげたくなってきてしまう。
女から目を離せない。
『わん』
犬の鳴き声が聞こえた気がした。
「満月さん?」
佐藤の声が聞こえた。
その声から、瞬きの間に女が消えた。
「どうしました?ボーとしてましたけど。」
「・・・すまない。疲れていたみたいだ。」
辰三が心配そうにこちらを見ている。
「大丈夫ですか?私に付き合わせてすいません。そろそろ時間ですし、私は会社に戻ります。」
「ああ、休憩時間に悪かったな。」
辰三は去っていた。
その後に女がついていったような気がした。
「・・・で、どうですか?何か見えましたか?」
佐藤が聞いてきた。
「女がついていたな。辰三さんを恨んでいる感じではなさそうだけど。」
「そうですか。お札だけでは根本からの解決にはならなそうですね・・・。」
ため息をつく、佐藤。
お札も寺の坊さんに何回かもらいに行かないといけない時があるかもしれないので、根本的な解決にならず安心はできない。
女は一生辰三に付き纏う可能性が高く、付き纏うだけならまだいいが生きているうちに連れていかれてしまうかもしれない。
満月は提案した。
「辰三とお嬢さんが最初にあった別荘と墓に行ってみないか?」




