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家族という仕事  作者: 阿井 亜斗
3章

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12/16

2.

「面白いことになってるね。」

 佐藤と会った後に『家』に帰ってきた晶に出迎えられた第一声がこれだった。

 井戸の事件以来、開き直ったのかそれとも『家族』だから遠慮しなくていいんだという間違った認識を得たのか、俺の影に『犬』を仕込むようになったらしく、話を勝手に盗み聞くようになった。

 佐藤との話も聞いたいたのだろう。


「兄さん、話聞かせてよ。」

「お前、聞いてたんだろう?なんで再度俺から話さなきゃならないんだ。」

「兄さんの口からも聞きたいな。」


 面倒な気持ちが湧き上がったが、以前拒否して放っておいたら家がゆれ、『犬』が鳴き、晶の監視が厳しくなった。

 流石にずっと監視されているのは精神的にきつかったためー帰ってくるたびに、トイレに行った回数まで言われたーため息を吐き「食事の時に話そう」ということで荷物を置きに部屋に向かった。



「お嬢さんが亡くなったんでしょ?」

 食事には不向きな話を晶は降ってきた。

「そこから話せばいいのか?」

「そこが一番の盛り上がるを見せるところじゃない。兄さんから話を聞きたいよ。」

 趣味が悪い。

 話を聞いてるのに人の不幸を『兄』から再度説明させるところがタチが悪い気がした。

 以前いた『家族』達も心霊現象だけでなく、気が滅入る話を晶からねだられて辞めていった人たちも多いのだろう。

 俺はとりあえず、佐藤から聞いた話を晶に話した。


 ◇


「お嬢さんが亡くなった?」

「はい。原因は病気というよりは衰弱したようです。」

「衰弱?」

 病気だったとはいえ、若い女性だ。

 しかも、療養のためにいった別荘で衰弱死とは急展開なのではないかと思った。

「お嬢さんは辰三と会った時に、どうやら一目惚れしたそうです。辰三も気が弱いとはいえ男なので、そんな今時天然記念物である深窓のご令嬢に思われたら悪い気はしません。育った環境も違いましたが、話が弾んだそうです。」

「なるほど。」

「お嬢さんは病気だったので、あんまり長い時間話せなかったそうで、辰三も会えるのは今回だけだろうなと思ったそうで淡い恋心は現実に戻って途切れたそうですが、お嬢さんはそうではなかったようでして・・・。」





「また来てください。もし、来なければ私は死んでしまいますよ。」






 満月はそれに呆れた。

「それは重すぎないか。いくら箱入りだとしても、初めてあう男にそんなこと言われたら相手がビビるだろう。」

「まあ、そうですね。」

 佐藤は苦笑をしていた。

「辰三は気が弱く真面目なタイプでして。元から再度会うつもりはなかったのですが、同僚に会わない方がいいと言われたそうです。」

「まあ、そうだろうな。」

 お嬢さんと普通のサラリーマン。

 接点など元からないだろう。


「そこから数ヶ月後、辰三は同僚からお嬢さんが亡くなったことを言われたそうです。どうやら辰三が再度会いに来なかったことでショックを受けて、身体的な病気に精神的なものが合わさってしまい衰弱死したということです。」

 初めて会った男に恋心を抱き衰弱死した女性。

 思い込みがすごい人だったのかもしれない。

「これを聞いた辰三はショックを受けてしまい、すごく落ち込み、会社を休むことになりました。」

「向こうが勝手に片思いしていただけとはいえ、それが原因で衰弱死したなら落ち込みもするか。」

 真面目な人間なら尚更か。

「辰三が休んでいるある日の夜のことに、家に訪れる人影がありました。」

 佐藤のこの言葉から、満月は嫌な予感がしてきた。


「夜も遅い時間に誰だろうと思い、でてみたところそこにいたのは」


 佐藤は一旦間をあけ、告げた。

「お嬢さんでした。」




「怪談ぽいっね!佐藤さんの喋りもいいけど、兄さんの語りもこの夏ぴったりだね!」

 満月が話している内容に異常な盛り上がりを見せる晶。

『犬』もいつの間にかおり、尻尾をブンブンさせながら晶と満月の間を行ったりきたりしてご満悦だ。

 食事は終わっており、今は食後のお茶の時間だ。

 ソファに座りながら佐藤から聞いた話を晶に話していた。

「で、先はどうなの?」

 わかっているはずの話の内容の続きをねだるため、満月はしょうがなく続けた。



「お嬢さんがお前の友達の家に来たのか?」

「はい。辰三は驚いたそうですが、目の前にお嬢さんがいたので死んだの話は聞き間違いかと思ったそうです。」


 確かに、本人が目の前にいればそうも思う。


「まあ、元から素直な男でもありましたが、目の前に本人がいれば誰でも信じるでしょう。」

 苦笑する佐藤。

「元から淡い恋心もあったので、会社の休みが終わっても辰三の家で逢瀬を繰り返したそうです。様子がおかしくなっていく辰三にお嬢さんと会う仲介をした同僚が心配になり、事情を尋ねたそうです。お嬢さんが毎夜辰三の家に訪れいることを知り、驚いて間違えなくお嬢さんが亡くなったこと告げたそうです。」

 そこで一旦コーヒーを口につけた。

「同僚は辰三を連れて、お嬢さんの墓に連れていってそこでやっとお嬢さんが死んだことを実感したそうです。お寺の住職に理由を話し、お札をもらったことにより、お嬢さんが来なくなったそうです。さらに、墓参りもするなと釘も刺されました。」

「そうか。」

 やっぱりわからない。

「お前の友達の事情はわかったが、なぜそこから俺に会うことに繋がるんだ?」

 佐藤はうっすらと笑った。

「前回の井戸の件と同じだと思ったからです。なので、これで終わりなら問題ないのですがこのままでも何かが起こりそうなので、満月さんにあって欲しいというよりも、あなたについているものとあってほしいのです。」

 なるほど、俺ではなく晶に見て欲しいとのことか。

 普段世話になっていることもあるし、多少は力になってやりたいが。

「俺はいいが、晶が乗ってくるかわからないぞ。」

「大丈夫です。」

 自信たっぷりに佐藤は満月にいった。

「あの人は、こういった話が好きですし。満月さんが行くところなら興味がありますよ。」



「と、言うわけだ。」

 そこで話が終わった。

「ふーん。」

 晶は話を聞き終わった後、あんなに興味を持っていたのに急にテンションが低くなった。

「興味はないか?」

「あるけど、なんか嵌められた気がして嫌だなぁ。」

『犬』も心なしから興味なさげになり満月の足元で伏せをしている。

 尻尾は揺れていなかった。

「兄さんは会うの?」

「会うだけなら問題ないし、いいかなとは思っている。ついでに墓も見に行こうかなとも。」

 最初に墓にいった方が早い気がしので、伝えてみたところ。


「いいね!行こう。」

 晶がのったため、辰三に会うことになった。

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