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『絹乃国』〜推しの小栗上野介を救いたい転生幼女、まずは天保の大飢饉から村を救います〜  作者: 天のまにまに
第1章:絹の家

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第2話:転生した?やったっ、小栗様に会える!

 え、雨かな?

 顔に水が落ちてきた。

 いけない、洗濯物しまわなきゃ。


 あれ?

 私、どーしたんだっけ?

 えーっと、ゲームしていて寝落ちしたのかな。

 うん、毎度のことです。

 問題ナッシング。


 よっこいしょ、っと?

 ん?

 起き上がれない。

 誰かに抱えられているみたい。


「⋯⋯ぬの! おきな⋯⋯」


 布?

 翁?


「絹乃! 死んじゃだめ! 起きて!」


 女の人が叫んでいる。


 ホワァット?

 ふぅいずです?


 ここは誰? 私はどこ?


 目を開けると、涙を流していた女の人の顔が急にほころんだ。


「目を覚ました。あんたぁ、絹乃は生きていたよぅ!」


 女の人に抱きしめられて、おっきな胸に顔が埋まった。

 ギブです、ギブ。

 苦しくてほんとに死にます。


「おかあちゃんよ。わかる? 絹乃」


 ごめん、わかりません。悪いけど、かーちゃんは小さい時に死んじゃったんで、顔あまり良く憶えていないんだよね。


 で、この人誰よ?


「あなた、誰ですか?」


 途端に、さっきの笑顔が困惑顔に急変。

 これはなんかしくじったかな?


「絹乃、あなたは湯浴みの後におかあちゃんが服着替えさせていたら、急に仰向けに転んで頭打ったんだよ」


 あぅ。

 そういやちょっと寒いです。

 そう思い、自分の体を見てみると、素っ裸に着物を羽織っているだけ。


 ほわっ?


 体よ。

 少し見ないうちに、お前ちっさなってない?

 おこちゃま体型だし。

 さっきの私の声も妙に甲高かった。


 うっ、それに私の大事な奥ゆかしい胸はどこいった? 隠れていないで出てきなさーい。

 だが、着物の前をはだけてみても出てこない。


「あの〜、私の胸、知りませんか?」


 お母さんと名乗る女の人に聞いてみた。


「何言ってんの絹乃、しっかりして。あんた、絹乃がおかしいよ。どうしよう?」


 振り向く女の人の視線の先には、囲炉裏の前に座る着物姿の男ひとり。


 え、なにその着物。いい感じに年季が入っていますね。レトロ趣味かな? ところどころセンスの良いツギハギがしてある。


 だがすぐに、趣味ではないことがわかってしまったよ。


 この部屋。

 よく知っている雰囲気。実家のお隣の静江おばあちゃんちの昔バージョンのほうみたいですな。


 この古さ。暗さ。薪のニオイ。煙で燻《いぶ》されたような梁《はり》や柱。最近では見ることができない囲炉裏。その上には自在鉤《じざいかぎ》だったっけ? 天井から吊るしてあるカギに大きな鍋がかけてある。さっきから匂っている食べ物の匂いの出どころはこれか。


 とある結論が頭に浮かんできた。


 目の前の女の人も、よく見ると若そうなのに古風な着物を着ている。

 化粧も全然していなさそう。

 なによりカツラのような髪型。


 男の人は⋯⋯。


 ちょんまげです。

 本当にありがとうございます。


 あいむおーらい。

 ざっつらい。


 ここがどっきり撮影スタジオじゃなければ、どうやら私は⋯⋯。


「一つ、質問いいですか?」


 なんか妙な表情になっちゃった、二人とも。


「今年は何年でしょう?」


「あんたぁ、やっぱり絹乃がおかしくなっちゃったよ。天狗様に頭を撫でられたのかも」


 しっけいな。頭はしっかりしていますぜ。

 たまに「お前の考え方そのものがおかしい」とは言われるけど、それは小栗様関連だけだよ。


「で、何年でしょう?」

「⋯⋯卯年だいね」


「えっと、元号は?」

「天保」


「何年ですか?」

「二年だんべ」


 おぅ。見事な群馬弁。

 いや、それは今はメモリのすみに書いとく。


 頭が高速演算をして、年表を思い出す。


 天保二年。

 西暦一八三一年。

 そして忠順暦《ただまされき》五年。


 小栗様は数えで五歳だ。


 私の胸が早鐘を打つ。

 もしこれが噂に聞く逆行転生だったら⋯⋯。


「勝った! 小栗様の幼体に会える!」


 私の勝利宣言に、二人は顔を見合わせて心配そうな顔をしていたが、本人は天井へとどけとばかりに片手を上げてガッツポーズ。


 そこへ水を差すような男の声。


「⋯⋯誰に勝ったん?」


 え⋯⋯っと。


「歴史?」


 しかし、自分も幼体だったのには後で気がついたよ。両親(仮)の前で、半裸の幼女がいばりんぼポーズ。


 こうして私は、転生っぽい状況を把握したのだった。


 ◇◇◇◇


 その晩、興奮が去って、幼女キヌノンは布団の中で考えたよ。


 上州。

 天保年間。

 養蚕農家の子。


 いやいやいや。

 待て待て待てい。


 この条件、どこかで見たぞ。

 というか、ものすごく見覚えがある。


「⋯⋯シルジェネじゃね?」


 口に出した瞬間、背中を妙な寒気が走った。


 シルジェネ。


 正式名称、

『SILKGENESIS 幕末シルク物語』


 インディーゲーム会社【からくり堂】が世に放った怪作である。


 この会社は昔から、「いったい誰に、何を遊ばせるつもりで作ったんだ」と言いたくなるゲームを、懲りもせず世に送り出すことで一部では有名だった。

 そのメーカーの代表作がこれ。


 プレイヤーは幕末へと向かう時代の上州の、しがない養蚕《ようさん》農家の子として生まれる。


 プレイヤーからの評価は、


「農業ゲームの皮をかぶった国家運営ゲーム」

「相場ゲーム」

「人間関係シミュレーター」

「幕末沼人生ゲーム(無理筋)」


 何でもありの化物ゲームなんだけど、最初にできることは、ものすごく少ない。


 蚕《かいこ》を育てる。

 繭《まゆ》を売る。

 小銭を貯める。

 近所の商人と顔見知りになる。


 以上。


 地味です。

 とても地味です。

 

 で、お金貯めたら、そこから先は好きにしろという始まり方。


 生糸商人になるもよし。

 江戸へ出て学問を修めるもよし。

 尊王攘夷に走るもよし。

 何もせず蚕を育ててスローライフするのも自由だ。


 だが、ゲームシステムをしゃぶり尽くした一部の変態プレイヤーは、やがて気づいてしまったんだ。


 人を集める。

 金を集める。

 産業を育てる。

 政治家を動かす。


 そのすべてを積み重ねれば、幕末日本そのものまでひっくり返せる。


 なぜ養蚕がテーマのRPGシミュレーションゲームなのに、そこまでプレイできるシステムなのか? それは⋯⋯からくり堂なので仕方がないのだよ。


 が、今の問題はそこじゃない。


 私は自分の小さくなった手を見た。


 上州。

 養蚕農家。

 天保二年。


 条件が合いすぎている。


 偶然?

 いや。ここまで重なったら、ミスター偶然様も過労死するな。


 だとすればだ。

 私はシルジェネの世界に転生した?


 いや、本当にゲームの世界なのかは分からない。画面も出ない。ステータスもない。さっきから選択肢の一つも表示されない。


 でも。

 少なくとも私の知っているシルジェネと、ものすごくよく似た時代と場所にいる。


 そして。

 小栗様もいる。

 五歳。

 私も五歳とのこと。


 同じ時代。

 同じ年齢。


 ⋯⋯。

 なんだこれ。

 勝てる。

 私、勝つるのではないですか?


 三十年以上あるんだよ?

 小栗様が権田村で斬られる、その日まで!


 時間はあるんだ。

 だったら、地味でもいい。


 養蚕して。

 銭を作って。

 人を集めて。

 できることを増やしていけばいい。

 何度もシルジェネでやったみたいに。


 よし。

 やることは決まった。

 絶対、どんな方法を使ってでも小栗死亡フラグをへし折ってやる!


 ⋯⋯ん? まてよ。

 えーっと。そういえばシルジェネって、確か最初は――。


「⋯⋯いや。なんか忘れている気がする」


 かなり大事なことを忘れている感じ。


「まー、思い出せないんだからしょうがないよね。私は心に大きな棚を持っているから、そこに置いておこー」


 なお、その棚ですが、後ほど盛大に崩れます。

 建てつけわりーな、私。

この作品は七部構成、約80万字を予定しています。

だいぶ遠い道のりですが、約一年をかけて執筆していこうと思います。

そのためのエネルギーをいただけませんでしょうか。

できれば★評価とブクマをお願いいたします。

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