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『絹乃国』〜推しの小栗上野介を救いたい転生幼女、まずは天保の大飢饉から村を救います〜  作者: 天のまにまに
第2章:十匹の約束

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第15話:たった一文、されど一文

すみませぬ〜〜〜

第14話を抜かしてしまいました。

挿入したので見てつかあさい

 前に榮ちゃんの父ちゃんと会った書斎に四人で座る。

 私、榮ちゃんとその父ちゃん、そして番頭さんのような仕事をしているらしい誠一郎さん。


「榮太郎。首尾は?」

「はい。多分、足が出るかと」


 足?

 ああ、採算が取れないということ?


「可能性は?」

「なかなか。ただし売り方次第かと」


「良い方策は?」

「まだ模索中です」


 三人とも真剣そのもの。

 幼女の浅知恵では口はさめませぬ。


 いや、私は幼女は幼女でも、二十九歳児だ。

 知恵は現代知識と学校教育で鍛えてある。

 あまり学校教育は地頭良くならんけど。

 動画とゲーム攻略、それと底辺女子の節約生活で鍛えた科学の子の頭脳をフル回転だ。


「あの〜、ひとつアイデアが」


「あいであ?」


「げふん、思い浮かんだ方法があります」


 三人の視線が痛いっす。


「最初から売れるとは思っていません。だから配るんです。無料で」


 試供品戦術さ。


「使ってくれますかな?」


 誠一郎さんが不審者を見る目つきでこっちを見る。


「使ってもらったとしても、買ってもらえねば丸損になる」


 誠一っつぁん。

 厳しいわぁ。

 可能性を買うと考えての投資じゃね?


 では、秘策を披露しよう。


「木工職人さんに聞いたんだけど、あの人のように村から村へと仕事を探して渡り歩く人に使ってもらうんです。それをしてくれる人に無料であげるの」


「熊野権現様ですか」


 クマの権化?


「熊野大社の歩き比丘尼や御師が、布教のために物売りと同時に御札を配るのに似ているな」


 誠一郎さんに続いて榮ちゃんの父ちゃんが厳かに言う。


「富山の売薬とも似ていますね。先に置き、使った分を後から取る」


 さらに榮ちゃんがあとに続く。

 あれ?

 今さっき、父ちゃんさんの言葉に聞き覚えのあるものがあった気が。


「あ〜〜、布教です! 推し活! えんぴつ、推参なり〜!」


 そうだよ。

 鉛筆の布教活動。

 ↓

 科学の信徒が増える。

 ↓

 金が集まる。

 ↓

 小栗資金完成。

 ↓

 幕府小栗化計画。

 ↓

 横須賀製鉄所完成。

 ↓

 小栗忠順が死んでも、江戸幕府は永久に不滅です!


 あ、これじゃいかん。

 江戸幕府が滅んでも、小栗忠順は永久に働きます!


 やったね。

 完璧な攻略ルート完成。


「では、誠一郎。そのように取り計らえ」


 榮ちゃんと誠ちゃんは、深々とお辞儀。

 私も釣られてお辞儀。

 ふっ、これで大富豪コースも夢じゃないな。


 ◇◇◇◇


 数日後。

 本家から呼び出しがあり、私はいつもの書斎に通された。


「絹乃、結果だ。えんぴつを十本用意し、五人の流れの木工職人や野鍛冶、行商人に使ってもらった所⋯⋯」


 ごくり


「売り物のえんぴつ五本の内、二本が売れました」


 帳簿を持っている誠一郎さんがあとに続く。


 たった、二本かぁ。


「だが、その二本は重い。初見の道具、それに一本五十文も払う者がいるとは。五本中の二本。商売になる」


 え、ほんと!?


「資材の石墨は、そのものより運び賃が高くつきまする。このまま田口まで引けば、一本五十文では到底そろばんが届かないかと」


 誠一郎さんが厳しいそろばんをはじいてくる。

 私はがっくり来たよ。

 売ることはなんとかできた。

 でも作るのに必要な資材を運ぶのに、こんなにお金がかかるとは。

 流通の大事さを骨身に感じたよ。


「輸送賃が軛《くびき》でございます」


「⋯⋯ならば、運ばぬ算段を」


 榮ちゃんが理由のわからないことを言う。

 運ばずにどうやって作るのさ。


「石墨の取れる場所の近くで作らせるのです」


「誰に作らせるのだ?」


「旦那様。岐阜の飛騨筋に強い大店《おおだな》に話をもっていけばいかがでしょう。鉱山の近い場所にて作らせるのです。雪深い農家の冬季の内職にはぴったりかと」


 そうか。

 家内制手工業。

 その手があったね。

 重い黒鉛をここまで運ぶ必要はない。

 岐阜や飛騨の人たちも稼げる。

 田口の取り分は⋯⋯。


「こちらには売り値の一割が妥当か」


「そのくらいでいけるでしょう。販売にも力を貸すとの条件で飲ませましょう」


 誠一郎さんが心強い援軍です。


「絹乃、でかした。田口の新しき収入源になるやも知れぬ。これを取りなさい」


 榮ちゃんのおやっさんが懐から懐紙を取り出し、銭を包んで誠一郎さんの手で私に運ばせた。


「一文」

「不服か?」


 榮ちゃんが続ける。


「絹、二本の売上百文の一分で一文だ」

「一文⋯⋯」


 お金になった。

 私がはじめて、初めて一から行動してお金にした。

 誰に使われるでもなく。

 たとえ知識チートでも、形にしたのは私だ。

 前世の仕事の動画編集。

 技術屋だったけどさ、いつもシナリオ通りに作らないと叱られた。自分の力で稼いでいる気がしなかった。

 底辺女子にはこれが普通だと諦めていたよ。


 でもこの一文は。

 この一文は、私の知恵と行動で形にしたものだ。


「いえ、ありがとうございます! 本当にありがとう。榮ちゃん大好き!」


 よし。この一文銭は半分に割って、天狗様と科学神さまにお供えしよう。

 小栗大明神さまには、この売れ残りの初号機乙型をお納めしよう。


 これで科学教徒が増えていくのだ。

 ん?

 今回も科学使ってないじゃん。

 じゃ、天狗様だけ。

 科学神様、次回がんば!

 期待しちょりますぜ。




 次の日。

 私がお父さんの金槌を借りて試しに一文銭を割ろうとしたら、私の頭が割れるかと思った。

 お父さん、今日も見事なゲンコツ技でした。


あの〜、もしよろしかったらブクマとか評価なんぞをいただけると、頑張って書いちゃうんですが。

第二部、まだ書こうかどうか迷っておりまする。

読んでくださる方が多ければ励みになっちゃうんでよろしかったら、ポチッとな。

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