勇者一行②
”勇者”
その存在はこんな田舎にまで伝わる。
王から命を受け、国の期待を背負い、
強力な力を持つ悪魔の王を討ちに行く存在。
黄金色に輝く剣はその者の聖なる気により自ら輝く。蒼き鎧兜はそのものの慈愛の心により癒しの力を宿した。
今はその黄金色の剣も蒼き鎧兜も付けては居ないが、
それでもこの者の言葉を疑う事の出来る者等居ないだろう。
まだ明け方の事、おそらく少女の叫び声を聞き、
3人の若者が駆けつけた。
私の見える範囲にはいなかった。
30秒はたっていないが救いを求める声を聞き即座に駆けつけた。
沈黙を続ける神とも、恐怖をそこに残していく名を持たぬ神とも違う。人々を救う英雄達。
その頭目とおぼしき男が勇者なのだろう。
ユウリより少し上、二十歳前後に見える若者達。
勇者は我々に襲いかかる男を斬りつける。
男には傷をつけず悪霊だけを斬り裂いたのだ。
気を失った男を皆で抱え、小屋に座らせる。
勇者は私が若い頃、まだ足を痛める前にはあこがれた存在だが、今はもうあこがれる事に疲れてしまった。
「おお!!勇者様、こんな小さな村にありがとうございます。」
村長は勇者の手を取り盛大に感謝の意を述べている。
その手を取り勇者は笑顔を見せた。
「…ありがとうございます。」
小屋に入った後、ユウリは頭を下げる。
私も合わせて頭を下げた。
目は見えなくとも、その存在の大きさは感じる。
おそらくそこにいるだけで並みの悪霊は生まれる事はないだろう。
悪臭に勇者やその一行は一瞬顔をしかめたが、すぐに笑顔に戻る。
勇者の仲間の女性は魔法の力でユウリの傷を治した。
町の方でそういう事が出来る人がいるというのは聞いた事はあったが実際に見るのははじめてだった。
視力を失い4年近く経つ目の方はやはり治っては居ない。
「女の子何だから傷がのこっちゃ大変だものね」
そう言って、ウインクしてみせ、腐った聖水により悪臭のする弟子を優しく撫でる。
ユウリも少しはにかんだ顔をした。
しかし勇者が私に向ける目は冷たい。




