勇者一行①
除霊の緊張感から体がもういうことを聞かないが村長を呼びに行く。
憑かれた少女の縄をとき、弟子には上着をはおらせ一緒に待たせる。
「無事悪霊は追い祓いました。」
関係者は皆、村長のうちに泊まっていた。
村長、少女の両親、各組の代表。少女の家族の組は代表を2人だしている。
夕方より1人増えた。
異臭のする私は最初顔をしかめられたが、それでも皆は少女の無事を聞き安堵しているように見える。
両親は早く娘を迎えにいきたいであろうが私は足が悪く走る事は出来ない。
娘の家族の組の1人が不満を抱いていることはわかる。
唇を突き出し言いたい事を溜め込んでいる。
金の事で揉めたのだろうが村長がたしなめたというところか。
村の金はあらかじめ何かあった時のために貯めていた金。
娘の両親は当事者だが、組のものは我慢して今回の為に金をだす。
もちろん狭い村の事、多少の血縁はあるだろうが、それでも誰もが納得するわけではない。
「臭い、臭い。」
神社の広場に近づくなか叫び声が聞こえる。
私と娘の両親が駆ける。
私はどんなに急いでも大人の早歩きを超えない、それでも引きずる足で懸命にかけた。
私の弟子は、ユウリはとりつかれていた少女の強い平手打ちで姿勢を崩し頭を木にうちつける。見えぬから距離感がつかめない。地面に手をつこうとして、右の手を出し、そのまま顔の右側を木にぶつけた。
頭に血がのぼりかけたが足の悪いものには怒ることも許されない。
ずっとそうだった。
私が残っていれば。
後悔するがもうおそい。
広場から村長の家は比較的近く、道も良い。ユウリ1人でも行けない事はなかった。
除霊前の村長達の訝しげな視線を思いだしてしまったのだ。
娘が再び取り憑かれたわけではない。
混乱しての事。
娘は怯え泣いていた。
娘の両親は怯える娘を抱きしめる。
娘の両親は血を流すユウリを見もしない。
娘の両親の立派な目は、目が見えず血を流しながら、起き上がろうとする、私の弟子をみていない。
私はなんとかユウリの元にたどり着く。
「ユウリ」
私は弟子に静かに呼びかける。
怒りを悟られてはいけない。
足の悪い師匠と目の見えない弟子が怒れば、相手に非があろうとこちらのせいになる。
そうなればこの仕事さえ続けられないかも知れない。
「待て!」
村長の叫びが聞こえる。
私は振り返る。
金を払うことに不満気にしていた男。
彼は棒を持ち我々の方に向かう。
嫌、ユウリの方へ。
彼には悪霊よけのおまじないをしていない。
不満の感情を利用された。
目の前で私の足の悪さや弟子の見えない目。
それを見て箍が外れた。
ユウリはキョトンとそちらを見ている。
耳の良い彼女は村長の声色からおおよその自体は把握しているだろう。
私は弟子に覆い被さった。
この子を守る。2〜3発殴られても他の者が止めてくれるはず。
けれど痛みはいつまでもやってこない。
私の後ろ。
「低級なモンスターじゃ大した経験値にはならないけれど、僕は勇者だ。放ってはおけない。」
そう聞こえた。
以降、お待ちかねの悪霊退治に300万の大金を要求する自称霊能力が勇者に懲らしめられる回につづく




