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悪霊退治に300万!!?勇者なら一太刀で終わります。   作者: sisousi.kenta


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除霊①

縛られた少女は暴れようとするが動けない。

「元に元に、前に前に、山に山に、河に河に、わにわに。」 

弟子は唱える。弟子は唱え続ける。

霊力の宿った、絹衣は私が着せた。


赤い顔をする弟子だが、特殊な衣服でもあり、目が見えぬままでは着る事は難しい。

装飾の一つ一つに祈りが込められる。


私も彼女を守るように祈りを込めた。

悪霊退治には危険が伴う。


「えんっ、えんっ、らつ、らつ。恨みは消えぬが恨みは持たぬ」


私も伝わる呪文を唱え、少女に聖水のしぶきをかける。


「元に元に、前に前に、山に山に、河に河に、わにわに。」 


弟子は更に繰り返す。弟子の言葉は世界の理を説明する。

元は元であり、前は前であり、山は山なのだ。

だから悪霊は本来の霊へともどる。

神がそれを信じさせる。


「えんっ、えんっ、らつ、らつ。恨みは消えぬが恨みは保たぬ」


私は更に続ける。

最後の言葉は同じまま意味が変わる。

恨みは消えない、しかし保たない。


術を試した者の解釈に過ぎない。

私は師匠から教わったに過ぎない。

しかし実際に悪霊は苦しむ。

言葉が本当だと知っているからだろうか。


心を死後まで保持し続けるなど、よほど負担なのだろうか。恨みや強い感情だからなんとか表面だけのこった。


悪霊になる時には永遠に恨むと決め、

なぜ恨むにいたたったかを忘れてしまう。


「ゔぅぅぅ、ゔぅぅぅ」

少女からは低い声が漏れる。

この少女もきっと何かを溜め込んでいたのだろう。


悪霊は自分の事情でなく少女の事情により恨む。

恨みがなければ現れることさえできない。


せめて自分の事情で恨むならば。


自分の恨みの事情さえ取り上げられた悪霊は世界に不幸が満ちることを待っている。


「元に元に、前に前に、山に山に、河に河に、わにわに。」 

「元に元に、前に前に、山に山に、河に河に、わにわに。」 

再度繰り返す呪文は悪霊の力を奪うもの。

私は少女に聖水をかける。


1時間がたった頃だろうか、聖水に触れた指にかすかな痛みが走る。また聖水は異臭を放ち始めた。


「ユウリ、再度聖水を作ります。あなたは祈りを続けなさい」

私は弟子に指示をだす。

静寂をつめこんだ聖水は恨みを吸い取り腐りだす。

新たな聖水を作る間は弟子が祈りをつなぐ。


「元に元に、前に前に、山に山に、河に河に、わにわに。」 

弟子は語気を強め呪文を唱え直す。

彼女の力はまだ弱い。

だから1人で唱える不安を抑えるために語気を強めたのだ。


彼女が弱いのは私の厳しさが足りないから。

目の見えない弟子に厳しくも出来ない。

その方法を知らない。


なにより、本当は、この娘の将来を考えるたびに私は胸が締め付けられる。


悪霊退治など長生き出来る仕事ではない。

私が死んだ後この目の見えない弟子はどう生きれば良いのか。


器量のよい娘、しかし目が見えない事はその器量の良さを分かりにくくする。

村長の訝しげな目は今も忘れられない。


優秀な術師になれば、1人でも生きる道もあるのだろうか。


私の体が弱り始める前に、いっそ凶悪な悪霊に負け2人死んでしまえば・・・。 


私は悪霊退治の中、頭に浮かぶ悪い未来を振り払うことが出来ない。


除霊はつづく。




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