麓の村の縛られた少女
山を越えてからは私は直接弟子の手を引く。
娘は照れくさそうにするが、目の悪い弟子と足の悪い師匠のこと2人伴に歩まねばならない。
いやこれは私のわがままなのだろう。
彼女の目の悪さを直視したくない。
私が助けられなかった彼女の家族、彼女自身も光で目が焼かれた。
私の走ることは難しいという怪我とはわけが違う。
村に入ってからは道が良くなる。私は弟子の手を離し、村長の家を訪ねた。
足の悪い私と目の悪い弟子、悪霊退治をする者はどこかしら悪い部分を持っていることが多いとは村長も知っているだろう。
それでも一瞬怪訝な表情をのぞかせる。
いつもの事ではあったが、値踏みされる事には未だに慣れない。
また緊張にもつながる。
山の麓の小さな村には神社があるが宮司はなく、神主もない。
宮司のない神社はそれでも村の広場としては機能しており、そこに向かいつつ道中、幾つかの家から関係者をあつめる。
村に20軒もない家、それでも3、4 軒づつ固まり組を作るのは、ささやかでも助け合わねばいきられぬ山の生きづらさゆえであろう。
私は悪霊退治の道しか選ぶ事はできなかったが、皆それぞれがそれぞれにやっとの思いをし生き、暮らしていくのだ。
私と弟子の生きづらさも僅かな余力が人よりほんの少し少ないだけなのかもしれない。
それは安心でありつつも、せめて弟子だけでも穏やかに暮らしてほしいという願いの叶いにくさをどうしても実感させる。
早朝から出発したとはいえ、既に夕暮れが近い。
どの家にも忙しくしている者はない。
忙しくすることさえ余裕がある者がする事。
それ私は足を悪くしてから知った。
我々だって今日10時間以上かけゆっくりと隣の村に来た。
山で生きるとはそういう事である。
それでも・・・、それでも1から街で生き直すよりはまだ生きやすい。
私のように足が、弟子のように目が悪くなくとも、やはりそれも皆そうなのだろう。
「術師様、こちらでございます。」
広場に着くと村長はそう言って私を案内する。
村に悪霊が現れた。
とりつかれ少女は暴れまわり、誰も手に負えない。怪我人も出ておりなんとかしてほしい。
それが今回の依頼だ。
悪霊退治の費用は300万だが村から100万、組から50万、少女の家から150万という所だろうか。
全てを少女の家には背負わせない、助け合う。
急に困ることは誰の身にも必ず起こる。
だから助けるのでなく助け合う。
生きるとはそういう事なのだ。
案内された先、広場の小屋の近く、可哀想だか少女は木に縛られている。
昼の暑さもあり今は項垂れて、いや、きっと気を失っているのだろう。
誰もどうすればいいか分からず縛られたまま放置された少女。
私の弟子よりも少し若く10歳を少し超えたあたりだろうか。
一応水と食事はあるが、満足には取れてはいまい。
我々は皆に悪霊よけの簡易的な呪文をかけたあと悪霊退治の準備を開始した。




