王の願い③
私は小夜様の事は父や師匠から聞いた話が大半だ。
本家には私より7つか8つ上の娘がおり、足が悪く私が8つの時に私の師匠の師匠に預けられたらしいという事は知っている。
本家でも足の悪い小夜様をあまり表には出さなかった。
数度見かけた際は、杖をついても今の目の見えぬ私より遅くしか歩けなかっただろう。
そこそこに繁盛する店ではあったが、娘である小夜様が店番をなさる事があったのは足の悪さが関係している。
稽古事をさせても無駄になるが、かといって何もさせなければ居場所がない。
「やはり、足の悪い娘では皆訝しみ、売り上げはおちるか」
本家と分家とはいえ別れてからの歴史は浅い。
小夜様の父上が私の父に漏らしているのは何度かきいた。
跡取りである蓮様の為、また家の為、悪評や不評になりかねない小夜様は除霊師に預けられた。
小夜様は年に何度がお帰りになる。
私と違い、私の師匠に直接手を引かれる。
それでも年末年始等数度見た程度。
蓮様が亡くなられた事が始まりだった。
私は王に蘇生術の秘密を話す。
「勇者の魂はもう死者の世界に旅立ちました。ですが世界には生命誕生の力があふれております。蘇生術を行えば命の精霊が新たな魂を授けてくれるでしょう。そうすれば身体は数日で元にもどります。ですがそれは勇者の力と記憶を引き継いだ別の魂をもったものになります。」
記憶だって能力だって同じ、同じ性格、それらは脳や身体のもの。
では魂は何を持っていくのだろうか。
魂が持っていくものを精霊だけがしっている。
悪霊とはきっと激しい後悔と恐れが記憶を持っていく事を拒んだもの。
私は師匠から引き離された後、死霊術師の才能が見つかり魔術師達の通う学園に通う。
けれど私は出来損ないだった。
皆は今を生きる人々を助ける魔法をつかう。
私は死者の冥福を祈る事しか出来ない。
そして蘇生術。
私はずっと嫌われものだった。
畏れられ、怖がられ、悪と決めつけられる。
小夜様は、そしておそらく生まれなかった小夜様と師匠の子はカラカラサラサラと唄う。
私は死霊術師という王でも無碍に扱えない身分になっても小夜様と呼び続ける。




