王の願い①
王が私を見つめているのがわかる。
争いを好まぬ王。
かつては争い、幾つかの国をまとめたが、彼の周りには驚くほどに精霊が存在しない。
そして私にとっては憎き勇者、その父。
まだ40をいくつか過ぎたあたりだろうか。
王は悪霊退治をしない。
まだ死と向き合わず、それを考えるにとどまる。
悪霊退治に身を置くものは50までは生きられない。
私の師匠は25の時にはもう死を見つめていた。
私を一人前にし、次の弟子を半人前に。
そうしてようやく余生にはいる頃にはもう悪霊退治にすり減らされた寿命はわずか。
それさえ、悪霊に殺されず上手くいったなら。
また悪霊退治に失敗しなかったなら。
弟子をさらに多く取る余裕もない。
私が師匠と引き離された翌日、師匠の何かについばまれた無惨な水死体が上がった。
原因である勇者達が悲痛な表情をしていた事は声色で察せられる。
お前らのせいで。
けれど私は感情を表に出さないように教わっている。
勇者達の機嫌を損ね、置き去りにされれば、いや、手頃な場所に預けられれば目の見えぬ私に生きる道はなかった。
勇者のお膝元まで同行した上で勇者がよく頼んだ上で預けられる必要があった。
今も私は感情は少し微笑む程度。
「そなたはかつて秘術により勇者を生き返らせたと聞く。再び、その力を示してくださらぬか?」
秘術を使うものは神の使い、王といえども無碍に扱う事は出来ない。身分のある者ほどそのように考える。
実際に考えて居なくともそのように振る舞う。
そして私に、私の最も憎む男を蘇らせよとねがう。
私はやはり、見えない瞳でまっすぐに王をみつめる。
びいん。
悪霊退治のときと同じ、静寂が音を発する。
師匠は我々の祈った名も無き神の正体を知らない。
私は知っていた。
「それは出来る事ですが、出来ない事でございます。王には話を聞いた後もう一度決断して頂きますようお願い致します。」
私はそう答えた。




