永遠の別れ②
ユウリはあの時泣いていただろうか?
あの娘は声をあげて泣く事はほとんどない。
私がそのように教えた。
私も先代からそう教わった。
泣けば誰かが助けてくれる?
違う、みっともないと侮られるだけだ。
人にも、霊にも、神にも。
笑いも、怒りも同じ。
弱い者は感情を出してはいけない。
2人の時の以外は薄く浮かべるにとどめないといけない。
どっとはらいで物語が終わるのは、
目が見える人だけ。
私は早朝追い立てられるように村を出る。
「同じように体に不自由を抱える身、どうしてこの子に優しくしてやれなかったんだ・・・。」
勇者は出ていく私にも多少の憐れみを向けつぶやいた。
私はユウリより先に死ぬ。
だからこの子に多少なりとも生きるすべ教えねばならなかった。
私はユウリが最後の最後に、”先生!”
とでも言って声をかけてくれる事を期待したのではないか。
私のほうから手を離したというのに・・・。
勇者は西へ、私は東へ。
無言の別れ。
私は家に帰る。
今後は1人で除霊を行わねばならない。
養うことは厳しくとも弟子は2人取るべきか。
それとも1年か2年だけでも先に目の見えない弟子を取るべきか。
弟子の事を思った事で私の瞳からは涙がこぼれる。
私は25、悪霊退治は50までは生きられず、40を超えてからはいつ体が動かなくなってもおかしくはない。
もう新たな弟子をとり始めねばならない。
今回300万を得られなかった事で、次の道具を買う資金も無い。
絶対に必要な物を残し、必要な物を売るしかない。
仕込み刀になった杖。
まだ経験の浅い勇者になら勝てたかもしれない。
そして力を見せたが最後誰からも避けられるようになる。
私は河を覗く。
ユウリと彼女のつけるタニシの御守り鈴の事を思い出していた。
先代の本当の内弟子は死んでいる。
私は外弟子、本当の内弟子の小夜は・・・。
そこまで思い出した時だ。
背中に強い衝撃が走る。
「よくもだましやがったな」
あの村の住人に後ろからなにかで殴られる。
これまでも狙われた事がないではない。
悪霊退治にそれ以上に金がかかるだけであり、300万は人の心をまどわす大金だ。
けれども勇者一行であれば僅か1泊の代金を貰うことも躊躇するような手間なのかもしれない。
男に悪霊がついていれば気づけた。
この男は悪霊に憑かれたわけでもなく自ら私を殺す。
1発目で背中を叩かれ手をつく、2発目で肩を。
3発目で頭。 腕も折られた。
そして、私は河に投げ込まれる。
河の底は悪霊達の世界。
悪霊達は今か今かと私が死ぬのを待っている。
悪霊の中には見知った顔もいくつかある。
厳しい生業、世を恨む同業者は多い。
小夜とおそらく生まれる筈だった子が私の壊れた足を引きずる。
絶望のまま死ねば悪霊となる。
私が悪霊になれば村を滅ぼしてしまうかもしれない。
もう同業者はあの村には近寄るまい。
また都合よく勇者が通りかかることなどそうある事でもない。
私はユウリが私から引き離された事を思い出し絶望しそうになる。
”自分で手を離したくせになんと都合が良い”と私が私を責めたてた。
だから私は最後に助手をこの道から遠ざける事が出来た事を思う。
それで全ての思いが晴れるなんてことはけしてない。
それでも息が出来ず、すでに苦しい事すら感じなくなるなか私は最後の最後の力を振り絞り笑った。
悪霊達は悔しそうにしている。
第二部 ユウリ編につづく。
これまでお読みいただきありがとうございます!
第一部師匠編はこれにて終了となります。
師匠はなんとか悪霊にならない道を選びました。
どっとはらいで物語は終わらないという師匠が最後に笑顔をみせる。
小さな勝利と言えるのではないでしょうか?
第二部は弟子ユウリが主役です。
彼女の頑張りにご期待ください。




