永遠の別れ①
勇者なら一太刀で終わるような悪霊退治に300万もの大金を要求した私は勇者に裁かれる。
私は弟子と2人がかりで、悪くした足で山を越え、訝しげに見つめられ、魂をすり減らし、高価な道具をつかいようやく悪霊退治を行う。
それが勇者には一太刀で終わる。
勇者にとっては私から取り上げた300万を返すための方便として、この村に1泊するだけの労力でしかないのだ。
悪霊退治の際の腐った水により、悪臭のする私は水をかけられる。
私は縛られ納屋に入れられた。
一応拘束は解かれたが、見張りは立つ。
そもそもこんな足ではどこにも逃げられないというのに。
弟子は勇者とともに村長宅に泊まる。
勇者の仲間の魔法使いの女性が世話をしてくれるのだろうか。
私は私の今後について考えたかったが昨日の早朝からの山越えと除霊による疲労の為、すぐに眠りに落ちてしまう。
ひょっとするとこれは、悲惨な未来を想像しない為の最後の自己防衛なのかもしれない。
もうこの村では商売はできまい。
ではこの村に悪霊が出たら・・・。
私はなんの答えも出ぬまま眠りに落ちていた。
夜中の事、私は納屋の戸を開く音に目をさます。
私は真っ先に弟子の顔を見る。
彼女の無事を確認する。
私のくせのようなもの。
見えない目で知らぬものに囲まれ不安がってはいないか。
明らかに顔色が悪い、確かめるまでもなかった。
我々は2人で一つだった。
片割れが軟禁され不安にならないはずはない。
何もしてやれなかった弟子に、街から来た勇者一行が私の欺瞞を暴く。
私は見捨てられたのではないか?
そう考えないわけがなかった。
ようやく私は戸に立つ者を見る。
私の弟子の周りには勇者一行と村長が立っている。
勇者の仲間、魔法使いの女は言う。
「この娘はまだやり直せる。あなたのようになる前に私達が責任を持ってこの娘を街に届ける。それでいいわね?」
確認の体を取った命令である。
弟子は見えない瞳で私を見つめる。
私に縋っている。
私達は互いに縄で手を繋ぎ、山を越えてきた。
死の世界では、男女は手を離せば2度と巡り合う事は出来ない。
ただの言い伝えだが目の見えない弟子と足の悪い私では本当になりかねない。
なぜ縄で手をつないだのか。
直接手を握れば2人離さねば手は離れない。
縄ならば片方が手を離せば終わってしまう。
弟子はきっと今強く手を握っている。
見えない縄の片方の先。
私はそっと手を開き、縋る弟子から目をそらした。
話のなかで少し浮いていた縄の伏線が回収されました。
次回 第一部 師匠編の最終回。




