Scene 7(Side-F)
別にアンジェラ嬢を探そうとしたわけではない。どちらかといえば、チェルシー嬢の方が気になっている。
だが、チェルシー嬢はたいてい、あのクズ王子と一緒にいるか、何故かアンジェラ嬢の近くにいる。
またアンジェラ嬢に何かしら仕掛けようとしているのかもしれない。
別に、それを俺が止めてやろうとか、そういう偉そうなことを考えているわけではない。でもあの茶番を見ずに済ませられるのなら、その方がいいだろうなとは思う。
そして、やっぱり予想通りだったらしい。今日もチェルシー嬢がアンジェラ嬢に近づいていくところを見かけた。
アンジェラ嬢の方は、友人の令嬢方と談笑しながら歩いていて、まだチェルシー嬢に気が付いてないようだ。
チェルシー嬢はアンジェラ嬢の前に立つと、自分の足元にバナナの皮を落とし、それをわざと踏んで盛大に滑って転んでみせた。
は?
一体何をやってるんだ?
アンジェラ嬢は突然の出来事に驚いていたが、すぐにチェルシー嬢のもとへ駆け寄った。
「チェルシーさん、大丈夫ですか!?」
差し伸べられたアンジェラ嬢の手を振り払うと、チェルシー嬢は両手を顔に当てて泣き始めた。
「ひどい! アンジェラ様があたしを……!」
……はあ!? 全く意味がわからない。自分でやったんじゃねーか。
「なあ、なんだあれは?」
エディも思うことは同じらしい。
ったく、あまりにも馬鹿らしくて見ていられねえ。一生懸命泣き真似をしているチェルシー嬢にそっと歩み寄った。
「お嬢さん、こちらを落とされましたよ」
チェルシー嬢に踏みつぶされてぐたぐたになりかけているバナナの皮を手にし、そっとチェルシー嬢の手に握らせた。
ちょっと嫌そうな顔をしたが、拒否はさせない。
「大丈夫でしたか? ご自分で落とされたバナナの皮にご自身で滑ったようですが……」
この光景を見ている周りの学生たちにもわかるように、一字一句説明するように言う。
「だ、大丈夫です! 失礼いたしました!」
チェルシー嬢は怒ったように言って立ち上がると、バナナの皮を握り締めて去っていった。
周りで足を止めていた学生たちもそそくさといなくなり、この場に残ったのはアンジェラ嬢といつものご友人令嬢方、そして俺とエディ。
「助かりました、ありがとうございます」
アンジェラ嬢は俺たちに礼を言って軽く頭を下げた。
「ああ…… えっと、災難でしたね。あれから、他にもこのようなことが?」
エディが尋ねると、アンジェラ嬢は困ったような表情になった。
「……貴方方が言ったように、できるだけ友人たちと一緒にいるようにしてよかったと思っています」
否定はしなかった。やはり、それだけの何かはあったんだろう。
「友人たちが一緒にいるおかげで、今まで感じていた違和感が私だけの思い込みでないということに気付けました。私も、もう少し強くならなくてはと、そう思っています」
アンジェラ嬢は、俺たちに向けてきっぱりとそう告げた。




