魔術
あれから…私は森を出てギルドに向かった。
目的としては真実と、依頼を達成することが不可能なことを話すため。
あの森で死人が出ることはもう無いだろう。
ふと、歩いている時に不思議な感覚を持った。
「掌に何かが集まってきた?」
しばらくしてその可能性に行き着いた。
「魔術を習得した…!?」
そう、恐らくだが賢者は私に託したのだろう。
自身が持っていた魔術を。
どうやって使うのか等はまだ分からないが、依頼を受けた時にでも練習してみよう。
そうしてギルドを訪れ、全ての事の顛末について話した。
「そうだったんですね。だとしたら賢者は誰に殺されたのでしょう?」
「それは殺害した本人しか分かりませんね。」
賢者を殺した犯人とは、きっといつか戦う時が来るのだろう。そんな予感がした。
「というか、依頼の達成が不可能であったとしても、賢者による無差別殺害を解決させたなら昇級出来ますね。」
「出来るんですか?」
「えぇ。この事はかなり扱いに悩んでいたものだったので。」
「そんな大事なことが何故Eランクも受けられる依頼になっていたんでしょう?」
「うーん。それは上に聞かないと分からないですね。」
その疑問は、今後の謎を全てを理解するための種であったと、この時は知るよしもなかった。
「まあ取り敢えず波さんはDランクに昇級です。」
「あれで1段階ですか…。中々厳しいですね。」
正直2段階は上がると思ってたので、少し悲しい。
「まあギルドもそんなに一気に上げることは余程の事が無い限り出来ないんですよ。」
「そうなんですね。まあ、ありがとうございます。」
もうこの街で出来ることは殆ど無い。
となれば、新たな街に向けて移動しよう。
そうしてギルドを出て、この街を北に進んだところにある、『タマナト』に向かうことにした。
港街を出て、30分程歩いたときだった。
「あれは…。」
馬車が4体の魔族に襲われているところを見た。
「震斬!」
全速力で向かいつつ、ある程度のところで震斬を放った。
攻撃に気づいたのか、その魔族達は私の方を向き、迎撃しようと構えていた。
しかし、今の私にはこれがある!
そうして私は目の前に魔法陣を展開し、魔族に向かって閃光を放つ。
あの人のに比べれば劣る速度と威力だが、そこらの魔族相手にはかなり強いものであった。
実際魔族はそれを避けることが出来ず、倒れている。
これで残りは3体になった。
「次はこれを試そう。」
そうして再び魔法陣を展開するが、展開したのは魔族達の足元だ。
「爆発しろ!」
そう言った時、魔族の足元は突如爆発し、全員地に伏せた。
「大丈夫ですか?」
私は馬車に近づき、乗っていたお爺さんの安否を確認する。
「えぇ、助けていただきありがとうございました。」
「いえ、ここを歩いてる時に偶然見かけたので助けただけです。」
「ここ周辺を歩く?もしやどこかに行かれるのですか?」
「え?はい。港街の北にある『タマナト』へ行こうと。」
「『タマナト』ですか!?あそこは止めた方がいい。」
はて?何か事情があるのだろうか?
「何故でしょうか?」
「あそこは今魔族が住み着いています。あそこはもう、人間の住める国ではありません。」
魔族が住み着いた国…。つまり国が魔族の侵攻を止められずに全滅したということか。
「私は行きます。それを知って止めようという気が失せました。」
私は元剣聖として、国を滅ぼした魔族を放っておくことは出来なかった。
「なんと…!正気でございますか!?いくら貴女様が強くても、数千を超える魔族の軍には勝てませんぞ!?」
「それでも、です。私個人としてその現状を治したい。そう思っただけなので。」
「そうですか…。であるならば、勇者様に協力を求めるのはいかがでしょう?きっと上手く行きますぞ。」
「勇者?」
勇者といえば、転生前の世界で人類最強と呼ばれ、魔王を倒すために冒険していたあの男のような者のことか。
「えぇ、勇者様です。もしや知らないのですか?」
「知ってはいるけど全く分からないね。」
「…貴女様は色々と苦労なされたのですな。」
「まあ、それなりに。」
うーん。それにしてもあんまり勇者と関わりたくないな。
でも、協力してくれれば確実に国を取り戻せそうなんだよなー。
まあ取り敢えず勇者の確認だけはしに行こうかな。
それで良さそうだったら協力してもらおう。
「で、その勇者は今どこに居るか分かりますか?」
「ええ、今はここから西にずっと進んだところにある、『シラツキ』に居るはずですぞ。」
『シラツキ』か。
次の目標は国の奪還として、まずは勇者の確認か。
「色々とありがとうございました。いつかまた会いましょう。」
「えぇ、貴女様のご活躍を楽しみにしております。」
そうして私は『シラツキ』に向かって歩き出した。




