タイトル未定2026/08/19 01:30
「やぁ、有間廻くん。私はアサシン。サーヴァントといたら厄介だから、分けさせてもらったよ。
あぁ、でも安心して。私は人を殺す趣味はないんだ。それに殺せるか怪しいし。
で、君に話があって」
暗闇の中からの声だった。声を変えているのか変な濁声だった。
「…なんだよ」
酷く怯えていたのを覚えている。
「共闘しないか?」
「なら、俺とセイバーを分けなくてよくないか?」
「いやぁ、私は弱いんだ。いくら工作したって負けてしまうのだよ。本当だよ?君にだって負けてしまうほどだ」
「いや待て、そういや、なんで俺を知ってる?それにここはどこだ?」
この闇と喋っているうちに、話の間に笑みなど入っていて柔らかいからか、少し、頭が冴えてきた。
「え?そんなのパソコンでちょちょっと。あと、君とサーヴァントを分けた方法は、ミスディレクション的なあれだよ。さぁ、全て答えたよ。共闘する?」
「本当の声も聞いてないのにか?顔も見てないし」
「君はなんていうか、豪胆だなぁ。…しょうがないなぁ」
そう言うと、暗かった部屋に急に灯りが点いた。眩しくて最初、目を開けれないでいる。
数秒経ち、目を開けた先にいたのは、歌舞伎の化粧をした大男だった。しかし、体は細身であった。
「折角だ。真名まで教えてあげちゃおう。私の名は石川五右衛門。聞いたことくらいあるだろう。私がいればこの聖杯戦争、絶対勝てるぞ。さぁ、どうする?」
声は低い男の声だった。
「聖杯はどうやって分けるんだ?」
「何言ってるんだ。共闘は最後の二人になったら終わりさ。デスマッチの予約に似てる」
なるほど。潔い。逆に信用できる。それに、今までのこいつの言うことが本当なら、タイマンになれば勝てる確率は高い。
「セイバーが必要だ」
「いないと決められないってのか?子供じゃあるまいし」
「何も知らないんだ。子供と同じだよ」
「あっそ。…まぁ、着いたみたいだしいいかぁ。殺さないでよ?」
石川五右衛門が指を鳴らすと真っ暗だった部屋に明かりが灯る。
俺は石川五右衛門の顔を見ようとした。
しかし、どこにも人間の姿はなく、ただいつも通りの風景が窓を通して見えるだけ。
「——————後ろを向いちゃあダメだよ」
不意をつかれた。反射で後ろを向こうとするも、理性がなんとか抑えてくれている。不思議なことに汗が出たり、鳥肌がたったりすることはなかった。
あっちは俺を殺さない。そんな勝手な理解があった。
煙草を吸っているのか、煙く、臭い。
その匂いがやまないので、ずっと俺の背後をとっているのだと思った。
キュロスが普通にドアを開け、やってきた。ここはどうやらどこかの会社のオフィスらしい。
キュロスが部屋に足を踏み入れたその時、殺気が部屋中を覆った。間違いなくキュロスのものだった。
何者も寄せ付けないような、そんな殺気だった。仲間である俺が、その殺気で失禁しそうになる程だ。
そういえば、煙草の匂いがしないと気づいたのは、
「マスター、警戒しろ」と言われたときだった。
いきなり窓が割れた。硝子が散らばる中、一本の赤い棒がこちらに向かって伸びてきた。
キュロスは足音もなく、俺な近づき、抱え、棒を間一髪で躱した。棒の影がキュロスを覆う。
キュロスはたった一度、踏み込みをすると、窓を突き破り、棒が伸びている先へ突っ込んだ。
ここはどうやら20階ほどあるビルの最上階らしく、棒の末端までは遠く遠く離れていた。
その距離、キュロスは空を蹴り、一瞬で潰したのだから驚いた。空気抵抗で俺の顔が剥げそうになった。
いやしかし、俺がずっと考えてるのは石川五右衛門は一体どこへいったということだけなのだ。
下に時南先輩がいるとか、そんなことよりも気になって仕方なかった。
その理由は明白。この先、もし本当に聖杯を求めて争うとして、ただの勘だが、あの石川五右衛門とやらが絶対に厄介になっていくと思った。
「キュロス!逃げよう!」
「はぁ!?逃げるだと?今、狩れるチャンスなんだぞ!」
「いやダメだ。逃げる。アサシンがいるんだ!」
「あー。アサシンか。なるほど。いやしかし、アサシンも一緒に狩ってしまえばいいのでは?」
「いいから。令呪使うぞ脳筋」
はぁ、と溜息を吐き、仕方なさそうに空を蹴り、その場を退いた。
無論、ランサーは追ってくるが、一つ考えがあった。
「アサシン!聞いているか!協力してやる!だから、力を貸せ!お前ならこの場、なんとか納められるんじゃないか」
大声で言った。
すると脳に直接語りかけるように、
「よしいいだろう。でもなぁ、ランサー呼んだの私なんだよなぁ。面倒くさいなぁ、処理」
「は!?お前が呼んだんかよ!いやもういい。なんとかしてくれ!俺らは今は逃げる!」
「?何故だ。私が味方につけば2対1だろう?」
実はまだ、覚悟ができていなかった。それに、もし殺し合いをするとして、体力を温存するに限ると思った。キュロスも石川五右衛門と同じことを思ったようだが、このことを言うと突っ込んでいきそうなので有耶無耶に誤魔化した。
「まぁいい。逃げるのは私の得意分野だ。じゃあな、廻」
突如、背後に黒いマントが宙に浮いて、影から石川五右衛門が出てきた。
伸びてくる棒に対し、奴は避けずに喰らった。かと思えば、棒が貫いたはずの奴はマントで、肝心の奴は棒の上をスタスタと走っていた。
華麗に跳んでるようにも思えた。
石川五右衛門
「さぁ、相対しようか、孫悟空」
そう言うとアサシンはマントで身を隠し、姿を消した。
時南
何やら怪しい封筒がポストに入っていて、来てみればこんなことになって、しかも手紙を出した側の奴が敵になっているなんて、とんだ喜劇ね。
しかし、悟空は舌舐めずりしては、したり顔でずっと全てを見透かすような目をしている。
「ねぇ、悟空。この勝負、今やったら有間くんの思う壺よ。私たちも退きましょう。アサシンが何をしてくるかも分からないし」
「確かに。セイバーは逃げ、アサシンは消えた。何をしでかすか分からない中、闇雲にこっちだけ臨戦体制ってのはいたたまれねぇ。
——————が、」
ランサーは時南に向けて棒を突いた。
「闇雲ならの話だ。お前、誰だ!」
澄ました目から一転、完全に狩る側の目になった。
時南の側が捲られていく。中から出てきたのは焦って汗を垂らしながらもポーカーフェイスを維持しようとしていたアサシンだった。
「嘘だろ。私の変装をどうやって…」
「俺の目にそういう小細工は通用せん。残念だったなアサシン。次の聖杯戦争に期待することだな」
「はっはっは。まだ、ショーは終わってない」
血を口から垂らしながらも、飄々と言ってのけた。
「ここから何かあんのか?やってみろっ!」
棒をさらに深く突き立てる。
「いくらでも、あるさ。例えば、そうだな。お前を驚かせてその隙に逃げて見せよう。
——————私は全てを知っている。どうだ、驚いたか?」
「全く。殺す」
「いやいや、まだまだ。いいか、言うぞ。お前の真名は孫悟空だ」
「なぜ、真名を」
「お、少し顔が歪んだか」
「いいや、全く」
「もう一つあるぞ!」
「なんだ」
「お前は、カメハメ波を撃てない」
「そうか、死ね」
「そして、もう一つ。これはお前とは関係ないんだが、私が呼んだサーヴァントはお前らだけじゃあない」
「?」
「全員さ。どうなるかなぁ。まず、私を殺すかい?でもさぁ、その隙を今、虎視眈々と狙っているやつがいーるかーもよぉ。私の真名を教えてやる。ゾロだ。はっはっは。殺してみるかい。今にお前も死ぬ」
「殺してから考えよう」
「マジか。じゃあもう一つ、私を殺すと君のマスターの行方が分からなくなるぞ。私が隠したんだ。当たり前だろ」
「自分で探す」
「頑固な男は流行らねえぞ」
ランサーがアサシンの土手っ腹を貫く寸前、音が聞こえた。
禍々しい音色だった。聞いてるだけで腹が立つような、いやもっと凄まじい悪、蛆虫が体中に湧くような…悪夢を聴くとしたらこういう音だろう。
アサシンは空中で棒を鷲掴み、ランサーを蹴り飛ばした。
地上、普段は車通りの多いはずの道には誰もいない。
がらんとした様相に一人、笛を吹く、とんがり帽を被った何かがいた。
人間とは言えなかった。誰が見ても一回は悪魔に見えてしまうだろう。
「殺戮ですぅ。頼みましたよ。アサシン。いや、ゾロ」




