タイトル未定2026/06/12 20:33
=======2026年8月7日 ========
俺らは最初から負けていた。死ぬ運命だった。今、こうやって死ぬために生まれてきた。怒らせてはいけなかった。怒らせてはいけなかった。あぁ、まだ、まだ憤っている。悪戯に人を殺している。なぜ、俺は産まれてきた。おもちゃになるためだったのか。母も、友も、先輩も、あいつも死んだ。俺は生きてる。俺は生きてる。俺は生きてる。なんで生きてる。苦しい。怖い。怖い。怖い。死ぬのが怖い。だから、生きるのが怖い。なぜ、なぜ俺は産まれてきた。誰か、殺して。過去より、愛を持って殺してくれよ…。何も、見たくない。動きたくない。逃げたい。辛い。生きたい。死にたい。あぁ、また人がたくさん死んだ。俺は、俺は、どうしようもなく人間だ。
——————2026年6月10日——————
男は飛び上がるように起きた。
「おう!ようやく目覚めたか、我がマスター!」
「ん?———あっ!あっ、俺の足っ、身体!———ある…。ある!?あれ、右が暗…あ、夢じゃ、なかった。いや、もしかしてまだ夢…」
「現実だ。随分と寝てたぞマスター。死んだかと思ったわ」
「え。いや、は、俺、生きてる?」
「よかったな。大江というたまたま出会ったやつに救われたぞ」
「だ、れ?」
「まぁ、兎に角、命があってよかった。わっはっは!」
腕を組みながら高らかに笑う大男にマスターと呼ばれる男は、———そういえばお前は一体、誰なんだ、と思った。
「だがマスターも運がない。これからこの戦争が終わるまでずっとこんな毎日だ。いつか本当に死ぬかもな!わっはっは!」
「辞退します」
「できん!」
「なんで」
「なんでって令呪あるし、魔力の繋がり感じるし、何より、気に入った!」
「は?待て待て待て。ずっと寝てた俺のどこに気にいる要素があるんだ?」
「うむ。それはな、汚れてないところだ。大抵、聖杯戦争でのマスターってのはゴミカスだ。だがお前はセックスも知らぬガキ。わっはっは!未来は明るい!」
やべぇこいつ。絶対やばい。
「てか、聖杯戦争ってなに?あんま知らないんだけど」
「うむ。いいだろう。まず、聖杯戦争戦争とは大抵のことを叶える願望器、聖杯を賭けて、7人のプレーヤーで行う戦だ」
「7人…」
「そう。7人。そしてこの7人には一騎ずつ、サーヴァントという使い魔のようなものがいる。マスター…お前、名は?」
「…有間」
「有間でいう俺だ。そして、俺らサーヴァントは7体それぞれ異なるクラス、つまりタイプを持ってる。順に説明しよう。
まず一つ、セイバー。名前の通り、主に剣を使う。このクラスは、アーチャー、ランサーと並んで三騎士と称される。また、ステータスが基本高い。まぁ身体能力的なものだ。それ故、最優のクラスとされる。
二つ、アーチャー。このクラスも三騎士の一つだ。そして、遠距離の攻撃を得意とする。高い単独行動スキルを持つのも特徴的だ。
三つ、ランサー。三騎士の一つ。このクラスは高い俊敏性を持つ。また、ステータスが高水準だ。
四つ、ライダー。高い機動力を持つサーヴァントだ。何かに乗ったりしてるかもな。
五つ、キャスター。魔術師だ。一番魔術に秀でてるサーヴァントだろう。だがまぁ、三騎士は魔術に強いという特性がある。素で戦えば三騎士が有利だろう。
六つ、アサシン。これが一番厄介かもな。アサシン、つまり暗殺者。気づいたら殺されてるなんてざらだ。アサシンは目立たず、ただ闇に潜み人を殺す。残念ながら一筋縄では気付けない。気配遮断というスキルがあるのでな。厄介そのものだ。
七つ、バーサーカー。これは、出会えばわかる。強いぞ。
そしてマスターは令呪という、手の甲にある紋様を用いて3回、強制的にサーヴァントを動かすことができる。だからサーヴァントは基本マスターを殺せない。
あとな、サーヴァントには必殺技みたいなものがあるんだぞ!ま、時期に見せるだろ。わっはっは!」
「———あんたはなんなんだよ」
「俺は、セイバーだ」
「…それも聞きたかったけど、あんたは一体誰なんだ」
「あぁ、なるほど。俺の名は——————」
ぐうぅぅ、と有間の腹が大きく鳴った。
「まずは、飯にするか」
考えれば2日ほど何も食べていなかったのか。
水が美味しい。なんだこれ、ジュースじゃん。…いや、米うま。何にもお供とかいらん。この世の農家の全てに感謝を。てか、
「別に俺の腹が減ろうが本名くらい言えるだろ」
「いやー、こういう溜め、やってみたかったし」
「若い世代に合わせるおじいちゃんみたいな…。んで、本名は?」
正式名称は本名じゃないが…まぁいいか。
「真名、我が名は——————
キュロス二世。
——————バビロンを征服した、ペルシアの王だ」
キュロス二世と名乗る男は、自信に満ちた笑みを浮かべていた。
「いや、日本史選択だからわかんねえよ?まぁでも王様ってことは凄いんだろ?改めてよろしく」
「え?知らないの?呼んだのに?」
「いやぁ、なんで召喚できたのか俺もさっぱり。でも名前知れてよかった。これから呼びやすくなる」
「待て待て待て。ダメだ。絶対。呼んじゃダメだ。なんでって聞くだろうから教えるが、真名、つまり本名ってのが分かれば今の時代、簡単に調べ、弱点を見つけ出せちまう。分かるか?本名の判明=弱点だ。覚えとけよ」
「マジかよ。じゃあずっとセイバー呼び?味気な」
「所詮、名前など記号だろ。気にするな」
「んなわけねえだろ。名前があって初めてそいつは世界でそいつとしての輪郭を作り出せるんだ」
「じゃ、俺の名前はセイバーだ。キュロス二世じゃない。よろしくな、マスター」
なんだか嫌味な奴だなと思い、テレビを付ける。こういうムカついたときは、違う音で掻き消しちまうのが一番いい。
「今日のニュースです」
なんだよニュースかよ。面白くないなぁ。チャンネル変えるか。
「昨夜の23時頃、国分町周辺に、またしても黒いマントに身を包んだ義賊、ネットで噂の”シャドウトリック”が姿を表し、大量の一万円札を空からばら撒きました」
実際の映像に切り替わった。
「やぁ、どうも。ニュースやYouTubeを見てる皆様。こんばんは、もしくはこんにちは。自己紹介はしない。好きに呼んでくれて構わない。さぁ、本題だ。明日の夜、今日と同じ時間に株式会社コスモスの代表取締役が保有しているルビーを頂こう。ついでに手に入れた金はこうして風に乗せよう。期待して待て」
映像が急にシャットダウンして、アナウンサーが喋りだした。
「サーヴァントだな。此奴、随分目立ちたがりだぞ。一昨日もやっていた」
「マジかよ。あれ、サーヴァントなん?」
「普通、有り得ん。サーヴァントがテレビ出演。しかも犯罪者として。加えて、変にカリスマがあるから民衆の支持は厚いときてる。これは、あれだな。余程の呑気馬鹿じゃない限り起こらん。逮捕されても演説とかし始めるんじゃないか」
また、わっはっはと大きく笑った。
笑い事じゃないだろう。
「サーヴァントなら倒しに行ったほうがいいんじゃ?」
「んーー。まだだな。こんだけ世間を荒らしまくっているのに未だ、誰一人としてこの男の所在を掴めていない。この情報社会でだぞ。何かしら種がある。それが分かるまでは待機」
「本当だ。Xでも全く、写真すら出てこない」
「面倒くさそうなサーヴァン…」
突如、窓が一つずつ盛大に弾き割れた。瞬間、外の風が一気に室内に吹き込み、電気が割れ、辺りが暗くなった。
まて、そういえばここ、どこだ。
「セイバー!ここ!どこ!?」
「どこって病院だが」
「待て、なんで病院に入れる。いや、それよりもここは病院じゃあない。明らかに我が家だった。セイバー!一体、どうして——————。セイバー、どこいった」
いやしかし、さっきまでのセイバーは恐らく本物。聖杯戦争について説明してくれるほど敵はお人好しじゃないだろう。ということは、何処かで変わった。セイバーを探さなければ。
「マスター!!どこだ!!———まずい。出し抜かれた。俺がいて…。不甲斐ない」
「あっはっは。いやぁ、マスターは用心深いなぁ。
ま、策を講じるのは良いことだ。——さて、始めようか」




