殺意を断つ
俺は、捕らえた魔物の首に剣を向けながら、魔物たちの案内に添って進んでいった。
人質って…やっぱ良心が痛むな~~~
悪いけど…攻撃されたら不味いからな…
ちょっとだけ捕らえられててくれ…!
うん?この中に入れって…?
俺は気を緩めず、部屋の中に入った。
…誰もいない。
その時だった。
「?!うわあっ!!」
雷のような紫色の光と共に、一瞬で2体の魔物が姿を現した。
若い女の魔物と…老人の魔物。
どっちも人間に似た外形…上位種か…?
女の魔物が喋り出した。
「貴様が侵入者か?」
「我々の仲間の首に刃を向けながら…何の交渉をすると言うんだ!」
「…それもそうだな。この子は解放する。剣も捨てる。その代わり…二人きりで話そう」
人間の言葉を話す魔物か…!初めて見た…!
故郷にはそもそも魔物が少なかったし…
とにかく…今は弱気になったら駄目だ…!
「…いいだろう」
女の魔物が魔物の言葉で何かを喋り出すと、老人の魔物と部屋の外で待っていた魔物たちは立ち去った。
捕らえた魔物を放すと、怯えた顔ですぐに逃げていった。
「…悪気はなかった。こうでもしないと話ができないと思ってな…」
「悪気がなかった…?ふん、どこまで信じていいものか」
「…初対面の相手と話すときは、まず名前を晒すのが人間の風習だ。」
「俺はベンジャミン、ベンジャミン・テイラーだ」
「…人間の風習に従うつもりはない」
ああ…そうかよ…
「それで、交渉とは何のことだ?」
「…そうだな、話すと長くなるが…聞いてくれるか?」
俺は、これまでのことを全部話した。
Sランクのスキルが宿ったこと、そのことで国に縛られそうになったこと…
信じてもらえるかはわからないけど…隠し事なんかしても余計信じてもらえないだろう。
「…利用されるのが嫌で逃げてきた…か」
「愚かな人間だな」
「…そう言われても仕方ない。それしか思い付かなかったんだ」
「何故そこまでする?利用されるとは言っても、完全に自由がなくなるわけではない。富も、名声も手に入るだろうに…」
「富と名声か…」
「人間はそう言ったものが好きと聞いている」
「…そういう人間もいるだろうけど…俺は興味ない」
「…ほう」
「毎日が平穏で、何事もなく過ごせれば、それでいいんだ」
「そして何より…殺生は嫌いだからな」
「殺生が嫌いだと?」
「ならば何故人間は我々の住みかに土足で踏み入れ、荒らし、仲間を殺す?」
「やはり貴様は信用できぬ」
「何を言おうが…我々としては貴様をここで殺しておいた方が安全だ」
やはりか…仕方ない。
「俺の武器が、」
「剣だけだと思うか?」
「なにっ…くっ、」
「あぁっ…」
目の前の魔物は、急に腰を抜かし怯えた顔で俺を見上げた。
「貴様…一体何を…!」
早速使っちゃったな…俺のスキルの裏の効果。
一か八かだったけど…届いたみたいだな。




