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誤解を断つ

何が起きたんだ…

この人間…敵に認識できない…!

この人間が言葉を発した途端…頭の中で何かが途切れたように…

奴への怒りと殺意が…一瞬で消えた。

いや、違う…

消えたわけではない…

何なんだ…この感情は…!

怯えているのか…?

この私が…?


***

俺のスキルの本質は…切断じゃない。

物に限らず…繋がっているものを問答無用で切り離すんだ。

鋭いもので触れさえすれば…な。


俺は、彼女に手を伸ばした。


「大丈夫か?」


「よ、よせ!!」


「…殺そうと思えばすぐに殺せた。そうしてないのは…したくないからだ」


「…どうしてだ!人間は…いつだって我々を見るなり殺しかかった…だから我々も殺した…!」


…は?


「…それは魔物が人間を殺してるからだろ?!」


「何を言う…!少なくとも…我々はこちらから人間を襲ったことはない…!住みかに侵入した人間を消しているだけだ!」


「…じゃあ、人間を食べるとかは…」


「そんなことするか!!人間は魔物を食べるのか?!」


「…いや」


「「あ」」


「人間…貴様は何か勘違いしているぞ…!」


「…そうみたいだな」


「人間だって…好きで魔物を狩ってる訳じゃない。基本的に人間は殺生を好まない」


「ならどうしてだ!」


「大体は…営みだろうな」


「…営みで他種を襲うだと?!やはり人間は…!」


「…ああ、こう見ると盗賊と何ら変わらない…ただ、それが当たり前になっている」


「殺生を好まないと言いながら殺生を営みにするなど…矛盾してるぞ!」


「それは多分…この国の宗教のせいかもな」


「宗教…?」


「魔物は悪魔の子で、人間の信仰する神に背くもの…という教理があるんだ」


「なんだと?…笑える話だ…我々の目線で見れば人間の方がよっぽど悪魔だぞ!」


「…とにかく、それで魔物を殺しても良心が痛まなくなったのかもな…」


「何故そんな教理が…」


「そこまではわからない…」


「人間と魔物は昔より敵対していたと聞いたが…もしや…!」


「…まあ、どっちが先かなんて話してもわかるものじゃないし、鶏が先か卵が先かみたいなものだろう…」


「…そうだな」


「しかし…お前は安全なところから逃げて人喰いの化け物に隠してもらおうと思ったのか?」


「…そこまでは考えてなかったんだよ。ただ…人が追ってこれないようなところが、ここしか思い付かなかったんだ」


「…愚かなくせに妙に実行力があるな、お前は…」


「…俺もそう思う。まあ、でも…俺のスキル、『切頂(カット・ゼニス)』があればなんとか死にはしないだろうって踏んだんだ」


「…カット・ゼニス…?それがスキルの名前か…?」


「…俺がつけた訳じゃない。でも正直…ダサいよなぁ~」


「…確かに」


「…ふっ」


「「はははは」」


「人間…お前に確かに悪気は感じない。信じてみよう」


「本当か?」


「ただし、仲間に手を出そうものなら…容赦なく殺すがな」


「…ベンジャミンだ。これからはそう呼んでほしい」


「…いいだろう。ベンジャミン…そういえば名乗ってなかったな」


「私はアデルハイト…ここのボスをやらせてもらっている」


「アデル…」


「…今なんと言った?」


「いや、すまない…人間の間では親密な関係では名前を略して呼ぶこともある。アデル…って略したら語呂がいいって言うか…」


「ベンジャミン…お前は私と親密になりたいのか?」


「…まあな」


「…初めてだ、お前のような人間は」


「いいだろう、よろしく頼むぞ、ベンジャミン」


「…こちらこそ」

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