スタートを切る
はあ…はあ…ここが「魔境」か…
さすが最難関ダンジョン…たどり着くだけでも困難だな。
ここまで来たらもう引き返せねえ…
どうせ今更戻っても、死んだ方がマシに思える人生だろうしな…
よし、行くぞ。
俺は、唾を飲み込んではダンジョンの入り口に足を踏み入れた。
少し歩いていると、すぐに外の光は届かなくなり、俺は闇に包まれた。
薄暗い洞窟の中で、自分の足音だけが響いていくのがわかった。
落ち着け…まずは闇に目を慣らすんだ。
俺は深呼吸をして、目をつぶった。
…よし、これで少しは見えてきた。
ここで火なんかつけたらあいつらにこっちにいるって教えてるようなもんだからな…なんとか大丈夫そうでよかった。
耳を澄ませながら歩いていると、暗闇の中で複数の光が見えてきた。
あれは…眼光か?
…最初から多いな。
後ろに立っていた魔物が何かを叫ぶと、犬に似た魔物たちが一斉に俺に襲いかかった。
…そうか!!こいつらははじめからこの環境に慣れている…どうせこっちは見えてるんだったら松明でも持ってくればよかった~~
くそっ…俺の考えが浅かった…
…まあ、しょうがねえ。大丈夫だ。俺のスキルがあれば…!
俺は剣を取り出し、地面に当て思いっきり線を引いた。
すると、地面は大きな音を立てて切られ、深く掘れた。
犬型の魔物たちは足を止め、こちらを警戒し始めた。
よし、犬型の魔物…確かハウンドだっけ。こいつらにもちゃんと危機を察知する能力はある…!
念のためもう一発飛ばしとくか…!
俺はもう一度地面に線を引いた。
魔物に当たらないように気をつけながら…
もう一度同じことが起き、ハウンドたちは俺に背を向け逃げ出した。
よし、殺さずに対処できたぞ!
すると、後ろにいた二足歩行の魔物…ハウンドを飼育している知性体だろうか。
あいつらは慌てた様子で何かを喋りだしては、ダンジョンの奥へ走り出した。
よし、さすがSランクのスキル…まだ序の口とは言え最難関ダンジョンでも通用してるぞ!!
その時だった。
知性体のうちの一体が、意識を集中するようにして立ち止まっては、物凄い轟音で叫び出した。
くそっ、応援を呼んだか…!
…待てよ、普通…魔物でもあんな声の上げ方ができるか…?
もし、俺の思い通りなら…むしろ都合がいい。
俺はそいつの方に走り、首筋を掴んだ。
「ひぃぃえ…!!」
俺は、そいつの口元に顔を近づけ、言葉を発した。
「あ」
すると、洞窟の中に俺の声が響き渡った。
…なるほど。
やっぱりこいつには音を増幅させる力がある…!
こうなったら話が早い。
「このダンジョンの魔物たちに告ぐ。俺が侵入者だ。一人くらいいるんだろ?人間の言葉がわかるやつ…」
「俺はお前らと戦う気はない。お前らが俺を攻撃しない限りな…」
「さっきも見せたが…俺は結構強い。戦ってもいいことはないぞ」
「できることなら、交渉がしたい」




