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異形とニンゲンたちの共同生活  作者: 猫御使みーる
二章 もがく者たち
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81:猜疑に満ちた応酬

ルイネはラウラが想像していた通りの人物であった。いつもならばおかしくなった時点で口を挟んでいただろう。だが、しなかった。多数の村の人間たちと違い、彼はすぐ元に戻ると予測していたからだ。目論見が当たったせいか、ラウラの口元は少し緩んでいた。


その表情はラウラが嫌悪するあくどいものでも父親似でもなく、年頃の少女らしい笑みであった。もしルイネが目撃していたら前者と勘違いしていただろう。幸か不幸か彼はラウラの姿を背にしていた。


ぺリアになだめられ、ルイネはようやく落ち着いてきたように見える。タイミングを見計らうと、ラウラは口を開いた。


「さて、質問よ」

するとルイネは勢いよく振り返り、両手を広げ行く先を塞いだ。


「まだ居たんですか?あなたには……あなただけには、絶対ぺリアを渡しません」


行動と言動が先ほどのロッカとかぶる。だが、ルイネには他の人間たちとは決定的に違う点がある。それは平静さを保てなくなったとき、自分で戻ってこれるか否かである。ぺリアの励ましもあっただろうが、ルイネはその前に自分を取り戻している。


「いい?わたしの目的はルイネフィーメと会話をすること。彼女に用はないわ」

「っは……すみませんが、その呼び方やめてくれます?あなただけにはその名で呼ばれたくない」

ルイネは鼻で笑うと声を低くして言う。


「分かったわ、ルイネ」

「元通り敬称を付ける気はないんですね」

「ええ、必要ないからよ」


ラウラはその場にしゃがみ込むと、ルイネと同じ目線になった。これ以上威圧感を与えないようにするためである。


「なぜあなたはこれ程までわたしにトゲトゲしく当たるのかしら?誰かに良くないことでも吹き込まれたの?」

「存在自体が脅威だからですよ。優しい顔してすり寄って、心の隙間に入り込む。そうやって、村の住人の支持者を増やしているんでしょう?」

内容はともかく、ルイネはまっとうに答えた。取り乱した後だと言うのに、すんなりと元の状態に戻っている。ラウラは確信と共に目の前の少年に対し、僅かな敬意を覚えた。


「ふふっ」

「なんですか?たくらみを隠す気もならないんですか?」

「いいえ。ただすごいって、思っただけよ」

「は?」

年相応に笑うラウラをルイネは不審げに見ている。この程度で彼の警戒心は全く解けないだろう。そもそもラウラに解く気はなく、感じたことを素直に表現しただけである。


「次ね。こうしてミケランジェリ家の娘は仲間を増やし、なにを成すのか。ルイネはどんな風に想像しているの?」

「知りませんよ。村の支配者にでもなるんじゃないですか?」

「……なるほどね。直接は会っていないと」

ラウラは小さく呟いた。


「この家の玄関先での騒ぎ。あれはよく聞こえていましたよ?ついには人間以外にも手を伸ばし始めたんですね」

嫌味を口調に込めながら言うと、ルイネはラウラのことを睨んだ。あのことがあったせいで、ルイネはぺリアを取られるとさらに思い込んでいるのだろう。


「待って、ルイネ。たっ、確かに外での出来事は否定しない。あれはやりすぎだったわ。その……ちょっとむしゃくしゃしてたの」

ラウラは珍しくつっかえながら、たどたどしく言う。


「あなたとここで会った時。わたしは一人だった。それに対し、あなたはロッカさんという仲間が一人居た。そんな人望の無さで、壮大なことを成し遂げれると思う?」


「むっ、むしゃくしゃ?は、はぁ……それは確かに、そうだけど」

想像するラウラとはかけ離れているのか、ルイネは動揺し口調が乱れている。


「ね?」

「……同意はしません。あなたには根本的に不信と嫌悪感を抱いていますから」


「今はね。多分それ、すぐに無くなるわよ?少なくとも片方はきれいさっぱりに」

「へえ、そうさせるって宣言ですか?」

「だから違うって……だめね。この話は止めましょう」

ラウラは軽く両手を叩いた。


「どの程度の関係性があるかは分からないけど。彼の助言は役に立ったのかしら?」

「ええ、少なくとも。あなたの訳の分からない助言よりは」

皮肉めいた言い方で返すルイネにラウラはまた感心した。


「こういう感じ、久しぶりに見たわ。なんだか懐かしい。わたし、思っていた以上にあなたのことを分かっていなかったみたいね」

「なんですか、それ?馬鹿にしてるんですか?」

「いいえ。本心を……とは言え言い過ぎるのもよくないわね」


意識を切り替えるためか、ラウラは立ち上がった。

「これで大体確認は取れたわ。お付き合いいただき、ありがとうございました」

その場で一礼するが、ルイネの警戒は増すだけであった。


「最後の質問。あなたはペリアをどこにも出したくない。ずっと二人でいたい。誰にも干渉してほしくない。これで合っているわよね?」

「わざわざ口に出さないでもらえますか?……すべてが蔑みにしか感じられない」


「そんなことないけれど、ただ不思議よね。終着点はなく、全て矛盾に満ちている。あなたは自分の力で戻れるし、賢さもある。まるで気づいていない振りをしているみたい」

ラウラは顎に手を当てると考えるような動作をした。


「まあ、いいわ。これはただのひとりごと。わたしはルイネの目的の邪魔をするつもりはないもの。なんだったら、もうしばらくここに入らないほうがいいって、皆に言ってもいい」

「それは少ししたら侵入させるということでしょう?」


「全く、今のルイネはなにを言っても悪い方向に捉えてしまうわね。これで終わりにしましょう。別にどれを選んでもあなたの意思なら構わないわ」

「ええ、なにを取捨選択するかはボクの自由です。誰に指図されるいわれもない」


「その通りね。でも、村から出ることだけは避けた方がいいわよ。これは忠告。それ以外だったらきっと一番まずいことにはならない」

「余計なお世話です。ボクが願うことは今後一切あなたが干渉してこないことです。顔も見たくない」


ラウラの忠告は全く響いていない。少なくとも今は。だが、言うことこそが目的であったため、ラウラにこれ以上話を続ける気はなかった。

開け放たれたドアに目を向けると、ドアノブに手を掛けた。


「それではお邪魔しました。どうか最悪を逃れられますように。そう祈っているわ」

ルイネの悪態に満ちた返事を聞かず、ラウラはそっとドアを閉めた。

更新がしばらく不定期になります。明日生まれてはじめて手術するため、どんな感じになるかさっぱり予測がつかないんですよね……

申し訳ありませんが、お待ちいただけたら嬉しいです!

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