表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異形とニンゲンたちの共同生活  作者: 猫御使みーる
一章 おちてきた者たち
36/82

35:戦闘要員

「……様……うーん、困ったなあ」


レザルタスは村に到着した後、何度も何度もラウラに呼びかけたが反応はなかった。赤子をあやすように背中を揺らすとうなり声が聞こえ、何かまずいことでもしてしまったかと焦る。


表情は見えず、声だけが聞こえる状態ゆえ、レザルタスはどうしようかとまるでラテのようにオロオロしていた。しかし、よく考えれば本気で寝ているのであればしがみ付く力はかなり弱く、簡単に振り落とされてしまう。


それがないのだから、きっと起きてはいるのだろう。そう思い、適度に呼びかけ続けた。


「ん……ここは……」

ようやく目が覚めて来たのか、ただの声ではなくきちんとした言葉が聞こえた。

「村でございます。ラウラ様、到着いたしましたよ」


「……ん?」

普段のラウラらしからぬ反応だ。難しい言葉を言っても返事は期待できそうにない。レザルタスは普通に戻すことにした。

「ラウラちゃん、着いたから!起きてって」


あまり期待した声掛けではないが、そういった途端ラウラの意識が変わるのを感じた。

「あっ……え……ごめんなさい。寝ぼけていたようで……その、降ろしてもらえる?」

レザルタスは言われた通りに降ろすと、ラウラは身を整え軽く咳ばらいをすると一礼した。


「大変失礼いたしました」

「いや、気にすんなって。五分くらいしか経ってねえし。つーか、外で寝落ちするとか大したもんだなあ」

感心するように頷くレザルタスにラウラは首を傾げるが、ハッと当初の目的を思い出した。


「あっ、そうだ。早く薬草を渡しにいかないと」

「だな、ほらよ」

レザルタスは薬草の包みを渡した。


「これ、後で返すわね」

ラウラは歩き出すと背後についてくる気配がないことに気づいた。


「どうしたの?行かないの?」

「オレがまた行ったら騒がせちまうだろ」

「何言ってるの、採った本人が行かないでどうするのよ」


ラウラは踵を返すと、服のすそを掴んで引っ張った。しかしレザルタスは躊躇ったのか動かなかったため、掴んだ手が滑り転びそうになった。


「っと、危ねえ」

レザルタスは難なくラウラを支えた。

「あ、ありがとう」


先ほどから情けない行動ばかりしてしまい、恥ずかしさで顔が赤くなる。ラウラはそういえば、前にもこんなことがあったと既視感を覚えた。


「重心がすごく下にあるのね」


あまりにも下へと安定しているせいで、ひ弱な少女が引っ張っても逆に怪我をしそうになる。今度から安易にこんなことはしまいとラウラは心に決めた。


「そりゃあ、オレ、ここの戦闘要員だしな」

「え?ぬし様の護衛……じゃないの?」

「んな余裕ねえし、そもそも必要ないし。ぬし様が出るとか相当な事態だからなあ」


確かにレザルタスは強く、何度も高い身体能力を見せている。しかし、動物のヤギが草食動物でありあまり荒事と結びつかなかった。


この地に住まう村民は、大抵なんらかの要因で逃げてきた者たちだ。きっと印象から結びつかないことは他にいくつもあるだろう。ラウラはそのことをしっかり心に留めておいた。



ラウラたちが家の戸を開けると、ツィアの部屋まで移動するとラテが出迎えてくれた。

「あっふふふ、ふ、二人ともおかえり」

「あれ、おまえしかいねえの?」

「へぇ、ええぇえっと。あの、ツィアは奥で寝ていて。あとの二人は取りに行くものがあるって、一旦戻ったんだ。そ、そろそろ帰ってくると思うけど」


「そっか、余計な心配だったか」

レザルタスは後ろの方でそっと息を吐く。おそらく行くのをためらったのはカテリーナの存在があるからだろう。


「はい、これが薬草よ。レザルタスが取ってくれたの」

ラウラが手渡すと、ラテはおっかなびっくり受け取ろうとしたが、すぐに手を引っ込めた。

「どうしたの?」


「だっ、だだだだ、あ」

「へいへい、またいつものか。落ち着けよ、なんだ?どうした?」

レザルタスが前に出て、頭を小突く。

「う、うん。そっ、その。刺さっちゃったら大変だから」


ラテはうっかり振り上げたときに刺さらないよう、細心の注意を払い腕を閉じぎみにしながら持ち上げた。ラウラの指何本分、いや二桁以上ほどの長さがある手である。本人が言う通り先は尖っていて、大きく裂けている。


それが指の延長線上か、爪なのかは分からない。しかし、削るなどの対策が取れていないと言うことから指なのだろう。


「あっ、こ、こんな気持ち悪いもの見せて……ごっ、ごめんね」

ラテは見せたときと同様にそっと下げた。


「だからレザルタスが渡してくれる?」

「おいおい、オレなら刺さってもいいのかよ」

レザルタスが軽い調子でからかっている。


「そうじゃな、なくて。あ、でも、もしそうなっても大丈夫だよね?頑丈だし」

「さすがにオレも本気で引っ掛かれたら、クラールスの薬草漬けコースになるぜ」

「そっ、そんなことしないよ」


「実際おまえの方が強いからな」

「ええぇええ?ち、ちからはレザルタスのほうがあるよ。う、うん」

「つっても、おまえのほうがかなり年長なんだし」


二人の会話からラウラはあることを疑問に思った。

「もしかして、ラテさんってレザルタスと同じだったりする?」

外してしまう可能性を考え、あえて明確に言わず曖昧に質問をした。


「えっ、えっと。その……通りだったりします。弱いけど」

「そいつは嘘だ。こいつの性格考えてみろよ。そもそもここに来る前、今のオレのポジション、ラテがやってたんだぜ」


ラウラはレザルタスとはじめて会った時のことを思い出す。気弱なラテが、あのような対応をとれるとは到底思えなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ