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異形とニンゲンたちの共同生活  作者: 猫御使みーる
一章 おちてきた者たち
33/82

32:薬草がない(下)

「よっし、じゃあ一緒に行くか、ラウラちゃん」

「はい?」

レザルタスが気分よくそう告げると、クラールスはいつかのフクロウと似たような目をした。しかし、何かに気づいたのかすぐ元に戻った。


「レザルタス、説明」

「一度境界を見ておいた方がいいんじゃねえかって、最初にフクロウが言ったんだ。オレもそう思ったし………何よりぬし様も同意されたので、使いとして参った次第でございます」

レザルタスはラシルドの家に居るときのように姿勢を正し、左手を腹部に当てると一礼した。


「特別な用がない限りめったに外には出ないし、ついでに済ませるって訳か」

クラールスは納得したのか頷いている。

ラウラはクラールスの言葉にひっかかりを覚え、少しだけ眉をひそめた。


「ついでって、同時に済ませていいものなの?それより早くツィアに薬草を、と思うのだけど」

「……ツィア、ちょっとあついけど……げんきだよ?」

「体の弱い子が長期間高熱状態にあるとまずいのが問題で、頼んだのはそれを下げるものなんだ。私も付いているし……何日もかかるってなると問題だけど」

「レザルタスの足なら一瞬で行けるはずだし、距離としてもそう遠くはないけど……」


クラールスはレザルタスに目配せをした。

「だな、一時間もあれば余裕で往復できるぜ。すぐそこと、薬草生えてるところのちょっと先だしな」

「……ツィア、だいじょうぶだよ?」



『絶対に大丈夫だから、安心して待ってて』

ラウラは前にイデアがそう言って、帰ってこなかったことを思い出した。絶対に大丈夫という言葉は大抵無理をしているか、そう思い込んでいるだけである。



「……だめ……それはだめよ」

ラウラは暗く俯き気味になるのをこらえて、胸を張り背筋を伸ばした。しかし表情だけはどうすることもできず、その場に居た異形たちはどうしていいのか分からず心配そうにラウラを見ている。


それ対してカテリーナは信頼の目で見つめ、ツィアは状況があまり理解できていないのか無表情であった。


「……取り乱してしまったわ。ツィアのことを言い訳に混同してごめんなさい」

「も、もちろんだって!こっちこそ、その……な、なんか悪かったっていうか。なんつーか、えっと、こっちこそごめん」

ラウラをどう励ますべきか悩んでいるのか、手が右往左往している。


「っぷ、レザルタスがそんな風になるなんて珍しい。ラテみたいだ」

「えぇええ?ボ、ボクそんな感じなの?」

「う、うるせえな!」

「今度フィラインに話そうっと」

「おい!やめろよな。話が漏れて尾ひれがついた状態でフクロウに伝わったら、オレが絞められるじゃねえか」


レザルタスがクラールスに詰め寄り、それを止めようとラテがあたふたしている。彼らの仲のよさを目の当たりにしたラウラは、先ほど脳裏によぎったくらい記憶でなく、過去の暖かい記憶を思い出し、少しだけ笑顔になれた。



「あのー」

遠慮気味に話しかけると、レザルタスがクラールスに背を向け今度はラウラとの距離を詰めた。勢いのせいか、かなり近い。ラウラは圧倒されて一歩後退した。

「何?どうした?ごめんな、あいつらは放っておいていいから」

クラールスは口を開こうとしたが、面倒になったのかまた閉じた。


「その、先ほどの言葉通りにしてもらいたくて……フクロウには言わないでもらいたいの。心配かけたくないから」

「おっしゃあ!クラールス、ラテ、言うんじゃねえぞ!……でもあいつも保護者なんだし、ちょっとくらいかけたっていいと思うけど。ま、なんかあったらオレを頼ればいい話だな」

レザルタスが胸を張り、手でたたく。ラウラはようやく詰め寄られた態勢から解放された。


「………そうですね」

「えっ、なにその固い態度」

「気持ち悪いんだよ、レザルタス」

クラールスがバカにした物言いをするとまたレザルタスが突っかかる。

「はいはい、そろそろ止めようね」

カテリーナがクラールスの耳元で手を叩くとつられてレザルタスも固まった。


「病人の前で騒ぎすぎ……っと、あ、あー……平気?」

カテリーナはぎこちない態度でツィアのことを心配するが、本人は返事をせず、ラテの服を引っ張ると自分の姿を隠した。

「あ、えーっと」

「あぁあああのっ、あの……ツィアが頷いたから……平気だと思う」


「そう、それはよかった」

カテリーナはほっと息を吐くと、ラウラに向き直る。

「気を付けて行って来てね。私は、看病と……ツィアちゃんに謝らなくちゃいけないから」


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