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異形とニンゲンたちの共同生活  作者: 猫御使みーる
一章 おちてきた者たち
32/82

31:薬草がない(上)

「これは……熱が大分高いね」

「そそそそっ、そんな……ボクのせいだ」

「違うよラテ。あんたは悪くない。悪いのは僕の方だよ」

クラールスは長い耳を力なく折り曲げた。


「えっ、そ、それこそ違うよ。ボクが何度も渋ったから」

「はいはい、ちょっと静かにしてくれる?」

カテリーナは呆れた表情で二人を見るが、またしても聞こえていないようだった。


見かねたラウラは両手を叩く。すると二人とも驚きで口を閉じた。

「フクロウから教わったの。こうして近くで音を出すといいって」

「なるほど。クラールスの耳の良さを利用すると」


カテリーナはあえてラテのことについて指摘しなかった。臆病だから物音によく反応するとは言えなかったからであり、そのことに二人とも気づいていた。


「でもさっきみたいに離れていた場合はどうすればいいのかな?」

「歌をうたうといいって言っていたわ。それなら簡単ね」

「あ……うん……そうだね」

カテリーナはラウラから目線を逸らす。どことなく遠い目をしているようにも見える。


「さ、それよりもこれからどうすればいいかよ。教えてもらえる?」

「そのことなんだけど。結論から言えば命に別状はないんだ。ただ子供がよく罹患するもので、必要な薬草が今ないんだ。クラールス、上から二番目の引き出し空だったよね?」

「あ、なんだ。そのことか。それなら……」


「邪魔するぜ」

戸を開けて入ってきたのはヤギの獣人レザルタスであった。彼の姿を目にした途端、クラールスはカテリーナの前に立ち、怪訝な表情を浮かべる。


「何?」

「なにって、ひでえな。この場に居られないフクロウに代ってオレが来ただけだっての」

「…あー、なるほど。フクロウが気を利かせたのか。レザルタス、今からいつもの薬草とってきてくれる?」


「ク、クラールス……」

カテリーナが後ろから小声で呼びかける。


「どうしたの?」

「おい……オレの時より返事の仕方に落差ありすぎだろ……」

「クラールスさんはカテリーナさんを大事にしているから」

「ま、それもそうだな」


「その、あれって崖に生えているものだよね?人間なんかはそれを摘むのに大勢の人が命を落としていて」

「ん?レザルタスならどうってことないと思うよ。断崖絶壁でも気持ち悪いくらい軽々登れるし。ボクが行ってもいいけど、カテリーナを手伝いたいし。何より落下したら普通に死ぬからね……」


「余計な一言が聞こえた気がすんだけど、まあいいか。崖は得意だ、任せろ」

レザルタスは胸のあたりをドンと叩いた。

「ん?あ、あー……そっか。そこは動物の方と一緒なんだね」


納得しているようだが、ラウラは生憎ヤギについては良く知らない。不思議そうにしているとカテリーナが答えてくれた。

「その、私も見たことはないんだけど。ヤギって、急な崖も平気で登るんだ」

「それは知らなかったわ。レザルタスってすごいのね」


「え?へっへへへー」

「うわっ、照れるの気持ち悪い」

クラールスは引き気味の目をレザルタスに向けた。

「うっせえ」


「……ん?だれ?ラテ……?」

ツィアはベッドの上で目を擦りながら小さくあくびをした。

「ツィア!」

「え、まずい。ラテ、目を覆わないと」

「目?ひぇっ、え?こ、こう?」

自身に目がないにもかかわらず、既に覆っている包帯部分を手で隠した。


「ラテ、目ないよね!?しかも、そこ位置的に鼻じゃない?違うから!って……あー……あんまり変なことで動揺させないでくれる?」

クラールスは下を向くと胸を押さえ堪えるような仕草を取っている。


「……なんだか、かなしそう………どうぶつの人?……ラテ、だれ?」

ツィアは横にいるラテの服を引っ張った。

「ヤギの獣人でレザルタスって言うんだ。友達?な、仲間?だよ……うん」


「そう」

ツィアは短く答えると、レザルタスから視線を逸らしラウラに目を向けた。

「オレを怖がらないとか珍しいな。ラウラちゃん以来だ」

その言葉を聞いたラテはレザルタスの方を見るが、彼はかぶりを振った。


「ずっと……いてくれたの?」

「そうよ」


あの時の言葉が自分にかけられたものか、それともラテに対してなのかはよくわからなかった。しかし、どちらでもいいから、起きるまで居たいと言ったのは正解だ。


忙しいフクロウと共にペリアのもとへ行くことは叶わず申し訳なく思うが、決して間違ってはいなかったとラウラは思った。ツィアの頭をそっと撫でると、ぎゅっと口を閉じている。気恥ずかしさとうれしさが混じったその表情に少しだけ安心した。

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